【経済の現場2017・欧州農業】(04) “経営努力”で勝ち抜く

20170509 05
清潔なガラス温室に、腰の高さほどの専用台が整然と並ぶ。台上の専用ポットからは、高さ数㎝ほどの新芽がぎっしりと生え揃う(※右画像)。オランダの農業べンチャー『コッパートクレス』が栽培するのは、料理のつけあわせとして使われる“マイクロベジタブル”と呼ばれる、発芽して数週間の野菜。栄養価が高く、独特の味わいで人気が高い。業績は好調だ。2002年の会社設立初年の売上高は50万ユーロ(約6000万円)だったが、2016年には3000万ユーロ(約36億円)と60倍に増えた。今では、日本を含む世界7万店のレストランに出荷している。ロブ・バーン社長は、「成功の秘訣はマーケティングだ」と話す。出荷用のマイクロベジタブルは65種類だが、それとは別に500種類の野菜を栽培する。定期的に有名レストランのシェフに試食してもらい、反応を見て、どの野菜を商品化するかを決めている。販売戦略が先にあり、「美味しいものを作ったから売れる筈だ」という生産者目線の発想は無い。生産者の経営意識の高さは、周辺産業の健全な競争に繋がっている。

オランダは、日本のように“一地域・一農協”ではないので、生産者は農産品をより良い条件で売ってくれる生産者組合を選ぶ。販売条件に納得できなければ別の組合に移ってしまう。選ばれる生産者組合になる為には、組合側も経営努力を続ける。生産者組合や農産品の輸出入業者が1996年に設立した農産物販売会社『グリナリー』は、巨大スーパーマーケットとの価格交渉を優位に進める為に作ったものだ。生産者が収益向上を狙って、農業コンサルタントを雇うのも一般的だ。コンサルタントも結果を出さないと解雇されてしまうので、農家に有益な助言ができるように知恵を絞る。オランダ経済省農業局政策アドバイザーのフレデリック・ボッスナー氏は、「生産者は補助金に頼らず、自力で高収入を得ている」と話す。『ヨーロッパ連合(EU)』の統計局によると、オランダの総農家数は、1993年の約12万戸から2013年には約6万7000戸と大きく減った。ヨーロッパの単一市場誕生の衝撃は大きかった。それでも産業としての活力を失わないのは、こうした業界内の切磋琢磨や、担い手の減少を1戸当たりの経営面積の拡大に上手く繋げたことがある。農林水産省の斎藤健副大臣は、「市場統合という“黒船”を機に、賢く行われてきた構造改革がオランダ農業の強みだ」と指摘する。農業が日本経済の弱点になって久しい。EUやアメリカは日本に対し、農産品市場の更なる開放を求めている。新たな“平成の開国”に備えた農業の構造改革は待った無しだ。 =おわり

               ◇

経済部 蔵本早織・国際部 橫堀裕也・パリ支局 作田総輝が担当しました。


⦿読売新聞 2017年4月29日付掲載⦿
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