【中外時評】 地方自治法70年再考の時

70年前の5月3日、憲法と同時に施行された法律がある。地方自治法だ。地方自治を保障すると同時に、国家統治の一環として自治体や地方議会の運営に関する基本的なルールを定めた法律である。総務省は、今国会に地方自治法改正案を提出している。自治体職員の不正行為や不祥事を未然に防ぐ内部統制制度の導入が柱だ。都道府県と政令指定都市に対して、内部統制の体制作りを求め、議会に毎年報告することを義務付ける。監査制度も拡充する。例えば、同一の職員が長年、会計処理・入札・契約事務を担当していると、不正行為があっても発覚が遅くなりかねない。個人情報の管理体制が曖昧だと、情報漏洩のリスクも高まるだろう。「内部統制は自治体が行財政を適切に運営する為に欠かせない」と、総務省自治行政局の安田充局長は話す。戦後、地方自治法は繰り返し改正されてきた。住民による直接請求制度を整えたり、中核市や広域連合制度を導入したり、地方制度は手直しの連続だったと言える。最も重要な改革は、1999年の改正だ。国が自治体を下請けと位置付けていた機関委任事務を廃止し、国が地方行政に関与する際のルールを整えた。実態は兎も角、これで法的には国と地方の関係は、“上下・主従”から“対等・協力”に変わった。総務省が改正案を纏めながらも、頓挫した事例もある。例えば、首長による“専決処分”の見直しだ。議会を開く時間が無い場合に、首長の判断で条例の制定や工事の発注等ができる仕組みのことだ。議会に事後報告する必要があるが、議会が承認しなくてもその効力は変わらない。専決処分は、明治時代から続く首長に与えられた特権と言える。場合によっては独断専行を招きかねない。実際、鹿児島県阿久根市で2010年頃、市議会と対立していた当時の市長が、議会を開かずに専決処分を乱発し、予算や人事等を決めた出来事があった。

総務省は、議会が承認しなかった場合には首長に条例や予算を再提出するように求める改正案を纏めたが、『全国知事会』等が反対し、見送られた。住民投票の法制化も、実現しなかった一例だ。現行制度でも条例を作れば政策の是非を問う投票は可能だが、その結果に首長や議会は必ずしも従わなくてもいい。そこで、市民ホールのような大規模施設の建設等に限って法的な拘束力がある投票制度を作る案が浮上したが、「議会制民主主義が形骸化する」等と地方団体が認めなかった。その地方議会は今、候補者不足が深刻だ。2015年の統一地方選で実施された41の道府県議選をみると、全選挙区の3分の1で無投票になった。立候補者が定数を超えなかった為で、無投票で当選した議員数は総定数の5分の1に上った。有権者の多くが投票する権利さえ奪われた形だ。地方とは対照的に、都市部では候補者が多過ぎて有権者が選べない。例えば、2015年の東京都世田谷区の区議選では、定数50人に対して82人が立候補した。そこから各候補の主張を調べ、1人だけに票を入れるのは至難の業だ。地方の選挙制度は戦後、殆ど変わっていない。様々な点で制度疲労を起こしている。全国知事会の研究会は昨年11月、憲法改正に向けた報告書を纏めた。その中で、①現行憲法にある“地方自治の本旨”の明確化②自治体の立法権・財政権・課税自主権等の明記③国と地方の協議の場の明記④参議院を“地方の府”とする――こと等を提言している。自治を更に強化する為には、憲法から見直す必要があるのだろう。東京大学の西尾勝名誉教授は、「憲法に財政権や課税権等を加えると同時に、(長と議員を住民が直接選挙すると定めた)93条を改正し、二元代表制に限らない弾力的な制度を許容してはどうか」と話す。「地方の統治体制に根本から選択肢を増やそう」という提案だ。自治法施行から70年経ち、自治体、特に首長の権限は確かに強まった。しかし、それに伴って住民自治が豊かになったとは言い難い。これも残された重い課題である。 (論説委員 谷隆徳)


⦿日本経済新聞 2017年5月4日付掲載⦿
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