【憲法考・施行70年】(05) 天皇制議論、自民に火種

20170502 30
先月27日午前、衆議院憲法審査会の与野党幹事らが国会内の一室に顔を揃えた。当面の日程協議が終わったところで、野党筆頭幹事を務める民進党の武正公一議員が切り出した。「再三この場で提案している憲法第1章の議論。この日程も協議してほしい」。第1章は、“天皇”についての条文だ。与党筆頭幹事を務める自民党の中谷元議員は、天皇陛下の退位を実現する特例法案の国会審議が控えていることを理由に、「時期の配慮は必要だ」と渋ったが、最終的に「法案成立後なら…」と受け入れた。来月にも天皇制についての討議が行われる。天皇制は長年、憲法改正の論点の1つだった。明治憲法下で統治権を総攬する元首だった天皇は、現行憲法で“象徴”となった。「象徴天皇制は今後も維持されるべきだ」との意見が大勢を占めてきたが、一方で、天皇の地位・天皇の行為・皇位の継承については、国会でも話題になってきた。天皇の地位を巡っては、保守系を中心に「“元首”と位置付けるべきだ」との主張がある。天皇は「国政に関する権能を有しない」(第4条)と規定されているが、外交儀礼上は国を代表する元首として遇される。「憲法も実態に即するべきだ」(自民党中堅)との声は根強く、退位に関する政府の有識者会議の意見聴取でも、「天皇は我が国の国家元首」(麗沢大学の八木秀次教授)との主張が出された。自民党も、野党時代の2012年に纏めた憲法改正草案に、「日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴」と明記した。

2005年の憲法草案の検討段階では、「統治権の一部を持つと誤解される」「野党の理解を得られない」等と慎重論が上がり、見送った経緯がある。実際、この不安は的中し、2012年草案は自民党に対する格好の攻撃材料になった。自民党関係者は「野党時代に保守系支持層を取り込む為に書き込んだものだ。実際の改憲項目としての順位は低い」と弁明するが、党内では一定の支持を得ているのも事実だ。昨年8月の陛下のお言葉を受け、天皇の“公的行為”にも焦点が当たった。昭和天皇と現在の天皇陛下について、82歳当時の1年間の公的行為の件数を比べると、344件の昭和天皇の約1.5倍の件数を現在の陛下は熟した。現在の陛下は国内各地へのご訪問も多く、身体的な負担も大きかった。過去の憲法審査会でも、「公的行為を明確に整理するべきだ」との意見は出ていた。だが、「(公的行為の)皇室外交を国事行為として明確にするべきだ」(自民党議員)、「国事行為以外に広げることは国民主権と相容れない」(日本共産党議員)等、言いっ放しの議論に終始し、方向性は示されなかった。女性宮家の創設等の議論を求めてきた民進党は、憲法審査会でも“皇位の継承”を議論したい考えだ。だが、皇位継承への考えは個人で意見の隔たりが大きく、世論を二分する可能性もある。これまでも、「男系男子に限定するべきだ」「女性・女系天皇を容認するべきだ」という両方の立場から、「憲法で明確にするべきだ」との主張も一部にあった。自民党幹部は指摘する。「只でさえ纏めるのが難しい改憲論議に、天皇制が絡んだら、憲法改正は遠い未来の話になる」。天皇制について国民の多くが思いを致す今、冷静な議論が期待される。 =おわり

               ◇

米川丈士・藤本将揮・石井千絵・重松浩一郎・傍田光路が担当しました。


⦿読売新聞 2017年5月1日付掲載⦿
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テーマ : 憲法改正論議
ジャンル : 政治・経済

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