【ダークウェブ】(上) カード情報1人1万円――麻薬・企業機密まで売買

違法取引や犯罪の温床になっているとされる“ダークウェブ”。増殖する闇のサイバー空間の実態を追う。

20170426 04
「貴男のクレジットカード情報が売られています」――。北陸地方の40代男性は昨春、警視庁からの突然の連絡に驚いた。「誰がどこで売っていたのか…」。売り主は岐阜市の男(30)だった。失業中の生活費を稼ごうと、他人のカード情報を転売することを思いついた。最初は一般的なインターネットの掲示板で情報を入手しようとしたものの、失敗。しかし、ダークウェブの存在を知ったことで状況が変わった。ダークウェブのあるサイトで、1人分1万円程度で買うことができた。別のサイトで価格を上乗せして売りに出すと、買い手は次々に現れた。売り上げは4ヵ月で約450万円に達した。逮捕後の調べに、「通常のインターネット空間よりも効率的に売買できた」と供述した。男は昨年7月、他人の口座から現金を引き出した窃盗容疑で逮捕された。捜査の過程でカード情報の売買が判明。警視庁幹部は、「ダークウェブ内の売買だけだったら、犯行は明るみに出なかったかもしれない」と漏らす。ダークウェブは、特殊なブラウザソフト等を使わなければ接続できないインターネットサイトの総称だ。検索サイトには表示されず、自分でアドレスを調べなければならない。発信元が特定されず、犯罪の温床になっているとされる。

そこで取引されるのは、個人情報に留まらない。「あらゆる違法なものが揃っています」。東京都渋谷区にあるセキュリティー会社『スプラウト』のオフィス。高野聖玄社長がパソコンを操作すると、数十種類のコンピューターウイルス・麻薬・偽造免許証が並ぶ英語のサイトが次々と画面に表れた。取引対象毎に専門分化が進み、あるサイトには“殺人請負”の文言も。一般的な通販やオークションサイトと同じように、出品者の信頼度を評価するシステムを導入したサイトもある。競争の激しさは、本物のインターネット通販業界宛らだ。脅威は、人々の暮らしや企業活動にも忍び寄る。イスラエルのセキュリティー会社の調査では、日本に本社があるクレジットカード会社の利用者約10万人分の情報がサイト上で売買されていた。「企業の経営会議資料や新製品の図面を確認したこともある」(高野社長)。情報は世界中からアクセスできる。インターネットのサイトが犯罪行為に悪用される事例は、過去にもあった。2007年には、携帯サイトで知り合った男3人が女性を殺害する事件が発生。大規模な掲示板で違法薬物が売買されるケースも少なくない。しかし、これらは誰もがアクセス可能で、身元の特定も容易だ。捜査機関が取り締まりを強化したことで、違法行為の摘発も進んだ。代わって台頭したのがダークウェブだ。身元を隠すソフトと仮想通貨が普及し、通信と決済の両方で高い匿名性を保つことが可能になった。捜査幹部は、「犯罪者が活動する舞台は、表のサイトからダークウェブに移っている」とみる。セキュリティー大手『トレンドマイクロ』シニアスペシャリストの鰆目順介氏は、「今後、日本語のダークウェブも増える。専門知識が無くても、簡単にサイバー犯罪等に手を染められる環境が整いつつある」と懸念する。

20170426 07
匿名化ソフトを使って接続するインターネット上の空間“ダークウェブ”が近年、急速に膨らんできた。様々な犯罪の温床になっているとされるが、その規模や実態はよくわかっていない。膨張する“インターネットの闇市場”の一端を覗いた。「操作は普通の通販サイトと変わりません」。セキュリティー会社『スプラウト』の高野聖玄社長が、手元のパソコンのキーボードをタッチしながら説明してくれた。「商品が違法という点以外は…」。最初に開いたのは、ダークウェブ上の“代表格”と呼ばれるサイト。商品は“麻薬”・“銃器”・“詐欺”・“コンピューターウイルス”等のカテゴリーに分かれ、買いたい物を直ぐ探せるようなっている。商品の写真の横に価格。表記は全て英語だ。検索用の窓もある。“JAPAN”と入力すると、日本人の偽造パスポートがヒットした。価格は10ドル(約1100円)。仮想通貨のビットコインで支払える。高野社長によると、明らかに盗品とわかるパスポートも売られているという。“殺人請負”のサイトもあった。代金は7000ドルから20万ドルだそうだ。「代金だけ受け取って何もしない詐欺サイトかもしれないが…」と高野社長。日本語の掲示板サイトもあり、違法薬物の他、真偽不明の企業幹部のスキャンダル情報等が書き込まれていた。一般的なインターネット掲示板であれば削除されるレベルだろう。

高野社長によると、日本語の闇マーケットは未だ少数だが、「ダークウェブの広がりから考えると発展するのは時間の問題」とみる。同社では、顧問弁護士等と相談しながら、こうしたサイトで情報収集を続けている。「興味本位で接続すれば、犯人側に個人情報が渡ったり、犯罪に巻き込まれたりする可能性もある」と警告する。サイト間の競争も激しい。“出品者評価システム”を導入するサイトもある。売り手や商品の信頼度を星の数等で格付けする仕組みで、形式は一般のオークションサイト等と変わらない。ある大手サイトに出品されていた日本人のクレジットカード情報には、15人が購入したとの表示があった。其々、満足度で出品者を格付けしており、コメント欄には“パーフェクト!”の評価もあった。「ダークウェブ内のサイトの9割は詐欺」(セキュリティー会社『アーバーネットワークス』名誉アドバイザーの名和利男氏)との指摘もある。出品者評価システム等で詐欺サイトとの違いを明確にし、操作性や親切度の高さをアピールして、利用者を増やす狙いがあるようだ。目当てのサイトを手軽に探せるダークウェブ専門の検索サービスもある。トップ画面は『Google』にそっくりで、キーワードを入れると直ぐに検索結果が表示される。これまでは其々、正確なURLアドレスを知らないと辿り着くのが難しかったが、検索サイトはそのハードルを一気に下げた。ただ、誰もが覗ける訳ではない。パスワード等の入力を義務付ける会員制サイトも出てきた。ダークウェブによる被害は広がる。2015年、世界中で約3800万人が会員になったとされる不倫交際を目的としたSNSから個人情報が流出。情報を盗んだハッカーは、その一部をダークウェブ上で公表した。「お金を払わないと個人情報を暴露する」と恐喝する事件も起きた。大手の闇サイトでは、昨年9月に『Yahoo!』から流出したとされる5億人分以上の利用者の個人情報も売られているという。サイバー攻撃を支援する『RaaS』と呼ばれる“サービス”も、ダークウェブ上で存在感を増している。企業等のパソコンのデータを見られなくし、解除の見返りに金銭を要求する身代金要求型ウイルスを使ったサイバー攻撃を支援する。顧客の求めに応じたウイルスのカスタマイズから身代金の振込先までが、セットで販売されている。前出のトレンドマイクロによると、昨年、日本企業が受けた身代金要求型ウイルスの被害は、前年比3.6倍の2350件に上った。鰆目氏は、「ダークウェブでRaaSが普及していることが、被害を拡大させている」と指摘している。


⦿日本経済新聞 2017年4月19日付掲載⦿




スポンサーサイト

テーマ : ITニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR