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【変見自在】 パンの中の悪意

日本敗戦の朝、アメリカ人がどやどややって来た。今もそうだけれど、彼らは日本人に比べてかなり知的レベルは低い。例えば、GHQスタッフのレオン・ベッカーは、「日本はアメリカに比べて遅れていて、だから未だ奴隷がいる」と頭から信じていた。彼はさんざ探して、北海道の炭坑を監獄部屋と決めて、「1万3000人の奴隷を解放した」(『マッカーサーの日本』)。「彼らは24時間働かされた、立派な奴隷だった」と彼は報告したが、当時は“黒いダイヤ”のブームだった。現に、この監獄部屋摘発の後、GHQは「石炭増産の為に24時間操業をせよ」(同)と指令している。俄かに奴隷にされた炭坑夫もビックリしただろう。アメリカ人はまた、「日本語の読み書きも文化の遅れた一因」と見做した。だって、アルファベット26文字のアメリカ人の識字率はやっと60%台。日本人は1万以上の漢字に仮名とアルファベットも使っているから、「日本人の85%は新聞が読めないだろう」(同)と推測した。「それが日本の民主化を遅らせている」「まずローマ字化し、ゆくゆくは英語化すべきだ」と。そんな馬鹿を論す為、文部省は昭和23(1948)年、子供から老人までを対象に全国規模の日本語読み書きテストを実施した。結果は識字率98%。担当したGHQ将校のジョン・ペルゼルが、「識字率をせめてアメリカ人並みに改竄してくれないか?」と日本側に哀願した話が残っている。アメリカの医学界も低レベルで、新生児は“1年間は植物状態”と信じていた。だから、GHQの医療担当官は、早い時期から添い寝する母子を見て驚愕する。「添い寝は危険で不潔だから」と、GHQは産院に母子分離を命じ、為に不幸な取り違え事故が増えた。

母子添い寝が赤ん坊の情緒安定にいい影響があることをアメリカ人が知るのは、1980年代に『世界保健機関(WHO)』が公認してからだ。この辺までは無知ながら、どこかに善意は感じられるが、GHQの施策にはそうでないものも結構ある。クロフォード・サムスは、日本人の頭にDDTをぶっかけた男だが、その次にやったのが、マーガレット・サンガーと加藤シヅエを使った産児制限強制だった。フランクリン・ルーズべルトは、「日本人は4つの島に閉じ込めて滅ぼせ」と遺言した。「ポエニ戦役で敗れたカルタゴのように」と。それで、“4つ”以外の台湾や朝鮮は没収。軍隊は解体させ、交戦権も奪った。ローマがカルタゴに提示した降伏条約そのままだ。加えて、この産児制限で人口を減らし、滅びをより確実に早めさせた。実際、日本の人口は何れ、先の大戦前のそれを割り込むだろう。サムスはもう1つ仕掛けをした。日系アメリカ人が祖国の窮乏を救う為に、所謂“ララ物資”を始めた。アメリカ政府は家畜飼料の脱脂粉乳を出したが、その際に始まった給食に便乗してきた。パン食の普及だ。彼らは呼び水に、約18万トンの小麦を供与し、見返りに“パンを中心とした給食”を法制化させた。山村明義『GHQの日本洗脳』によれば、ジョージ・マクガヴァン上院議員は「これで日本を将来にわたる小麦の大口買い入れ国に仕立てられた」と語っている。“コメを食うと頭が悪くなる”伝説が伝播されたのもこの時期。朝日新聞は「次代の子供たちまでコメ食につきあわせるな」(昭和39年)と、アメリカからカネを貰ってパンの宣伝をした。斯くてコメ離れは進んで、2011年にはパンとコメの購入額が逆転している。小学1年生の道徳教科書にあった“パン屋”の話を“和菓子屋”に変えたら、検定をパスした。「日本の伝統と文化はパンでは語れない」という趣旨だ。それに朝日が噛みついた。「パンには伝統も文化も無いのか?」と。そう、何にも無い。代わりに、頭が悪くなるグルテンと、年季の入ったアメリカのズルさがどっさり入っている。コメの飯を食え。少しは歴史も見えてくる。


高山正之(たかやま・まさゆき) ジャーナリスト・コラムニスト・元産経新聞記者・元帝京大学教授。1942年、東京都生まれ。東京都立大学法経学部法学科卒業後、産経新聞社に入社。警視庁クラブ・羽田クラブ詰・夕刊フジ記者を経て、産経新聞社会部次長(デスク)。1985~1987年までテヘラン支局長。1992~1996年までロサンゼルス支局長。産経新聞社を定年退職後、2001~2007年3月まで帝京大学教授を務める。『高山正之が米国・支那・韓国・朝日を斬る 日本人をますます元気にする本』(テーミス)・『アジアの解放、本当は日本軍のお陰だった!』(ワック)等著書多数。


キャプチャ  2017年4月27日号掲載
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