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【体技心・田中将大4年目の挑戦】(01) いつだって“挑戦者”

選手が心・技・体をバランス良く磨くことの大切さを表す“心技体”。大リーグ『ニューヨークヤンキース』のエース・田中将大(28)は、「先ずは体と技術を整えて、最後は気持ちをしっかりと試合に持っていく」との意味を込め、“体技心”という言葉を好んで使う。3年連続で開幕投手を務め、名門のエースの地位を確立した右腕の奮闘を追う。 (本紙ニューヨーク支局 宮崎薫)

20170511 10
ファウルラインを左足で飛び越え、マウンドに上がると、プレートの横の土を「今日も宜しく」と右手で触る。今月14日の『セントルイスカージナルス』戦、今季3度目の先発で初めて本拠地の『ヤンキースタジアム』に登場し、いつも通りに初回を迎えた。初披露となった大ファンのアイドルグループ『ももいろクローバーZ』が自分の為に歌う今季の登場曲には、“逆風”や“マイナスやゼロから始められる”といった歌詞が並ぶ。「ここまでスタートが悪かったことはない」と振り返った苦境と、図らずも重なった。今季はキャンプ初日から、開幕投手としての調整を任された。信頼を意気に感じて臨んだ同2日の開幕戦は、3回途中7失点KO。『タンパベイレイズ』の打線に、得意球のスプリットを狙い打たれた。残像は2戦目、同8日の『ボルチモアオリオールズ』戦でも消えず、勝負球として投げ切れない。ピンチでは最速156㎞の直球で押し、5回3失点で凌いだが、「どうしようもないから力任せに投げただけ」と納得はできなかった。

答えが見つかったのは同14日の3戦目。「勇気を持って自分の形で投げないと」。過去2戦で出せなかったストライクゾーンに積極的にスプリットを投げる本来の投球が、7回途中3失点での初勝利に繋がった。打たれた事実からは逃げず、技術的な解決策をとことん探る。その一方で、心の持ちようについては「僕、いい加減なところはいい加減ですよ」と笑う。渡米直前の3年は防御率1点台で、2013年は24勝無敗。大リーグで同じ基準を求めたら「しんどい」。「“6回3失点でも良し”とされるくらい厳しいリーグにいる訳じゃないですか。悪かった時には、自分の中でハードルを落としてあげる。良かった部分を見つけて、『まぁ、良しとしよう』と切り替える」。例えば、開幕戦後の記者会見。アメリカのメディアから、「右肘は大丈夫か?」と古傷についての質問が飛んだ。「大丈夫です」と答えた声は少し怒気を孕んだが、直ぐに前向きに消化した。「『打たれたのは体のどこかがおかしかったからだ』と。つまり、能力自体は信じてもらえているってことでしょ?」。登場曲のタイトル『何時だって挑戦者』は、自らアイデアを出した。駒大苫小牧高時代のこと。「よく(香田誉士史)監督に言われたんです。明らかに力に差がある相手でも、『挑戦者の気持ちをしっかり持て。そういう野球をしないと、いつか足を掬われるぞ』と。その言葉はずっと忘れないで投げているつもりです」。どんな相手にも真摯に立ち向かう。若き日から変わらぬ姿勢に、厳しい世界で生き抜く為の“良い加減”が、隠し味として加わった。メジャー4年目、“挑戦者”田中の姿だ。取材を始めて3年目になるが、田中将大という選手は自分の言葉に誠実だと思う。投げかけた質問に的確に答えようと「うーん…」と考え込み、「何て言うんだろう」と頭を捻りながら、適切な表現を探す。時には質問者にも厳しい。「そういう意味じゃなくて」と否定し、考えが違えば曖昧に同意はしない。「こちらも記者として、“体技心”を整えて臨まないと」と心している。


⦿読売新聞 2017年4月28日付掲載⦿
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