【電池バブルがキタ━(゚∀゚)━!!】(12) リチウムの次は何か…材料研究では日本がリード

20170508 06
便利なリチウムイオン電池だが、性能の限界も見えてきた。“次”を巡る研究が本格化している。次世代電池の最有力候補と目されるのは、“全固体電池”だ。全個体電池は、電解質・正極・負極等全てを個体で構成する電池。リチウムイオン電池は電解液の中をリチウムイオンが往来することで充放電するのに対して、全固体電池は固体の電解質の中をリチウムイオンが移動する。固体の為、液漏れが無くなり、また難燃性の素材を電解質に使用するので発火の危険性が低くなり、安全性が高まる。更に、1つのセルに電極を積層できる為、高電圧化・大容量化し易く、理論的には電気自動車(EV)の走行距離をリチウムイオン電池の2.5~3倍に伸ばすと考えられている。充電時のイオンの移動が限られているので、電極や電解質の劣化が抑制されるメリットもある。全固体電池は、ほんの数年前までは“夢の次世代電池”と考えられていた。だが、近年は実用化に向けた研究開発が急速に進み、実用化の目途が従来よりも10年前倒しされ、2020年代には製品が出回る見通しだ。実用化前倒しのきっかけとなった研究の1つが、2015年に東北大学が電極にコバルト酸リチウム、電解質に窒素添加リン酸リチウムを用いて、リチウムイオンが移動する時の抵抗を液体電解質よりも低く抑えることに成功したというものだ。「全固体電池は電極と電解質の境目の抵抗が大きく、リチウムイオンの移動が制限されて十分な出力を出せない」と言われていたが、その課題を克服する技術として注目された。

2016年には、実用化に向けたコスト抑制や量産化の課題解決に関する研究が、民間企業から出てきた。『トヨタ自動車』は東京工業大学と共にセラミックス電解質を開発し、従来の2.5倍の出力特性を実現。『日立造船』は、硫黄物系固体電解質を使用した全固体電池の開発に取り組む。電解質と電極原料の粉末をプレスによって加圧成形する技術を開発して、製品化に向けて一歩前進した。『三菱ガス化学』も東北大学と共に、量産化技術を開発している。この他、『村田製作所』も全固体電池の研究を進めており、同じく全固体電池の研究開発を進めてきた『ソニー』の電池部門を傘下に収めることで、実用化に弾みがつくと期待されている。既に全固体電池は、センサー用等超小型の分野では実用化されている。また、フランスのベンチャー企業『BatScap』は、全固体電池を搭載したEVを開発し、カーシェアリング車両向けに実験的ながら供給を始めていると言われる。だが、スマートフォン等の民生品や、将来的に車載向けの分野で本格的に実用化していく為には課題も残る。その1つは、材料の構造に合わせた最適な製造方法と安定的な量産体制の構築だ。電解質を固体にすることで、液体の場合と違って高度な材料成形の技術が必要となる。電解質には、リチウムイオンが行き来する微細で複雑なナノ構造を構築しなければならないからだ。謂わば、製造時の歩留まりが低くなるという課題がある。また、高い安全性が要求される車載向けでの実用化は、更に時間がかかることになりそうだ。リチウムイオン電池や全固体電池よりも蓄電密度を高められると考えられている“金属空気電池”の研究も進んでいる。金属空気電池は、正極は空気中の酸素を利用し、負極に金属を使い、酸素と金属の化学反応で電気を生み出す電池。エネルギー密度(容量の大きさ)はリチウムイオン電池の50倍に達すると考えられており、勿論、全固体電池をも遥かに凌ぐ。現在、『新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)』・京都大学・トヨタ自動車・『日産自動車』・『パナソニック』等が研究を進めている。金属空気電池はまだまだ研究の途上にあり、データの蓄積も少ない。実用化は2030年以降になると見られている。スマホ等の民生用も車載用も、量産化が進めば進むほど、電池の価格低下の圧力は強まる。近年は中国メーカーの台頭で、電池の価格は急速に下落している。メーカーは、次世代電池の開発に取り組まなければ、電池の価格下落の圧力に対抗することができない。また、リチウムイオン電池の価格が下がり過ぎると、太陽電池同様、廉価に大量生産できる企業による寡占化の問題もある。次世代電池の開発に当たっては、技術面のみならず、コスト競争力の向上が必須な状況にある。希少金属であるリチウムの消費も著しく、早晩、材料費が高騰することが予想されている。こちらも、ナトリウム等の新たな材料の電池開発、電池リサイクルの社会インフラの早期確立が求められる。

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次世代電池の開発は、コストと電池の性能を両立し、インフラにも気を配るという難しい舵取りを迫られている。リチウムイオン電池の改良も進んでいる。特に、2000年代に入り大きく前進した。研究開発が進んだ背景の1つは、ナノテクノロジーを使った設計技術の進展だ。電池のエネルギー密度には理論的な限界があるものの、製品としての性能は、電解質や電極等の材料・設計・加工によって大きく異なる。化合物をどう作っていくのか、村料についてナノレベルの構造を解析する必要がある。従来は研究者の経験と勘に基づいて材料の組み合わせを検討していたが、2000年後半にはDNA解析等の進展を契機に、コンピューターの超高速化と、それを使ったシミュレーションによる分析ツールの登場によって解析技術が普及し、電池研究の裾野が広がった。電池材料の核となる電極は、リチウムイオンを吸蔵・放出する役割を果たしており、この正極・負極材料の組成・構造がイオンの溜め易さ、電池の劣化し易さ等、電池の性能を大きく左右する。電極は謂わば、イオンの“家”で、家の体積をより小さくしつつ、イオンを溜める“部屋”を大きくすることが、電池の性能向上に繋がる。電極の構造の研究が、シミュレーターの登場で2008年頃から進展し、2010年頃には成果として表れるようになった。こうした設計技術は、人工知能(AI)を使うことで更に進むと期待されている。適した材料やその量、組み合わせをAIが計算する。但し、解析技術がどれだけ進んでも、計算の基礎となるデータを入力するのは人間であり、未だ研究者の経験と勘が大きな役割を占める。先端の解析技術と、地道なデータの蓄積による経験と勘を組み合わせて研究開発ができることが、材料分野における日本の強みであり、その点で、電池材料の技術で一日の長がある日本は、世界をリードできる位置を維持していくことが期待される。 (『日本総合研究所』創発戦略センター部長 木通秀樹)


キャプチャ  2017年2月14日号掲載




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