【憲法考・施行70年】(01) 改正論議、じれる首相

日本国憲法は来月3日、施行70周年を迎える。70年前から一字一句変わらない憲法で、この国の未来を描けるのだろうか? 憲法改正論議の現状を報告する。

20170427 07
「改正するなら9条だ」――。安倍晋三首相は冗舌だった。今月7日、首相公邸。夕食を囲んだ国会議員らに、9条改正の持論を語り始めた。「(戦力不保持を定めた)9条2項は色々議論になる。そこに触れずに自衛隊をどう書くかだ」。自衛隊の存在は憲法に明記が無い。歴代政権は「自衛隊は合憲である」との立場を取ってきたが、リベラル勢力からは批判が絶えなかった。9条に自衛隊の根拠規定を設けることは、首相を始め、保守勢力にとって憲法改正の本丸だ。自民党が2012年の憲法改正草案で提案した緊急事態条項ではなく、9条に言及したことに、出席者は“首相の強い拘り”を感じ取った。首相は今年2月24日の衆議院財務金融委員会でも、防衛費の増加を批判した日本共産党の議員に苛立ちをぶつけた。「『(自衛隊を)憲法違反だ』と言っておきながら、いざという時は『命をかけろ』(と日本共産党は言うのか)。そんなことはできない」。首相は表向き、憲法改正で踏み込んだ発言を控えてきた。野党の反発を避け、改正の機運を高める為だ。一方で、気心の知れた相手には陰に陽に発破をかけてきた。同月中旬には、自民党組織運動本部の山口泰明本部長を首相官邸に呼び、自民党大会で発表する運動方針の書き換えを指示した。“憲法改正原案の検討・作成を目指す”との表現は、“原案の発議に向けて具体的な歩みを進める”と変わり、発議を目標とすることが盛り込まれた。

先月4日、東京都内のホテルで開かれた保守系の議員連盟の会合でも、「憲法施行70年の節目に、自民党から憲法改正を発議できるよう、議論に入らなければいけない」と踏み込んだ。首相は来年9月の党総裁選での3選を目指し、最長で2021年9月までの長期政権を視野に入れる。だが、衆参両院で改憲に前向きな勢力が3分の2以上を占める“この70年間で最高の政治状況”を、その後も手にできるかは予断を許さない。更に総裁選後には、来年12月に衆議院議員の任期満了を迎え、再来年夏の参院選と国政選挙が続く。憲法改正の実現には「来年秋の臨時国会までには、衆参両院の憲法審査会で改正項目の絞り込みを終える」(政府関係者)ことが望ましく、「首相も残り時間が少ないことは自覚している」(首相周辺)という。ところが、肝心の憲法審査会は足踏み状態だ。昨年の臨時国会以降、実質審議は衆議院は5回、参議院は1回に留まる。ブレーキとなったのは、天皇の退位と憲法を絡めようとした民進党の対応だ。民進党は憲法審査会で天皇制を議題に取り上げるよう求め、与党は「静かな議論が必要だ」と慎重姿勢を崩さなかった。与党内の足並みも思うように揃わない。憲法審査会の自民党メンバーには、「憲法改正は与野党協調で進めるべきだ」との考えが根強い。改正には国会発議だけでなく、国民投票の過半数の賛成も必要で、「与野党が対立して世論の分断を招くことは望ましくない」という訳だ。公明党も「党憲法調査会でゼロから議論する」と、慎重姿勢を崩していない。首相は党大会で、憲法制定に関わった芦田均元首相の言葉を引用した。「芦田首相は敗戦後、『日本はどうなるのか?』と悩む若者たちに、『どうなるのかではなく、どうするかだ』と語った。この気概を持たなければならない」。笛吹けど進まぬ憲法論議を“どうするか”。首相は、次の一手に頭を捻る。


⦿読売新聞 2017年4月25日付掲載⦿
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テーマ : 憲法改正論議
ジャンル : 政治・経済

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