【電通の教訓】(上) 違法残業、立証に壁

過労自殺の労災認定に端を発した大手広告代理店『電通』の違法残業事件。昨年12月の本社幹部に加え、昨日には全3支社の幹部も書類送検され、常態化していた過重労働の実態が浮き彫りになった。日本企業に染みついた長時間労働を見直すには何が必要か、事件から見えた教訓を明らかにする。

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「事件前、午前0時以降の帰宅や、月100時間以上の残業は当たり前だった」――。電通本社の中堅社員はこう振り返り、会社側に自主申告する勤務時間は、労使協定の上限に収まるよう過少申告することが「職場の暗黙の了解だった」と明かした。新入社員だった高橋まつりさん(当時24)の過労自殺等を受けて、昨年12月、厚生労働省が4本支社等に立ち入り調査へ入ると、会社側は22時に全館消灯する等、長時間労働の是正に着手。しかし、自宅に仕事を持ち帰る“隠れ残業”もあるといい、「事件後、優秀な人ほど会社を辞めている。今回の書類送検が社員の労働環境にプラスになってくれればいいが…」と複雑な思いも吐露した。「違法な残業だとは思っているが、裏付けが難しく、書類送検できずに悔しい」。昨日、東京都千代田区で開かれた東京労働局の記者会見。「電通本社の9部局で違法な長時間労働の疑いがあった」と発表しながらも、今回、書類送検をできなかったことについて、同局幹部は唇を噛んだ。

同省が電通のようなオフィス職場のホワイト力ラーを対象とした大規模な違法残業事件を捜査するのは、今回が初めてだった。年間約1000件の労働事件を送検する同省だが、伝統的に建設現場等での労働災害が多い。2015年に新設された『過重労働撲滅特別対策班(かとく)』がこれまでに手がけた5件の違法残業事件も、全て全国チェーンの飲食店や小売店の店舗従業員等、労働時間が把握し易い職場だった。これに対し電通では、会社にいてもサークル活動や飲食等の時間が含まれる一方、社外での仕事も多い。社屋の出退社時間と、各社員が自己申告する労働時間のギャップだけでは、違法残業を立証できない。労働時間を自ら過少申告するケースも少なくなかった。“客観証拠”を重視する検察側からの指示もあり、同省はパソコンの稼働状況やメールの送受信記録等の分析に膨大な時間を費やし、漸く実際の労働時間を確定させた。上司の“故意性”の証明も壁になった。「明らかに上限を超す残業をしなければ熟せない」と認識した上で、部下に業務を指示している必要がある。同省は、深夜や未明に上司が部下に送ったメールの内容等を証拠として積み上げたが、最終的に立件できたのは、昨年12月に書類送検した本社の高橋さんの上司1人と今回の3支社の3人の計4人。立件を目指していた本社役員ら上層部の立件には至らなかった。今後の捜査は検察の手に委ねられたが、刑事責任の追及は容易ではない。ある検察幹部は、「行政指導ならまだしも、刑事責任を問う以上、安易な立証は許されない」と強調する。電通では既に石井直社長(当時)が引責辞任し、働き方改革に走り始めている。同省幹部はこう話す。「捜査のメスを入れるべき企業は、未だ他にもある。今回の捜査の手法を検証し、過酷労働の根絶に繋げたい」。


⦿読売新聞 2017年4月26日付掲載⦿
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