【霞が関2017春】(09) 誰が復興を妨げるのか…短命大臣に振り回される

今村雅弘氏が先月26日に復興大臣を辞任した。その前日に、東日本大震災の被害について「東北でよかった」と述べたことに対して責任を取った形だ。しかし、過去に言動が問題となった復興大臣は、今村氏だけではない。震災から6年が経ち、相次ぐ大臣の不祥事に振り回される官僚たちからは、「復興大臣が単なる名誉ポストになってしまったから起きる問題」と溜め息が漏れる。「遂に一線を越えた」――。先月25日夕、今村氏の発言を報道で知ったある復興庁幹部は、これからの混乱を思って天を仰いだ。今村氏が辞任を表明し、次の大臣がやって来る。表向きは皇居での認証式を経て、滞りなく新大臣が就任する。だが、支える官僚はたまったものではない。復興を巡る現状を新たな大臣に最初から説明し、国会答弁ができるだけの勉強をしてもらう。各地で開かれる行事に出席する為の時間調整、挨拶文の修正等、莫大な事務作業をするのは大臣ではない。本来は復興に汗をかく筈の霞が関官僚たちだ。震災から6年。復興の進み具合にはばらつきが目立ち、今の復興大臣は政策に一段と細かく目配りをしなければならない。震災の記憶を風化させないように気配りを忘れず、利害の異なる人に其々きちんと対応する丁寧な仕事が求められる。しかし、今村氏は先月4日の記者会見でも物議を醸していた。『東京電力』福島第1原子力発電所の事故で自主避難した人への住宅の無償提供が3月末で打ち切られたことについて、「自主避難者の帰宅判断は自己責任か?」との質問に、今村氏は「基本はそうだと思う」と発言。食い下がる記者に対して、拳で机を叩いて「出て行きなさい、もう来ないで下さい」等と激高したことが、「冷静な対応ではない」として批判された。“自己責任”の発言にはある種、議論の余地があった。自主避難者への住宅の無償提供を終えることは、約2年前に決めて通知済みだ。

また、「科学的には放射能の影響が無い」とされる地域から自主的に避難している人もいる。そうした人たちにずっと公的な援助を続けるべきかどうかは、賛否両論がある。しかし、記者会見の映像は被災者も見ていることを考えれば、できる限り落ち着いて、丁寧に説明を繰り返す必要があった。歴代の復興大臣でも問題はあった。震災直後の2011年6月に復興対策担当大臣に就いた松本龍氏は、岩手・宮城両県の知事との会談で「(私は)九州の人間だから、東北の何市がどこの県かわからない」「知恵を出したところは助けるけど、出さないヤツは助けない」等と問題発言を連発し、就任から僅か9日目に辞任に追い込まれた。今村氏の前任だった高木毅氏も、過去の逮捕歴が取り沙汰される等、復興とは直接の関係がない話題に国会論戦の時間が割かれることが多かった。復興対策担当大臣も合わせると、復興大臣に就いたのは今村氏までで計6人。内3人が何らかの問題を抱えていたことになる。共通するのは就任当時、当選6~7回目の“入閣待機組”だったという点だ。復興大臣に就任する前には目立った実績は無く、「復興相は単なる“名誉ポスト”に成り下がっているのでは?」(経済官庁幹部)との見方もあった。国は、「復興は大事な使命」と強調する。一方で、大臣の姿勢が何度も問題になることに対し、被災者の間では「大臣の言動ではない」「風化が進んでいるのでは?」といった怒りや懸念、国への不信感が強まっている。復興庁は、発足から10年間、2021年3月までの時限省庁だ。既に折り返し地点を過ぎている。しかし、福島第1原発の廃炉等が4年後に終わる訳ではない。復興庁の期限を延長する案や、内閣府等に機能を移す案が浮上しているのは、復興の取り組みがまだまだ長く続く為だ。安定した支持率を背景に、長期政権を睨む安倍政権。長期政権だからこそ、長期の視点で震災からの復興に取り組める筈だ。しかし、足元では責任者が失態を繰り返し、ころころ代わる。復興庁を始めとする行政機関は、責任者が変更する度に無駄な仕事を抱え込む。“長期政権の短命大臣”が被災者を傷付け、復興の妨げになっているのは言うまでもない。 (古賀雄大)


⦿日本経済新聞電子版 2017年5月2日付掲載⦿
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