【点検トランプ政権100日】(03) 不法移民、アメリカから脱出

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「不法入国がビジネス化し、寒さが和らぐ春以降はもっと増える。我々の手に負えない」。カナダ中部のマニトバ州でアメリカからの不法入国者が最初に到着する国境の町・エマーソン。町役場で今年3月下旬、町会議員のダウ・ジョンストン(61)が声を荒らげた。冬は雪に閉ざされ、人口僅か700人の静かな町は、19人もの不法入国者を救助した2月4日以降、激変した。不審者通報が相次ぎ、救急隊は連日出動が続く。隊員のビル・スパンジャー(61)は、軽装で雪に埋もれたイスラム教徒を見る度に、「ドナルド・トランプへの怒りが湧く」と憤る。酷い凍傷で指を切断した不法入国者もいた。ジョンストンは「人道上、受け入れは当然」とした上で、「町民が怯え始めたのが心配」と明かす。「未明に数人の男が家の窓ガラスを叩いた」等、寄せられる声には不法入国を歓迎しないトーンが滲む。エマーソンで救助・拘束された不法入国者が運ばれる先の州都・ウィニペグでは、衣食住の無償提供を行う最大の施設が常時満杯状態だ。3月以降、直接施設へやって来る不法入国者も増えた。人手や資金も不足し、州政府の支援を仰ぐが、連邦政府の反応は皆無。担当者のロブ・ケール(46)は、「アメリカ国内で“駆け込み先”として情報が出回っている。草の根レベルでの対応には限界がある」と悲鳴を上げた。3月下旬、ウィニペグ中心部のビル3階の教育支援団体の一室。ソマリア出身のモハメド・サイード(30)は、寄付された衣類の山から1m90㎝近い背丈に合うシャツを袋に入れ、「カナダに感謝」と呟いた。その10日前の夜、氷点下15℃と極寒の真っ暗闇の中を、約5時間かけてアメリカから歩いて国境を越えた。

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ソマリア出身者が多く暮らすミネソタ州ミネアポリスで、密入国の手配師に300ドル(約3万3000円)を払い、バスとタクシーを乗り継いで国境近くへ。タクシー運転手が「あっちがカナダ」と指差した方向に7人で歩き始めた。初対面の7人は全員ソマリア人だった。カナダに入って当局に一時拘束されたが、今は解放され、難民認定の手続き中だ。「イスラム教徒を嫌うトランプの国と違って、ここは安全で安心できる」。ソマリアでは食品会社の営業マンだった。イスラム過激派組織のテロ等で治安悪化が進み、アメリカ移住を決めた。2015年春、妻子を残してコロンビアに渡り、陸路で北上。メキシコからアメリカに不法入国した。“難民認定への近道”と聞いていた話の通りにアメリカ当局へ出頭したが、1年以上拘束され、難民申請も認められなかった。2016年秋、釈放されたのを機にミネアポリスに移り、再申請した。バラク・オバマ政権下では、難民申請が却下されても、犯罪者以外は直ぐに強制送還されることはなかったからだ。だが今年1月、トランプ大統領が不法入国対策を強化する大統領令に署名して以降、「犯罪者以外の送還が増えてきた」。ソマリアも入国制限の対象国で、難民認定の望みは失望に変わり、部屋に閉じこもった。その後、「カナダが助けてくれる」との噂が広まった。ジャスティン・トルドー首相が、「迫害やテロ、戦争から逃れる人たちへ。カナダ人は皆さんを歓迎します」とツイートしていた。カナダの移民・難民対策担当の閣僚にソマリア出身者が任命され、「行くしかない」と思った。マニトバ州への不法入国者数は、今年1~3月で330人超。2015年1年間の人数を既に上回った。ロイター通信等が3月にカナダで行った世論調査では、48%が「不法入国者を強制送還すべきだ」と答え、「受け入れるべきだ」の36%を大幅に上回った。エマーソンを含む地域の州議会議員であるクリフ・グレイドン(70)は言う。「『不法入国者が助かり、自国民が困るのは本末転倒だ』という不満が出始めている。アメリカでトランプ大統領を支える“反移民感情”が、カナダでも広がりかねない」。 《敬称略》 (ロサンゼルス支局 田原徳容)


⦿読売新聞 2017年5月2日付掲載⦿
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