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【水曜スペシャル】(584) 子役に強い劇団や社内のツテも頼る…テレビドラマ“赤ちゃん出演”の舞台裏

テレビドラマを見ていると、生まれたばかりの赤ちゃんをよく目にする。可愛くて、思わず見る方も微笑んでしまう。そこでふと疑問に思った。赤ちゃんって、一体どこから連れてくるのだろうか。泣き止まない時だってあるだろうし、撮影だって大変そう。事情を探ってみた。 (取材・文/学芸部 松原由佳)

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先ず問い合わせたのは『NHK』。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、二代将軍・源頼家やその子の誕生等、登場人物の生後間もない様子が幾度も描かれている。どうやって探してきたのだろう。NHK広報局によると、子役を専門とする芸能事務所があって、基本的にそこに依頼しているとのこと。安全を確保する為、対象は首の据わった生後3~4ヵ月以降の乳児という。収録現場にいる時間を短くする為、赤ちゃんの顔を出さないシーンでは人形を使用する場合もあるとか。実際にどのシーンで人形を使ったのかを尋ねたが、「わからないように苦労しているので、回答を差し控えさせて下さい」との返答。人形かどうかを見極めるべく注視したが、全くわからなかった。続いて訪ねたのは、多くの子役が所属する『劇団ひまわり』。この劇団には0~3歳児を対象にした無料の児童登録制度がある。登録の動機は、メディア出演で思い出を作りたい、子供の可能性や個性、表現力や感受性を伸ばしたい等、様々だという。登録した親子に対し、劇団は創造力等を育む為のワークショップを提供している。砂岡誠代表は「マスメディアに出すことだけが目的ではありません」と強調し、「ワークショップ等を通して可能性を引き出そうと考えています」と語る。とはいえ気になるのは、ドラマに出る赤ちゃん。キャスティングを決めるのは、あくまで制作サイドだ。劇団ひまわりは“どういう赤ちゃんを求めているか”を確認した上で、合致しそうな子を制作サイドに提案している。

それにしても、テレビ出演に向き、不向き等はあるのだろうか。赤ちゃんだから、イケメンかどうかなんてよくわからないし――。広報担当者は、大事なのは「赤ちゃんよりも親」と話す。「劇団ひまわりでは『このツールがあれば必ず泣き止むというものを用意してほしい』と親に伝えています。撮影現場で、赤ちゃんは知らない人に囲まれます。その時に機嫌が取れるように、我が子の特性を知ることが大切です」。更に、「生まれたての赤ちゃんの出演はあるのか?」と聞いてみた。砂岡代表は、「ニーズはあるが、実際には衛生面を考えると中々難しいと思います」。やはりハードルは高そうだ。しかし、このハードルを乗り越えたドラマがあった。TBSテレビ系の『コウノドリ』シリーズ(※2015、2017年放送)だ。綾野剛演じる産婦人科医の鴻鳥サクラが命の誕生と向き合うヒューマンドラマで、様々な事情を抱えた妊婦が登場する。女性が出産し、我が子と初めて対面するシーンはドラマの重要な要素だ。鴻鳥が「おめでとう」と母親に呼び掛けながら、赤子を取り上げる。どう見ても生後直ぐの様子だ。「生まれたての赤ちゃん役として出演してもらったのは、生後1週間~1ヵ月。中には名前が未だついていない子もいました」。そう話すのは、同作のプロデューサーである那須田淳さん(59)。生後間もない乳児を出演させる為、撮影の半年程前から、TBS社内で出産が近い家族等を募り、協力を仰いだという。手を挙げてくれた家族は第1シーズンで100人程に。その中から撮影スケジュールに合わせて出演を依頼した。撮影現場では乳児の健康管理に細心の注意を払い、産婦人科の医師や助産師が立ち会った。テストは人形で行ない、本番のみ赤ちゃんにカメラの前に来てもらった。生まれてきた瞬間をよりリアルに再現する為に、保護者の許可を得た上でベビーオイルやベビーパウダーで化粧を施した。こうした出産シーンは1人や2人ではない。ドラマで何人の赤ちゃんが出ているか数えようとしたが、あまりの多さに途中で諦めてしまった。作中には、低体重だったり難病を抱えていたりする乳児が登場する。こうしたケースではスタジオに来てもらうのは難しい。その為、実際の病院の新生児集中治療室(※NICU)で乳児だけを撮影したり、手術シーンは人形を利用したりして再現した。ここまで赤ちゃんの出演に拘り、労力を割いたのは、「感動の原点になるべく嘘は吐きたくない」という思いがあったからだという。那須田さんは、「テーマである出産を如何にリアルに近付けるか考えた結果です」と説明する。これまで何気なく見ていたドラマの赤ちゃん。その裏には関係者の熱い思いがあった。今度はどんな赤ちゃんを見られるのか、楽しみだ。


キャプチャ  2022年8月27日付夕刊掲載
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テーマ : テレビドラマ
ジャンル : テレビ・ラジオ

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Author:George Clooney

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