fc2ブログ

【アメリカ議会襲撃事件最終報告書】(上) 「負けは恥」、頑迷に暴走

昨年1月のアメリカ連邦議会襲撃事件を調査する下院特別委員会は今月22日、最終報告書を公表した。ドナルド・トランプ前大統領(※共和党、左下画像、ロイター通信提供)はどうやって20年の大統領選での敗北を覆そうとし、何故襲撃事件が起きたのか。特別委の報告書からは、周囲の諫めを悉く無視し、形振り構わず“勝利”に突き進む権力者の異様な姿が浮かぶ。報告書に基づき、混乱の2ヵ月を3回に分けて振り返る。

20230330 03
「率直に言って、今回の選挙に勝った」――。2020年11月4日未明、前日投票された大統領選の開票が続く中、トランプ氏は一方的に“勝利”を宣言した。連邦議会襲撃事件に至る混迷の起点となったビッグライ(※大きな嘘)について、特別委は「以前から入念に計画されていた」と結論付けた。新型コロナウイルスの感染が蔓延する中で実施された2020年の大統領選では、郵便投票の利用者が急増したが、世論調査で民主党支持者のほうが郵便投票の利用が多い傾向が示されていた。大統領選では先に当日の投票分を開票する州が多い為、開票の初期段階ではトランプ氏が民主党候補のジョー・バイデン氏(※現大統領)をリードすると予想された。トランプ陣営もこうした傾向は把握しており、ビル・ステピエン選挙対策本部長らは3日夜、「未だ開票は数日間続く。勝敗を判断するのは時期尚早だ」とトランプ氏に伝えた。しかし、トランプ氏は開票が進むにつれて、リードが縮まる状況を「不正だ」と訴え、開票作業を止めるよう主張した。自身が優位な状況で開票を止め、一方的に“勝利”を既成事実化する狙いがあったとみられるが、陣営内でさえトランプ氏の賛同者はごく僅かだった。ウィリアム・バー司法長官(※当時)は特別委への証言で、「証拠を確かめることもせずに、大規模な不正があると主張した。根拠らしいのは、開票が進むにつれて民主党の票が増えたことだけで、それも以前から予想されていたことだった」と振り返った。

トランプ氏の狙いは何だったのか。特別委は、投票4日前に側近のスティーブン・バノン元首席戦略官が知人に語ったとされる録音記録を証拠として報告した。「トランプ氏は勝利を宣言する。だが、彼が勝者だという意味ではない。民主党は郵便投票が多く、トランプ氏は(開票の初期段階で)有利になる。(開票が進んで)劣勢になれば、トランプ氏は『アイツらが盗んだ』と訴えるのだ。そうしたら私が、司法長官に開票所を閉鎖させる」。大統領選の開票の初期段階で、自身がリードしているうちに“勝利”を宣言したトランプ氏。だが、「不正があった為、開票作業は止めるべきだ」という主張の論拠を示せず、側近のバノン氏が提唱した強引な幕引きには失敗した。民主党支持者が多く利用する郵便投票の開票が進むにつれて、バイデン氏が優勢になっていった。トランプ陣営は票の再集計を求める等、各州で敗北に抵抗したが、展望は開けなかった。「見通しは非常に暗い。票の再集計によって(結果が覆って)勝つ確率は5~10%程度です」。ステピエン氏は11月7日時点で、客観的な見通しをトランプ氏に報告していた。敗色が濃くなる中、トランプ氏が先ず進めたのは裁判闘争だった。接戦で敗れた州で票の再集計を要求しながら、「不正や選挙運営のミスがあった」として選挙結果の無効化を裁判で求めた。トランプ氏も独自に“不正”の情報を集め、その度に陣営は事実関係を調査したが、確たる証拠は見つからなかった。当時、トランプ氏自身が実際に敗北をどこまで認識していたのかは明確でない。しかし、特別委は「負けたと理解していることを示す言動があった」との見方を示した。一例として、昨年1月15日までにアフガニスタンからアメリカ軍を撤収させるよう命じる書類にサインしていたことを挙げ、「任期末の2021年1月20日に離任すると理解していたことを示すものだ」と指摘した。ただ、本心がどうであれ、トランプ氏は「選挙で不正があった」との主張に傾斜していった。顧問弁護士だったルドルフ・ジュリアーニ氏(※元ニューヨーク市長)を中心に新たな法律顧問チームを作り、訴訟対策をてこ入れした。だが、ジュリアーニ氏らの主張は論拠が薄く、トランプ陣営内でも疑問視する声が広がり、選挙運動に関わっていた法律事務所も距離を置いた。「もうこれが“終点”だ」。連邦最高裁が2020年12月11日、接戦4州での選挙結果の無効化を求めるトランプ氏側の訴えを退けると、政権幹部や選対スタッフらの多くが白旗を揚げた。同14日には各州で選挙人が集まり、選挙結果を認証する手続きが実施された。それでも、トランプ氏は敗北を認めるよう促す側近や家族の言葉に耳を貸さなかった。ホワイトハウスのスタッフは、当時のトランプ氏の言動についてこう証言した。「最高裁の判断に怒り、マーク・メドウズ首席補佐官(※当時)に『負けたと知られたくない。恥だ。何とかする方法を見つけないといけない』という趣旨のことを言っていた」。


キャプチャ  2022年12月24日付掲載
スポンサーサイト



テーマ : 国際ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接