絶対血縁主義・叩き上げ追放・社員自殺…企業小説『トヨトミの野望』が暴露した『トヨタ自動車』闇の歴史

最終利益が2兆3126億9400万円と、3年連続で過去最高益を更新している世界有数の自動車メーカー『トヨタ自動車』。現在の盤石の地位を作り上げた奥田碩をモデルとした内幕小説『トヨトミの野望』(講談社)がバカ売れしている。自動車業界関係者が必読している小説に描かれたトヨタの最大のタブーとは――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

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2016年10月に出版されたベストセラー小説『トヨトミの野望』が波紋を呼んでいる。著者は、多くの大衆娯楽小説を世に生み出した梶山季之と、著名な経済小説家・城山三郎を意識したペンネームで、大手新聞社出身のフリージャーナリストとされている。同書には、トヨタの“奥の院”で本当に起きたエピソードが随所に鏤められ、「著者は現役の自動車担当記者ではないか?」と推理が飛び交い、トヨタ側も犯人探しに躍起だ。というのも、主人公のトヨトミ自動車社長・武田剛平のモデルは、トヨタ自動車の元社長・会長(※現在は相談役)の奥田、もう1人の主人公・豊臣統一のモデルは、豊田家の御曹司で現社長の豊田章男ではないかと言われているからだ。小説には、統一(章男)が女性トラブルで暴力団のフロント企業に監禁され、武田剛平(奥田)が救出に向かうシーンが出てくる等、関係者しか知り得ないスキャンダラスな内容が描かれている。「記者の間では、『この小説に出てくる武田と豊臣の話は、事実に基づく話が大半だ』と言われています。実際、章男氏は役員になる前、突如、アメリカに転勤したことが、グループ企業や担当記者の間で話題になったことがあります。当時、転勤の背景にはプライベートでのトラブルがあり、『ほとぼりが冷めるまで海外に滞在させていたのではないか?』とされていたのですが、このシーンはそのトラブルを書いたものではないかというのです。統一(章男)のへタレぶりも凄まじく、章男社長の父・豊田章一郎名誉会長がカンカンだそうです」(経済紙記者)。トヨタと言えば、“世界一”の座をドイツの『フォルクスワーゲン』と争う自動車メーカーだ。2014年3月期連結決算によると、グループの世界販売台数が世界で初めて年間1000万台を突破。昨年3月期は、売上高は前期比4.3%増の28兆4031億1800万円だった。最終利益が2兆3126億9400万円と、3年連続で過去最高益を更新している。そうした現在の盤石の地位を作り上げたのが奥田氏だが、同作では“サラリーマン社長”奥田と創業家のあるタブーにまで触れている。「一時は“首相にしたい経営者ナンバー1”とも評された奥田氏ですが、豊田章一郎&章男親子との間に確執が生まれ、事実上追い出されています。その内幕はトヨタ最大のタブーになっていますが、それが小説とはいえ世の中に出回ってしまったのです」(同)。では、そのタブーとは具体的にどのようなものか?

トヨタのタブーを知る為には、歴史を遡る必要がある。自動車の開発競争が始まったのは、軍用トラックの需要が高まった1914年の第1次世界大戦頃で、日本では1912年に三菱財閥が自動車産業に参入している。1933年には、トヨタ自動車の前身となる『豊田児童織機製作所自動車部』が設立。現在のトヨタが誕生する。この為、トヨタの創始者は自動織機製作所を作った豊田佐吉だが、創業者は自動車産業に乗り出した豊田喜一郎となっている。それまでの名古屋財界は、豊穣な米作地帯の尾張藩をルーツにした“尾張五摂家”(旧『東海銀行』・『松坂屋』・『名古屋鉄道』・『東邦ガス』・『中部電力』)が仕切っており、トヨタは“山地で地味な三河の田舎大名”に過ぎなかった。但し、戦国時代には“三河を制する者は日本を制する”とされたように、三河は戦国武将たちの戦略交通上の要衝とされ、日本列島の中心部にある。「“三河の田舎大名”だったトヨタですが、自動織機の代理店は三井物産で、事実上の共同開発です。トヨタは自動車産業の急成長の力を借りて、一気に成り上がります」(経営ジャーナリスト)。だが、第2次世界大戦後には、1949年のドッジラインの影響下で大きな経営危機を迎えている。当時のメインバンク『大阪銀行』(後の『住友銀行』、現在の『三井住友銀行』)から融資を断られ、結局、『日本銀行』の幹旋で銀行団の融資を受けている。「更に、この時は戦争直後ですら行わなかった人員整理も余儀なくされ、2ヵ月間の長期ストライキという労働争議に直面します。争議は解決したものの、心労から喜一郎、そして義兄の利三郎(※創始者の佐吉は、喜一郎の母である先妻・たみの他に、後妻・あさとの間に一女・愛子を儲けており、利三郎はその愛子の夫。形式上は初代社長)が次々に亡くなるという異常事態になった。つまり、佐吉の2人の経営上の後継ぎが相次いでいなくなったのだ。先妻・後妻の対立を超えて、利三郎の遠縁に当たる石田退三(※3代目社長。“けち”で知られる“トヨタ中興の祖”)の下、豊田家が1つに纏まって危機を乗り越えざるを得なくなった」(同)。豊田家は、進めていた政略結婚も加速させる。喜一郎の妻は、『高島屋』2代目社長の飯田新七氏の娘・二十子だったが、喜一郎と二十子の長男である章一郎は1952年、三井財閥を構成する三井十一家の1つ、三井伊皿子家の当主で『三井銀行』(※現在の三井住友銀行)取締役だった三井高長の娘・博子と結婚する。その間に生まれたのが章男だ。また、喜一郎の次男である達郎の妻は、富山県を代表する名家・清水家の5代目当主・清水康雄の3女・絢子だ。清水家は、現在のスーパーゼネコン『清水建設』の創業家だ。章一郎の姉妹も、『日本勧業銀行』(※現在の『みずほ銀行』)の総裁・西田太郎の息子や、『大昭和製紙』(※現在の『日本製紙』)の創業家・斉藤家に嫁いでいる。「創始者の佐吉は、喜一郎の母である先妻・たみの他に、後妻・あさとの間に一女・愛子を儲けているが、この愛子の子供4人が豊田自動織機・豊田通商・豊田紡織・デンソーといったトヨタグループの有力子会社にトップや役員として送り込まれ、豊田家による“グループ一族経営”を行うことができたのです」(同)。そして、現社長の章男は、三井物産の副社長・田淵守の娘・裕子と結婚し、一男一女を儲けている。

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もう1人の喜一郎の子供である厚子は、大蔵官僚の藤本進と結婚。この大蔵官僚との結婚で、それまでは旧通商産業省や旧運輸省が中心だったトヨタと霞が関とのパイプは盤石なものとなったのだ。「戦後の豊田家を引っ張ったのは、創始者・佐吉の兄弟の子である英二(※5代目社長)です。技術者だった彼は、フォードとの業務提携を行い、フォードの大量生産方式と経営管理システムを学び、朝鮮戦争で軍用トラックをアメリカ軍から大量受注できたことで急拡大。JIT(ジャストインタイム)やカンバン方式と言われる独自のトヨタ生産方式を確立したのです。独力で大衆車“カローラ”を開発し、大量生産で日本の高度経済成長を支えることができた。更に、フォード一族の独自の支配体制を見て、現在のトヨタ支配の源流を作っています」(同)。大衆車『T型フォード』でアメリカの自動車産業をリードした『フォード』だったが、一族支配と内部対立で業績が悪化。これに懲りたへンリー・フォード(※創始者)の孫・フォード2世は、外部から有能な人材を積極的に採用。1953年にはハーバード大学ビジネススクールで教鞭を執っていたロバート・マクナマラを社長に抜擢し、経営を現代的なものにした。「マクナマラといえば、アメリカ陸軍を戦略的に再編し、大型爆撃機“B29”を大量生産し、対日空爆を実行した人物。その後、ジョン・F・ケネディ政権下では国防長官を務め、ベトナム戦争を拡大した、アジア人から見れば極悪人ですが、トヨタはマクナマラから“優秀な人物を経営幹部に据える”という手法を学んだのです」(同)。以来、三井銀行の中川不器男(※4代目社長)のような外部の人間の登用を積極的に行うようになった。その代表例が、6代目社長である章一郎に重用された奥田なのだ。1932年、三重県津市で、三重県最大の証券会社を営む裕福な家に生まれた奥田は、1955年に一橋大学商学部を卒業。不景気による就職難の折、知人の紹介でトヨタ自動車販売株式会社に入社し、経理畑を歩む。麻雀や飲酒に強く、歯に衣着せぬ言動から上司とぶつかり、2年から6年半、マニラ駐在員事務所に赴任する。そこで、当時のマルコス大統領とのコネクションを構築する。

「当時のマニラには、章一郎の娘婿で大蔵官僚の藤本進も、アジア開発銀行に出向していた。章一郎も孫の顔を見にフィリピンに来ることが多く、そこで奥田は章一郎の眼に留まります。1985年にはアメリカ進出の為の北米事業準備室副室長に指名、ケンタッキー州工場の建設に携わります。現在の北米市場の現地生産の枠組みは、奥田が作ったものなのです。その後、副社長として駐日アメリカ大使館や同国通商代表部関係者と連絡を取り合う等、日米貿易摩擦問題にも当たっています。そして1995年、7代目社長の達郎(※章一郎の弟)が円高による海外進出に手間取り、高血圧症で倒れた後、とうとう社長に就任したのです」(同)。28年ぶりに豊田家出身以外で8代目社長に就任した奥田は、“強いトヨタの再生”“国内シェア40%奪回”(※1999年に40%台に回復)を打ち出し、大企業病の克服に取り組んだ。また、工場に大勢の経理マンを配置し、徹底した合理化を成し遂げ、トヨタ一人勝ちの状態を作り上げた。更に、1997年に世界初の量産ハイブリッドカー『プリウス』の販売を開始し、“環境先進企業”トヨタのイメージもこの時期に確立させた。同年、奥田はアメリカの『ビジネスウィーク』誌で、世界最優秀経営者の1人に選出されるほどになった。日本どころか、世界一が目前となった圧倒的な経理マンの合理的発想の前に、障害となったのは、それまで後ろ盾となっていたトヨタの一族支配である。そして、最大のタブーでもある奥田のクーデター未遂事件が起きたのだ。『トヨトミの野望』では、豊臣家支配に危機感を覚えた武田(奥田)が、グループの持ち株会社設立の利点と可能性を検討する研究会を立ち上げたとされている。「真のグローバル企業を目指そうとするなら、豊臣家支配の経営では限界がある。一刻も早く前近代的経営形態を脱ぎ捨てねばならない」(※同書より)。動き始めた矢先、武田はクーデターの気配を察した豊臣会長に呼び出される。「トヨトミ自動車は豊臣家の血の結晶だ。それがわかるのは豊臣家の人間だけだ」「ホールディングカンパニーとやらを設けてわが豊臣家を神棚に祀りあげ、トヨトミグループの実業はおまえが全部牛耳るという魂胆だろう」という豊臣会長に対し、武田は「ホールディングカンパニーは世の流れです。日本経済、いえ世界経済さえ左右しかねないトヨトミのような巨大企業が、2パーセント程度の株式を所有する豊臣家の意向で進路を定める時代はとっくの昔に終わっております」と反論するも、武田は社長職を追われ、財界活動に専念するよう厳命されるのだ。「奥田のクーデターは未遂に終わり、その後は小泉政権下で日本経団連の会長として、規制緩和を牽引していくことになります。そして、“財界総理”として、積極的なハゲタカ新自由主義路線を進めました。一方で、奥田の改革により世界一が目の前に迫ったトヨタは、創業70周年を迎えた2007年、自動車の世界販亮台数で、遂にゼネラルモーターズ(GM)から首位の座を奪い取るのです。そして2008年には、“御曹司”豊田章男が社長に就任することになる。大政奉還と言われた豊田家経営の復活です」(同)。

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但し、豊田章男時代になってから、自動車業界で世界トップを走るトヨタに逆風が吹き荒れる。2008年にはリーマンショックによる世界的な不況、2009年秋から約1年に亘りアメリカで見られた大規模リコール問題をきっかけとしたトヨタバッシング、従業員に過度のサービス残業を強いて労働基準監督署の査察を度々受ける事態を招き、ブラック企業との批判の声も強い。更に、2017年に大統領に就任したドナルド・トランプからも、名指しのトヨタ批判が行われている。「国内のマスコミに1000億円を超える圧倒的な広告宣伝費を投入する為、ブラック企業との批判の声は出難いですが、2002年には30歳男性社員過労死事件や、グループ会社・デンソー社員がトヨタ自動車に出向中、鬱病を発症し休職を余儀なくされた事件が起きます(※2008年、名古屋地裁でトヨタとデンソーに賠償命令)。2010年には40歳の男性社員が鬱病で自殺しました。世界第1位の自動車メーカーになることを目標に、安易な拡大路線に走った奥田路線のツケが噴出しています。章男体制になり、修正を図るべきなのでしょうが、章男社長は火消しに追われていて、抜本的な改革ができていないのです」(労働ジャーナリスト)。そんな章男が打ち出すのは水素自動車(FCV)時代だ。水素自動車『MIRAI』を量産化したトヨタだが、主戦場となるアメリカでは、普及に対するハードルが低い電気自動車(EV)が優勢になっている。その主役は、嘗てトヨタと共同開発をしていた自動車業界の新星『テスラモーターズ』だ。抑々、「この85年超、トヨタを支えてきたガソリンエンジンを、水素エンジンに転換させるのは可能なのか?」との疑問の声も出ている。国内市場でも、2017年2月にトヨタは軽自動車の『スズキ』との業務提携について発表した。しかし、既にトヨタは軽自動車で『ダイハツ』と手を組んでおり、関係者の間では疑問の声が出ていたが、「豊田章一郎名誉会長直々の指示があった為、断れなかった」(前出の経済紙記者)とされており、どうも奥田が懸念したような豊田一族の経営がここにきて裏目に出ているのだ。2016年の世界販売台数では、トヨタはフォルクスワーゲンに抜かれてしまった。フォルクスワーゲンは、年間では初の世界首位だ。三井とトヨタの御曹司である豊田章男の“トヨタの野望”は、果たしてどこまで続くのか――。 《敬称略》


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