【経済の現場2017・欧州農業】(01) EU、世界に販路開拓

『ヨーロッパ連合(EU)』はこれまで、単一市場による自由貿易を生かし、農業の国際競争力を高めてきた。だが、フランス大統領選等で内向き志向の高まりが露わになり、岐路に立っている。アメリカが離脱を通知した『環太平洋経済連携協定(TPP)』の次の一手を考える日本にとって、“攻めの農業”の先駆者であるヨーロッパに学ぶ点は多い。ヨーロッパ農業の現場を歩いた。

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オランダの首都・アムステルダムから南西に車で約1時間のウェストラント市。ウィボ・バルスターさん(41)は、3.5haもの巨大なガラス温室で、年間約1500トンのパプリカを生産し、その殆どをイギリスに輸出している。「この1年間に収穫するパプリカの売り先は全部決まっているよ」。販売先は、イギリスの大手スーパーマーケット『テスコ』等、小売りやチェーン展開する飲食店。今年からは中国への輸出も始めた。温室には最先端の省エネ技術を導入し、機械で自動化された自前の選果場が隣接する。取引先との価格交渉も自ら熟す。農家というより企業の経営者だ。「(農業は畑仕事での)筋力が大事な時代ではないんだ」と顔を綻ばせる。ヨーロッパの農業を牽引するのは輸出だ。『国連食糧農業機関(FAO)』の統計では、EUに加盟する28ヵ国の農産品の輸出額は計5537億ドル(約60兆円)に上る。域内貿易が中心だが、EU外への輸出も盛んで、2013~2015年のEU外への平均年間輸出額は約1610億ドル(約18兆円)。農業大国のアメリカ・ブラジル・中国を上回り、世界最大だ。中でも、ワイン・パスタ・乳製品・チョコレート等の加工食品は世界の食市場を席巻する。国内向けの生産が殆どの日本とは比較にならない。

ヨーロッパの農家が国外に目を向けるきっかけとなったのが、1993年のEU発足だ。単一市場の誕生で農産物にかかる関税が無くなり、域内の貿易が活発になった。農家は生き残りをかけ、自国の外で売れるものを追い求めるようになった。輸出型農業の成長には、新規市場の開拓が欠かせない。2013年に始まった日本との経済連携協定(EPA)交渉では、チーズ・ワイン・豚肉等農産物の市場開放を強く追っている。ただ、輸出頼りの農業には政治リスクも付き纏う。最近の例はロシア問題だ。ロシアは、クリミア半島情勢を巡るEUの経済制裁に対抗し、EUからの農産品輸入を禁止した。この煽りで、行き場を失った農産品が市場に溢れ、価格が暴落した。主力輸出品の林檎がロシアに輸出できなくなったポーランドの政府関係者は、「ロシアという大市場に代わる市場を見つけるのは難しい」と話す。イギリスのEU離脱も影を落とす。イギリスはEU内でドイツに次ぐ経済力を誇り、EU諸国にとって重要な輸出先だからだ。冒頭のバルスターさんも、イギリス向け輸出が多いだけに、「状況がどうなるのか見守るしかない」と、離脱交渉の先行きに神経を尖らせている。ヨーロッパの農林水産業の国内総生産(GDP)は2632億ドル(約29兆円)で、GDP全体に占める割合は1.4%に留まる。日本(1.2%)と同じく、産業としての規模は小さい。農家1戸当たりの平均経営面積は16.1ha。日本(2.5ha)よりは広いが、アメリカ(176ha)等の農業大国と比べれば、家族経営による小・中規模農家が多い。輸出額では、ワイン(250億ドル)・チーズ(221億ドル)・チョコレート(170億ドル)等が上位を占める。日本向けは、豚肉や煙草の輸出も多い。


⦿読売新聞 2017年4月25日付掲載⦿
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