【儲かる農業2017】(07) ルールは自分で決める! 個性溢れる新世代農家たち

新世代の農家の中では、従来型の生産・販売とは違うやり方で、“儲かる農業”を実現するところが出てきている。既成概念を打ち破る2人の農家を訪ねた。

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三重県にある『小林農産』のオフィスの壁には、1畳ほどの液晶モニターがあり、農場内の施設をリアルタイムで映している。本誌記者が「農業生産法人にモニターがあるのは珍しい」と感想を漏らすと、社長の小林秀行氏(35)が即座に「だって、機械を盗まれたら大変でしょ」と当然だと言わんばかりに答えた。ご尤もな話で、273haでコメ等を作る小林農産には、高額の農機等が多数あり、盗難に遭えば被害は甚大だ。農場内を案内してもらうと、兎に角、最新鋭の農機・施設のラインアップに圧倒された。自動運転機能を持つ田植え機だけで4台もあるのだ。小林社長は、「最近5年で5億円ぐらいは投資した」と事もなげに言う。コメを精米・貯蔵する施設と餅加工施設に其々、1億5000万円を投じたのだという。10年前に、父から500年以上続く家業である農業を引き継いだ。この間、農地面積が10倍ほどに増え、農場はがらりと変わった。自動化できるものは機械に任せなければ、到底、仕事が追い付かない。最近買ったものを聞くと、デンマーク製のラジコン草刈り機の動画をスマートフォンで見せてくれた。小型の戦車のようなものが荒野を走り、雑草を刈り取っていく。ラジコン草刈り機の代金はざっと450万円。小林社長は、「今週中には届く」と待ち遠しそうに話す。使い勝手が良ければ10~20台纏めて購入し、農家仲間に薦めようと考えているという。

何を隠そう小林社長は、10年後に1000ha規模の農場経営を目指す担い手農家であると同時に、農機メーカーも注目する新進気鋭のエンジニアでもある。小林氏は土木を学び、市役所に就職した。公務員時代はICTによる業務効率化等を担当していただけに、プログラミングにめっぽう強い。そして、農家になった今は、大規模農家が何に困っているかがよくわかる。3000枚の水田をほぼ4人で管理する為には、農作業の自動化が不可欠なのだ。小林社長は既に、農作業の3分の2の自動化を実現。現在は、農業の初心者でも数時間でプロ並みの作業ができる自動運転技術等の開発・導入を目指している。小林社長が開発した代表作が、自動あぜ塗り機(※水田に水を入れる前に畔に泥を塗る機械)である。農機メーカーが3年かかっても作れなかったその機械を、小林社長は1ヵ月で完成させてしまった。農機メーカーの連中が恐れをなすのも無理はない。「今はメーカーとの共同開発で利益を出そうとは考えていない」と言いながらも、「担い手農家の負担を軽くするソフトを開発中だ」(小林社長)と野心を覗かせる。将来的には、農家支援ツールの開発も事業の1つに育てる考えだ。先月23日、小雪が舞う兵庫県姫路市の温泉宿に、県内有数の大規模農家たちが集まり、会合を開いていた。その会合に参加した若手農家の中に、本誌が選んだ“モデル農家ベスト20”の1人である『丹波たぶち農場』の田渕真也氏(41)の姿があった。田渕氏は115haの農地でコメや大豆等を作る農家だが、当日は『兵庫大地の会』副社長の肩書で会合に参加していた。兵庫大地の会は、県内の大規模農家24人で作る農産物販売会社である。メンバーの農地面積は合計700ha。契約農家も合わせると1000haに上り、兵庫県は素より、全国でも有数の規模の農家グループである。メンバーの平均年齢は38歳と若い。兵庫大地の会に加入するには、一定の条件をクリアする必要がある。高い農業技術を持ち、出荷すると約束したコメは他から買ってでも納入する責任感が求められる。メンバー同士の関係も「友人でありライバル」(田渕氏)という適度な緊張感が保たれているという。現在は主に、加工用米を纏めて菓子メーカーや酒蔵に販売している。兵庫大地の会が販売するまでは、『JA全農兵庫』が加工用米の流通を牛耳り、購入する側のメーカーは品種や品質を指定できなかった。そこに、兵庫大地の会は目を付けた。メーカーが求める品種を提案し、品質も保証して直接販売した。農家の手取りは、全農兵庫を通じて売るより2~4割多くなった。

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勉強会と題した先月の会合では、大規模農家らに農業資材を纏めて売りたいメーカーが、入れ代わり立ち代わりプレゼンテーションを行った。そして夕方、トリを飾るプレゼンターを聞いて驚いた。何と、加工用米の販売では兵庫大地の会の商売敵である全農兵庫だったのだ。全農兵庫の担当者に目的を聞くと、「統一で使ってもらう肥料の提案に来た」のだという。JAグループでは通常、農家と取引するのは地域農協と決まっている。県域の連合会である全農兵庫が、地域農協をすっ飛ばして農家と直接交渉するのは異例中の異例だ。全農兵庫が兵庫大地の会との直接取引に踏み切ったのは、同会が県内の農家の中で無視できないほど大きな存在になっているからだ。全農兵庫としても、取引しなければジリ貧になりかねない。兵庫大地の会のメンバーは県内全域に散らばり、地域農協の範囲を超えて営農している。その為、「地域農協では商談し難い」という事情もある。兵庫大地の会としても、県内最大の農業関連事業者である全農兵庫との取引はメリットが大きい。割安な農業資材を買えるだけでなく、コメの需要情報等も交換できるからだ。兵庫大地の会は、全農から肥料や除草剤を買い始めて3年目になる。それまで、JAグループと取引が無いばかりか、疎遠なメンバーも多かったが、全農兵庫からの資材購入をきっかけに、地域農協も含め、商談が活発化しているという。嘗ては、大規模な農業生産法人とJAグループは敵対するケースが多かった。だが、最近は双方が柔軟になり、メリットがあれば利用し合うようになっている。若手の農家にとって、JAは選択肢の1つであり、敵でもなければ身内でもない。有力農家とJAの間で、新たな“共闘関係”が生まれつつある。


キャプチャ  2017年2月18日号掲載




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