“皆さまのNHK”を腐らせる『放送技術研究所』の闇――研究開発より忖度が優先、有名研究者を“通路案内係”に

20170511 01
籾井勝人氏が会長の座を降り、平時に戻ると思われたNHKで、その後もわいせつ事件等、不祥事が間欠泉の如く噴き出している。だが、一連の事件は、この殿様商売に蔓延する腐敗の断面に過ぎない。ぬるま湯に浸かり、“皆さまのNHK”を蝕む輩の巣窟が存在する事実は知られていない。それは、競争相手の不在と裏方の盲点につけ込み、私利私欲が跋扈する技術畑だ。本来ならば日本の放送技術を牽引すべき頭脳集団だが、一部の人間による独善的な人事や差配に辟易した技術者たちは、愛想を尽かして次々とNHKを去り、今や「人材の流出どころか枯渇の状態」(NHKのOB)。国民から集めた受信料も巡り巡って、公共放送を壟断する邪悪な面々の杜撰な経費に浪費されているのだ。この技術畑の中核は『NHK放送技術研究所』(以下“技研”)だ。職員は約250人で、年間予算は人件費・研究開発費を合わせて120億円。カラーテレビの実用化・ハイビジョン・地上デジタル放送等を牽引してきたテレビ技術の中核であり、公共性と汎用性で一企業の技術部門とは一線を画す。技術畑のトップである技師長も、技研所長の経験者が大半。技師長は通常、技術系の専務理事か理事が兼任する。現在の森永公紀技師長兼専務理事は、報道局の経済部出身。子会社である『NHKアイテック』の社員が架空工事を発注し、約2億円を着服する不正が発覚し、技術畑の出身者が外された結果だ。何故、NHKの技術者集団は堕落したのか? 腐敗の系譜を探ると、退職や転職に追い込まれた人々の証言から、歪んだ支配への転機が浮かび上がった。それは、技研所長から技師長を経てアイテック社長へ天下りした久保田啓一氏の影響力。アイテック事件当時の社長で昨年4月に退任に追い込まれ、現在はNHKのOBの1人だが、そのDNAは今もNHK技術の上層部に継承されているのだ。

「どうなるかわかっているだろうな? 俺は名簿にマルを付けて、誰が挨拶に来たのか記録しているんだぞ!」――。2008年6月、東京都世田谷区砧にある技研のエレベーターで乗り合わせた研究者を恫喝したのは、当時、技研所長に就任したばかりの久保田氏だった。この研究者は「いえ、伺いましたが不在で…」と返したものの、それが気に障ったのだろう。「このままでは研究ができなくなる」と悩んだ末、50歳過ぎで退職し、大学教授に転じた。これだけなら、どこの会社にもありそうな些事と片付けられるかもしれない。だが、独善的な人事はその後も枚挙に暇がない。以下、何れも一流大学の大学院で修士課程以上を修了した人たちの実話の一部である。アナウンサーに代わり、株式市況等を自動的に読み上げる“音声合成”の研究で最先端を走っていた40代のエースは、「成果を上げても全く評価されない。上層部の好き嫌いだけで人事が決められている」と嘆きながらNHKを後にして、この彼も今は大学で教鞭を執る。音声からテレビ字幕を作成する“音声認識”の技術で将来を嘱望された30代の技術者は、大手ポータルサイトへ転職していった。退職の背景を知る関係者は、「研究より、上司の顔色を見ながら仕事しなければならない環境に嫌気が差した」と心中を代弁する。国立大学で博士号を取得した40代の技術者は、特殊半導体技術の研究者として国際的にも注目されていたが、「研究実績が殆ど無い久保田氏にとって目障りだった」(前出のOB)とされ、突如として更迭の憂き目に遭う。今では、飛ばされたNHKの子会社の地方支社で、放送に異常がないか、日がな一日、テレビのモニター画面を眺めて過ごす。「何故、こんな冷や飯を食わされなければいけないのか」。無念の声を聞いた元上司は、絶望のどん底に突き落とされた部下の境遇に、自責の念にかられているという。放電による発光を利用するプラズマディスプレイの高精細化の理論研究で有名な50代の研究者も、長年の研究成果を根こそぎ奪われ、退職後も失意の日々を送る。彼は「8Kスーパーハイビジョンのプラズマテレビを実現しよう」と、高精細化に挑戦。その可能性を世界で初めて実証し、メーカーと共に開発に成功したが、2014年の学会誌の論文に彼の名前は無かった。その彼は、上司から「君がNHKの関連団体へ出向するなら、成果は貴男のものにしてあげるが、拒めば他の人の成果にする」と通告され、腰を抜かさんばかりに驚く。この後、彼は研究とかけ離れたところへ派遣された。その間、彼の成果は本当に他人のものになり、世界的なディスプレイ学会の表彰にも自分の名前は見当たらなかった。しかも、2012年の世界初145インチのスーパーハイビジョンテレビのお披露目セレモニーでは、何と会場の通路案内係として立たされたのである。彼らだって手を拱いていただけではなく、NHKのコンプライアンス(法令順守)室に駆け込んだ者もいる。だが、その1人は、「私たちより職制の上のほうが決めたことをとやかく言えない」と一顧だにされなかったと明かす。

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どうして、久保田氏とその系譜に権限が集中する異常な構図が定着してしまったのか? 報道局出身のOBは、「技術の特殊性から競争相手が無く、監視の目も届かないことが最大の問題。閉鎖社会で風通しも良くない。ゴマすりだけで出世した人物が権力を手にすると、研究より自分の保身が最優先される。それが独善と忖度政治の元凶です」と背景を解説する。その源流は、久保田氏の上司だった元専務理事・技師長の永井研二氏だというOBも少なくない。1990年代前半から、放送機器メーカーへの再就職は、「貴重な受信料から高価な放送機材を購入させられるのは理に合わない」と慣習で禁じられてきた。ところが永井氏は、この禁を自ら破って、『NEC』へ好待遇で“天下り”した。技研では、「“自らの手でものを作り上げる”という研究の基礎的な能力が低下した」と退職者は語る。弛まぬ努力や新たな発想を基に、「世界初・世界一の技術を実現しよう」とする地道な姿勢より、受信料で確保した予算でメーカーへの発注を繰り返し、そこで開発された機器を恰も自らの成果とする詐取が蔓延したのだ。昨年5月の技研で展示された有機ELのシート型の大型ディスプレイが典型。その映像は極めて鮮明で話題になったが、専門家からは「どこに技研のオリジナル技術が使われているのか?」と訝る声が噴出した。メーカーへの研究外注化が進んだ結果、技研は求心力も失い、メーカーからは「最早、技研から学ぶものは無い」と陰口を叩かれている。奇しくも、NHKは今月中旬、理事らの人事が予定され、“門外漢”の森永技師長兼専務理事の後継が隠れた焦点に浮上している。“忖度政治”の系譜を断ち切る人事が断行されない限り、“皆さまのNHK”の偽りは決して変わるまい。


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