【誰の味方でもありません】(01) みんな乙武さんがうらやましかったのか

“社会学者”という肩書きでメディアに出ることが多い。“社会学”を専攻しているという程度の意味なのだが、この肩書きは誤解を呼び易い。「社会に精通している」「社会的弱者に優しい」というイメージを持つ人がいるようなのだ。確かに、“社会福祉法人”等、“社会”という言葉には優しいイメージがある。だけど、“学者”とは本来、社会をフラットに見る人のことだと思う。そんな意味を込めて、『誰の味方でもありません』という連載を始めることになった。扨て、誰の味方でもないせいか、僕はよく炎上する。小沢一郎に再婚相手を聞いたり、女子中学生が起こした事件を「尾崎豊みたいで格好いい」と言ったり、定期的に炎上してきた。だが、僕の周囲には更なる炎上の達人が勢揃いしている。例えば、オリンピックのエンブレムが“盗作”だと大バッシングに遭ったデザイナーの佐野研二郎。本誌に不倫をスッパ抜かれて政界進出を断念した乙武洋匡。彼らに限らず、このところ誰かが炎上したというニュースを連日のように目にする(※因みに、自分が炎上した時には「早く他の誰かが炎上しろ」と願う)。しかし、世間には毒舌でありながらあまり炎上しない人もいる。例えば、有吉弘行やマツコ・デラックスだ。何故、彼らは炎上しないのだろうか? 勿論、話芸のおかげもあるだろうが、最大の理由は“羨ましくない”からだと思う。

僕の観察によると、“羨ましくない”人は炎上し難い。有吉さんはお笑いコンビ『猿岩石』として一世を風靡した後、不遇の時代が長かった。一時期は自殺を考えたことまであるという。マツコ・デラックスさんは遅咲きでブレイクしたことに加えて、あの体型が功を奏しているのだろう。そういえば、『新潮社』にも“親方”と呼ばれる中瀬ゆかりという編集者がいるが、彼女が炎上したという話もあまり聞かない。これも体型の賜物だろう。その意味で、乙武さんの炎上は画期的だった。あれほど嫉妬の対象になった障害者はこれまでいなかった筈だ。皆、乙武さんが羨ましかったのか…。炎上の裏側には嫉妬がある。いくら人気者とはいえ、明日から有吉弘行や中瀬ゆかりになりたい人は数少ない。デブ・ハゲ・苦労人等、“羨ましくない”人の活躍に世間は寛容だ。同じ理由で、スポーツ選手の好感度の高さも説明できる。彼らは努力を隠さないし、メディアもそれを追いかける。誰もが多少のスポーツ経験はあるから、選手たちの努力も想像し易い。僕も無用な炎上はしたくないが、今から血の滲むような努力をしてオリンピックを目指したくはないし、“親方”というあだ名が似合うほど太りたくもない。そう考えると、世の中はきちんとバランスが取れているのだろう。「普段から“努力”や“デブ”という負荷を自らにかけることに比べれば、偶の炎上なんて何てことない」と自分を励ましている。僕は誰の味方でもないが、自分には甘い。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。


キャプチャ  2017年5月4日・11日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

搜索
RSS链接
链接
QR码
QR