【熊本地震1年・教訓と課題】(中) 車中泊“見えない被災者”

20170425 06
強い揺れが何度も襲ってきた。熊本地震は、昨年4月14日の前震から1週間で震度5以上を21回観測する等、余震の回数が際立った。傷んだ家屋に戻ることを恐れ、多くの被災清が車中泊を選んだ。『肺塞栓症(エコノミークラス症候群)』や持病の悪化を招き、直接死50人の3倍を超える震災関連死を生む一因となった。最大時で約11万人が避難所に身を寄せた熊本市。屋内を避けた人たちは、各地の駐車場や道路脇に車を止めて夜を過ごした。大西一史市長は、「どれだけ車中泊をする人がいるのか、把握しようがなかった。行政の限界を感じた」と率直に語る。納屋や車庫に家財道具を運び込み、自宅敷地内で軒先避難する人たちも少なくなかった。熊本県益城町で水道工事業を営む西村和幸さん(48)夫婦の自宅は、同16日の本震で全壊。車中泊で1週間ほど過ごし、自宅に戻った。「家に仕事の資材があるので、長期間は離れられず、避難所には行かなかった」。ブルーシートで囲った車庫での生活が今も続く。広さは車4台分ほど。床には木材を敷き、カーペット等を何枚も重ねる。隙間風を避ける為、内部にテントを張って寝室にした。台所や風呂は別の小屋に設けた。

「いつまでもこんな暮らしは続けられんけど…」。今月5日、西村さんはそう言って、水道管の復旧工事現場に向かった。車中泊や軒先避難の人が食料等を求めて避難所に詰めかけ、物資が不足する事態も起きた。初動対応を指揮した県幹部は、「避難所外の“見えない被災者”への対応が難しかった」と振り返る。車中泊は、2004年の新潟県中越地震で問題化した。同県では余震が相次いだ上、雪の重みで家屋が倒壊する懸念もあり、被災者は車に逃げ込んだ。犠牲者68人の内、関連死が52人を占めた。同県は地域防災計画で、車中泊する人たちが自治体や警察に避難状況を連絡し、食料等の物資提供や、保健師らによる健康相談を受けられるようにした。内閣府防災担当によると、首都直下地震で430万人、南海トラフ地震では620万人の“避難所外の避難者”が想定されるという。読売新聞が先月下旬に実施した全国47都道府県へのアンケート調査では、24府県が地域防災計画に「車中泊対策を盛り込んでいる」と回答。熊本県や大分県等の19道県でも、対策の検討を始めている。関連死を含めて37人の犠牲者が出た益城町では、複数の車中泊用の駐車場を確保する方針。避難所と同様に食事を配給する考えで、エコノミークラス症候群の予防策を盛り込んだ“車中泊マニュアル”の策定も進める。行政以外でも、見えない被災者の“見える化”を模案する動きがある。インターネット大手『ヤフー』と東京大学は昨年4月、防災アプリの位置情報を活用し、避難者が集まる場所を把握するシステムを開発した。活用例は未だ無いが、災害時にデータを自治体に提供する予定だ。『京都大学防災研究所』の畑山満則教授(防災情報)は、「被災者の把握が遅れると、物資や医療の支援だけでなく、復旧・復興に関する情報も届き難くなる。“見える化”は被災者の命を守り、生活再建の近道にもなる」と強調している。 (小山田昌人)

20170425 10
「早く部屋に踏み込んでいたら助かったかもしれない…」。約60世帯・約140人が暮らす熊本県益城町の惣領仮説団地。今月6日、自治会長の楠田登喜男さん(65)は、後悔の言葉を何度も繰り返した。先月28日、この団地の一室で、独り暮らしの男性(61)の遺体が見つかった。病死だった。入居者が玄関前に溜まった6日分の新聞を不審に思い、町に通報した時には、死後数日が経過していた。県が地震後初めて把握した仮設住宅での“孤独死”となった。昨年10月に完成した団地では、入居者の絆を深める取り組みや見守り活動が行われてきた。自治会等が茶話会や健康体操教室を頻繁に開き、支援団体が週3回、戸別訪問を行った。1人で入居した男性は昼間、部屋にこもりがちで、夜になると自転車でどこかに出かけた。交流の場には顔を出さず、訪問を受けても応対しないこともあった。支援団体のメンバーが男性と最後に接触したのは、遺体が見つかる約3週間前。男性は、「元気です。心配いらんよ」と話していたという。しかし、悲劇は起きた。団地では今月2日から、玄関に黄色い旗を掲げる取り組みを始めた。入居者が朝方に旗を出し、夕方に取り込む。出しっ放しや出されていない状態が2日程度続けば、その部屋の入居者の安否を確認する。「二度と繰り返さない。その為に、住民同士が互いに見守る活動を強めたい」。楠田さんは黄色い旗に思いを込めた。

仮設住宅での孤独死は阪神大震災で問題となり、東日本大震災でも相次いだ。4303戸の仮設住宅が整備された熊本県では、益城町を含む15市町村に、見守り活動の拠点となる『地域支え合いセンター』が設置され、センターの相談員や支援団体等が戸別訪問を行う。ただ、プライバシーの問題もあり、周囲との交流を避ける入居者の生活実態を犯握することは難しい。「体の具合はどがんね?」。14世帯35人が暮らす熊本県阿蘇市Q東池尻仮説固地。センターを運営する市社会福祉協議会が入居者から選んだ生活支援補助員の上島勲さん(78)は、今月8日午後、妻の増子さん(75)と一緒に団地内を回り、他の入居者に声をかけた。家屋被害が広範囲に点在した阿蘇市は、5ヵ所の仮設団地の入居者を抽選で決めた。出身地区はバラバラで、自治会も無い。上島さんは、高齢者が大半を占める東池尻団地で、数日毎の戸別訪問を行う他、郵便受けや洗濯物に目を配って、異変が無いかを確かめる。「他人に話し難い体調の不安や、生活再建への悩みも打ち明けてくれる。日に日に距離は縮まっている」。上島さんは手応えを語る。福島大学の天野和彦特任教授(被災者支援)は、「同じ仮設に暮らす入居者は、小さな変化に気付くことができる。医療や福祉の関係者が加われば、よりきめ細かな見守り活動になる」と指摘する。自治体が賃貸住宅を借り上げる“みなし仮設”。被災者の入居先が広範囲に及ぶ為、行政による実態把握は更に難しい。熊本地震では約3万4000人が入居。これまで、独り暮らしをしていた40~90代の男女13人の死亡が確認されている。県は市町村を通じ、死亡の経緯を調べて、孤独死防止に繋げる方針だ。被災地支援のNPO法人等で作る『こころをつなぐよか隊ネット』(熊本市)はこれまで、みなし仮設の約1300世帯を戸別訪問し、生活状況や困り事を聞き取った。「高齢者や障害者が避難所生活に限界を感じ、直ぐに入居できるみなし仮設を選んだケースが少なくない。周囲に頼れる人がいない為、孤立する懸念もあり、継続的な支援が必要だ」。副代表の高木聡史さん(49)は、そう強調する。 (江口朋美・大久保和哉)


⦿読売新聞 2017年4月12日付掲載⦿




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