【ふるさと納税が日本を滅ぼす】(04) ふるさと納税が地方に齎した効果とは?

20170501 03
宮崎県都城市と同じように、ふるさと納税で多額の寄付を集めている自治体に話を聞いてみた。“捐得勘定”第2位の静岡県焼津市。人気返礼品は海産物だ。「人気の理由は、マグロやカツオ等の水産物ブランドの認知度と、ふるさと納税の仕組みが上手く結び付いたことと、品揃えの豊富さではないでしょうか」。焼津市ふるさと納税課統括主幹の石原隆弘氏は話す。2015年度のふるさと納税受入額(※以下“受入額”)が約38億2600万円、2016年度は50億円に達する見込みだという。返礼品の還元率の公表はしていないが、大体5割。嘗ては、市内の会社が提供する幼児教育用のアプリと『iPad』のセットを返礼品としていたが、昨年の11月以降は止めている。焼津と言えばマグロやカツオが有名だが、返礼品の中にあるズワイガニやタラバガニは、焼津の産品と言えるのだろうか? 「それは、どの地域の返礼品にも言えることではないですか。ズワイガニやタラバガニは駿河湾で獲れる訳ではないけれど、水産都市・焼津の産業商品の1つです。抑々、日本に入ってきているタラバガニは殆どがロシア産ですし」。そう話す石原氏に、ふるさと納税が焼津市に齎した効果を聞いてみた。「メディアに取り上げられることも多く、市民の皆さんも自信を付けていると思います。勿論、38億円の半分が市内の産業の出荷になっている訳ですから、地元産業への効果は大きいですね」。

第3位の山形県天童市は、返礼品の人気ナンバー1がさくらんぼ。天童市ふるさと納税推進係主査の沼澤賢次氏は、受入額が多い理由を「先ず、返礼品が魅力的であること。更に天童市では、1万円以上の寄付をした方に、将棋の駒のストラップに名前を入れて差し上げています。寄付したことが形に残り、伝統工芸の支援にもなるところが人気なのではないかと思います」と話す。2015年度の受入額は約32億2800万円。市場全体は拡大を続けているが、天童市の今年度の額は前年並みに留まりそうだという。「元々、金額が目的ではありません。参入する自治体数も増えており、地場産業と関係のないものや、ふるさと納税の趣旨に沿わないものも散見されますが、うちはあくまでも制度の趣旨に則り、地場産業の振興に尽力していきたい」(沼澤氏)。返礼品の還元率は5割。寄付者の内、天童市出身者か住んだことのある人の割合は1%。これに親戚・友人が住んでいる人を加えて約5%。つまり、縁も所縁も無かった人が圧倒的だ。ふるさと納税の目的は、地場産業の振興・天童市のファンの獲得・伝統工芸の復興としている。「おまけのストラップと、返礼品としての将棋の駒の需要が増え、伝統ある将棋駒産業の規模が、返礼品を始める前の倍以上になっている等、効果は上がっています」(同)。「返礼品競争ではないか?」という批判が出ていることについて、“勝ち組自治体”に聞いてみた。「何を以て返礼品競争と言っているのかわかりませんが、各自治体が自分たちの地元の産品をお礼品にするというのは、ふるさと納税の流れの中で必然的なことで、皆で一斉にお礼品を止めでもしない限り、これはどうしようもない。抑々、返礼品競争の“競争”が地方同士を指すのだとしたら、私はそれには当たらないと思います。制度を利用すればそれなりの寄付は頂けるし、寄付は都市部からのものが大半なので、地方同士で取り合うことにはならないと考えるからです」(前出の石原氏)。前出の沼澤氏に、赤字の過疎自治体が出ていることについて聞くと、「頑張った自治体に税収を移転するふるさと納税は、“自治体間競争”だと思います。その手段が“返礼品競争”になっているのは問題ですが、競争のある分野であることには間違いがない。勿論、“ふるさと納税をやらない”というのも1つの選択肢だと思いますが、どんな自治体でも、職員のやる気ひとつで何とでもなるのではないかと思います」という答えが返ってきた。

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災害の見舞金としてのふるさと納税の利用も増えてきている。昨年12月22日に大火があった新潟県糸魚川市では、ふるさと納税に返礼品の無い“緊急災害寄付”を設け、同24日から受け付けを開始した。この緊急災害寄付の総額が同31日までに2億1135万円、通常のふるさと納税を行う人も増加して、23日から31日までで1億7913万円。2015年度の受入額が約4100万円だったから、火災発生から月末までの約10日間で、前年の年間の寄付の10倍近い金額が集まったことになる(※ふるさと納税とは別に、市に寄せられた義援金は、今年1月17日現在で約2億6000万円)。ふるさと納税の殆どが、クレジットカード決済のできる民間のふるさと納税サイトを通している。そこで、日本最大級のふるさと納税総合サイト『ふるさとチョイス』を企画・運営する『トラストバンク』代表取締役の須永珠代氏に話を聞いた。「“ICTを通じて地域とシニアを元気にしたい”をコンセプトに、地域にヒト・モノ・カネ・情報を循環 させる手段を考え、カネが直接地域に動くふるさと納税に着目しました。嘗て、ふるさと納税制度は情報も少なく、手続きも煩雑で、十分活用されていませんでした。そこで、『全ての情報を纏めてインターネット上で申し込みから決済までできるようにすれば、より多くの地域にお金が回るのではないか?』と考え、2012年9月にサイトを立ち上げたのです」。全国1788自治体中、ふるさとチョイスで申し込みからクレジット決済までできる自治体は約1160(※昨年12月現在)。全自治体の寄付金の使い道や返礼品、街の情報を載せているので、寄付者は他の自治体と比較した上で、寄付する先を選ぶことができる。

2012年4月に会社を設立し、サイト立ち上げの為に全国の自治体ホームページから情報を集めていた時には、須永さんとアルバイト2名だった従業員数は、今年1月現在アルバイト含め約80名。2015年度の全国のふるさと納税額約1653億円の約82%が、ふるさとチョイス経由だ。同社では、自治体に返礼品の事業者の集め方やPRのやり方等のアドバイスを行うこともあるという。地域では当たり前過ぎて見向きもされなかったようなものが、返礼品になって人気が出ることも多い。ふるさとチョイスで人気が出た特産品の例の1つが、山形県三川町の天然モクズガニ。「弊社スタッフが三川町の担当者からモクズガニの話を伺い、『お礼の品にしては?』と勧めていましたが、地元事業者は『これが…?』と躊躇していました。そこで、三川町の担当者と弊社スタッフで事業者を訪問し、説得を重ね、去年からお礼の品にしたところ、凄い人気で、あっという間に品切れになりました」(須永氏)。また、財政破綻した北海道夕張市とは協定を結び、ふるさと納税を通じて夕張市を支援する為、スタッフを派遣したり、セミナーを開いたりしている。現在、同社が力を入れているものの1つが、寄付金の使い道を指定できるふるさと納税の本来の趣旨を活かした“ガバメントクラウドファンディング”だ。福井県の宇宙産業振興や鳥取県大山町の国立公園公衆トイレ改善等、様々な事業への寄付を専用ページで募っている。ふるさとチョイスでは、総務省の通達も踏まえた独自の掲載基準を設けており、『iPad』等の家電製品の返礼品は掲載していない。「家電製品や大手企業の製品等をお礼の品にすれば、寄付は集まるが、本社のある都心へお金が戻ってしまい、地域の力がつきません。2年ぐらい前までは、還元率は高くても5割ぐらいという暗黙の了解があり、その中で各自治体が地域の特産品を全国にアピールする為に創意工夫を凝らしていたのです。しかし、2015年4月の制度改正もあり、参入する自治体が増える中、より多くの寄付金を集める為に還元率を上げる自治体も出てきました」。還元率の高いところや、家電製品を取り扱うところばかりが寄付を集めている現状に対し、「本当に地域の力になっているのか?」と疑問を呈する須永氏だが、「市場規模は未だ拡大する」と見ている。「昨年度のふるさと納税件数が約700万件。弊社のデータでは1人平均5件ぐらい寄付しているので、寄付者は140万人ぐらい。日本の納税者数は約4500万人と言われていますから、まだまだ…」。膨張するふるさと納税市場は、どこへ向かうのだろうか――。 (取材・文/本誌編集部)


キャプチャ  2017年3月号掲載




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