【Global Economy】(34) THAAD配備の余波…中国の“報復”、喘ぐ韓国

韓国経済が低迷している。在韓アメリカ軍への防衛システム配備に反発する中国の“報復”が追い打ちをかける。北朝鮮を巡る情勢は緊迫し、大統領選を前に不安が広がる。 (本紙中国総局 鎌田秀男)

20170501 12
ソウル市内にある李氏朝鮮時代の王宮跡『景福宮』。韓国を代表する観光地だ。今月23日に訪ねた。タクシーの運転手が、「いつも中国人の団体を乗せた大型バスがずらりと並んでいたのに、今は1台も見ないよ」と元気無く呟いた。チケット売り場の女性は、「中国人は半分以下に減った」と話す。構内で中国語が聞こえても、台湾やシンガポール等の団体客ばかり。中国大陸からのツアー客を見つけることはできなかった。“韓国の原宿”と呼ばれる繁華街の明洞。中国人観光客に人気の火鍋店『海底撈』の女性従業員が、路上でチラシを配っていた。「客の8割が中国人だったが、今は殆ど来ない。チラシ配りなんて初めてだわ」と顔を顰めた。韓国では、在韓アメリカ軍への最新鋭ミサイル防衛システム『最終段階高高度地域防衛(THAAD)』の配備が進む。これに反発する中国政府は、韓国ツアーの中止等で“報復”しようとしている。THAADの配備地は、大手財閥『ロッテグループ』が所有するゴルフ場だった。そのロッテは“狙い撃ち”に遭っている。明洞にある『ロッテデパート』。免税フロアでは、中国人向けの通訳が手持ち無沙汰にしていた。30万ウォン(約3万円)のセットを爆買いする中国人が行列をなしていた高級化粧品店『雪花秀』にも、団体客の姿は無い。免税フロアの広報担当者は、「THAAD問題が起きてから、全体の売り上げが2~3割減った」と嘆く。韓国紙によると、先月の訪韓中国人観光客は前年同月比40%減の約36万人。今月1~9日は64%減まで落ち込んだ。

中国に進出した韓国企業も苦戦を強いられている。ロッテは、系列のスーパー『ロッテマート』を中国で約100店展開する。その9割近くが消防法違反等の名目で営業停止処分を受けたり、営業を自粛したりした。北京市中心部で営業を続けるロッテマートも、店内には殆ど客がいない。肉や魚等の生鮮品売り場は、3分の1ほどしか商品を置いていない。50代の女性店員は、「売れない物を置いても仕方ないから」と諦め顔だ。ロッテマートは、中国全体で2000億ウォン(約200億円)の被害が出ているという。韓国の『現代自動車グループ』は、中国での先月の新車販売台数が前年同月比52%減の約7万2000台と半減した。北京市内にある同社ディーラーは、1台当たり2万元(約32万円)の値引きを始めた。今日まで上海で開かれている『上海モーターショー』で、現代自動車の中国法人トップである徐和誼会長は「我が社は厳しい困難に直面している」と危機感を滲ませた。韓国経済は、中国に対する依存度が高い。中国との関係悪化が長引けば、影響はより深刻になる。韓国は輸出に頼る経済構造だ。人口は約5000万人と比較的少なく、国土も狭い。国内の消費には大きな期待ができず、韓国企業は海外への輸出で成長してきた。輸出入共に最大の相手国は中国だ。中国が占める割合(2016年)は輸出が25.1%、輸入も21.4%に上る。韓国から半導体等の部品を輸出し、労賃の安い中国でスマートフォン等を組み立てるのが基本的な構図だ。韓国はここ数年、実質国内総生産(GDP)伸び率が2~3%前後の低成長が続く。『日本総研』の向山英彦氏は、「中国経済の減速と、中国の構造変化が低成長の主因」と分析する。中国の経済成長率は2010年の10%台から、2015~2016年には6%台まで下がった。需要が伸び悩み、韓国の輸出に影響が及んだ。一方で中国メーカーも力を付け、これまで韓国から輸入していた電子部品等を中国で製造するようになった。低成長の結果、韓国では若い世代の失業が増えた。韓国の2016年の失業率は、前年より0.1ポイント悪化して3.7%。若年層(15~29歳)に限ると9.8%に上り、これまでの最悪を更新した。韓国の人々は競争意識が強く、大学を卒業しても財閥系等の大企業に就職できなければ、就活塾等に通って“就職浪人”をするケースが多い。学校卒業後も生活を親に頼る若者を、韓国では“カンガルー族”と呼ぶ。激しい受験戦争や失業に嫌気が差した若者の間では、“へル(地獄)朝鮮”という造語も流行している。

20170501 13
■大統領選候補2氏、成長戦略の具体策乏しく
韓国経済の最大のウィークポイントは、その“足腰の弱さ”にある。韓国駐在の長い日本の商社マンが、「韓国のビジネスマンは直ぐに成果を求めたがる」と指摘する。「暫くは赤字でも、じっくり畑に種を蒔き、将来の大きな事業に育てようとする感覚があまり無い」という。こうした風潮が生まれた背景には、“圧縮成長”と呼ばれた急速な経済発展がありそうだ。1960年代までは、韓国より北朝鮮のほうが経済規模は大きかった。だが韓国は、1960年代から1980年代に朴正熙大統領らの下で、“漢江の奇跡”と呼ばれる成長を達成した。朴槿恵前大統領の父である朴正熙大統領は、財閥を優遇して、輸出主導による発展を実現した。高い技術が必要な部品は、日本からの輸入で賄った。その結果、韓国では日本のように高度な技術を持つ中堅・中小企業が十分に育たなかった。韓国の製品は、「少品種・大量生産の汎用品が中心」(『アジア経済研究所』の安倍誠氏)になった。政府による財閥優先の産業政策の中で、政府と財閥の癒着体質も深まり、朴槿恵前大統領退陣の土壌にもなった。韓国経済の復活には、「より付加価値の高い製品を生み出せる企業を育成する必要がある」(同)。新大統領の有力候補である文在寅氏と安哲秀氏は、公約に“大統領直属の第4次産業革命委員会を設置”や“未来産業創業国の完成”等を掲げるが、具体策に乏しい。財閥改革も訴えるが、実効性は見通せない。緊迫の度を増す北朝鮮情勢や、保護主義の姿勢を示すアメリカのドナルド・トランプ政権誕生等の不安要因も重なる。韓国経済の将来は、激変する環境の中、新政権がどれだけ腰を据えて再生に取り組めるかにかかっている。

■制度改革が必要  金正湜氏(延世大学教授・経済学)
韓国経済が低成長に喘ぐ原因は3つある。①主要産業だった鉄鋼や造船等が製造拠点を中国に移した②経済の変化に合わせた制度改革が進まない③政府の成長戦略に問題があって輸出が伸びない――ことだ。雇用を生み出しながら成長を続ける、正しい成長戦略を採るべきだ。教育や流通等の制度改革の他、所得や富の二極化の解消も必要だ。新大統領が既得権益を持つ集団の反発を防ぎつつ、適切な制度を作れるかどうかが成長のカギになる。


⦿読売新聞 2017年4月28日付掲載⦿




スポンサーサイト

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR