【ニッポン未解決事件ファイル】(17) 『グリコ森永事件』(1984)――日本の警察を嘲笑った謎の“犯罪グループ”の黒幕

1984~1985年にかけて起こった連続企業恐喝事件。“かい人21面相”を名乗る男が、『江崎グリコ』や『森永製菓』等の大企業の製品に毒物を入れる手法で金銭を要求。幾つもの犯人像が推理されたが、時効・迷宮入りに――。 (取材・文/フリージャーナリスト 李策)

20170512 03
1984年3月18日、3人組の男が江崎グリコの江崎勝久社長宅に侵入。入浴中の江崎氏を誘拐した。戦後最大の未解決事件として犯罪史に記録される『グリコ森永事件』が、ここに幕を開けた。企業への脅迫状とは別に、報道機関や週刊誌等に挑戦状を送り付け、毒入り菓子をばらまいて社会一般を騒ぎに巻き込み、“劇場型犯罪”とも騒がれたあの事件である。「人質はあづかった 現金10億円 と 金100㎏ を 用意しろ」。江崎社長の誘拐後、グリコに突き付けられた脅迫状の文面である。しかし、誘拐から3日後、江崎社長は閉じ込められていた淀川沿いの水防倉庫から自力で脱出。身代金奪取のならなかった犯人たちは、「社屋等への放火や、製品に青酸ソーダを混入する」との脅しで、グリコからカネを奪い取ろうとする。その後も、犯人らは悉く現金奪取に失敗するが、その一方で警察も手痛いミスを重ねた。同年11月22日付、“かい人21面相”を名乗る犯人は、マスコミ宛ての“挑戦状”で、現金受け渡し現場で警察の失態について、こう明かしている。「6月2日の 3億円の とき わしら ポリ公と あいさつ しとんねん【中略】警察の車5だいか6だい はしっとったで タクシーにのった あほも おった【中略】会社の車に のって 1人で くるよう ゆったのに ちがう車で 2人も すわって まっとった きいとるだけで あほらしいやろ」。犯人らはその後、『丸大食品』・『日本ハム』・森永等にターゲットを変更。10月7日から13日までの間に、大阪・兵庫・京都・愛知のスーパーマーケット等から青酸入り菓子等13個が発見され、その後も断続的に脅迫と青酸入り菓子の置き去りが続く。だが、事件は予想外の結末を迎える。11月14日、脅迫を受けた『ハウス食品』の現金運搬車を囮に、警察が犯人グループの一斉検挙を目指した作戦を展開中、そのことを知らされていなかった滋賀県警のパトカーが、犯人である疑いの強い不審者を取り逃がした。そして翌年8月7日、滋賀県警の山本昌二本部長は、定年退職したその日に本部長公舎で壮絶な焼身自殺を遂げる。遺書は残されていなかったが、ハウス事件での犯人取り逃がしの責任を取ったと解釈された。その5日後、かい人21面相は茨木警察署下穂積派出所に放置した挑戦状で、終息宣言を行う。「山もと 男らしうに 死によった さかいに わしら こおでん やることに した くいもんの 会社 いびるの もお やめや このあと きょおはく するもん にせもんや【中略】わしら 悪や くいもんの 会社 いびるの やめても まだ なんぼでも やること ある 悪党人生 おもろいで かい人21面相」。

これを機に、犯人グループは活動を停止。混迷を続けていた捜査は、7年後に大きく動く。1992年3月13日、捜査本部は、ハウス食品事件での捕り物の際、犯人らが乗り捨てた盗難車から特殊な金属の微量物を採取。同種の金属片等を扱う産業廃棄物処理業者の中から、事件関与の疑われる人物を洗い出した。また、かい人21面相の高度な組織力の裏には“黒幕”が存在すると見られていたが、件の産廃業者のライン上に山口組系の元大物組長・Kが浮上。捜査本部は、K及び関係者らに対する強制捜査を決断する。その背景には、犯人らの“緻密過ぎる動き”があった。当時、事件を取材した新聞記者は、担当捜査員からこんな話を聞かされている。「犯行計画というか、犯行のタイムテーブルが緻密を極めてるんや。行動を10秒単位で計算してる。これには驚いた。現金の受け渡し場所を次々に移動させるのが決まった手口やが、ワシらが互いに無線で連絡を取り合っていて少しでも指定時間に遅れると、全く以て姿を見せんのや」。こうした巧妙な連係プレーの背後に、警察がある種の“組織力”を疑ったのは当然と言えるだろう。しかし、「知らぬ存ぜぬ」で押し通すKから何ら証言を取ることができぬまま、捜査陣は引き下がることになる。実は、この失敗は予想されたことだった。最初に捜査線上に上った産廃業者とK元組長を結び付けた最重要の手がかりが、事情聴取を前にして瓦解していたのだ。その証拠とは、“53年テープ”と呼ばれる1本のカセットテープ。事件発生の6年前となる昭和53年8月17日、江崎グリコ役員宅に郵送されたテープには、年配の男性の声で、事件を予告するかのような話が吹き込まれていた。「私は30年ほど、部落解放同盟の会長をしている者でございます。1ヵ月くらい前から過激派の連中と付き合うようになりまして、実は、然る過激派の連中が『どうしても資金がいる。そこで、グリコさんにカンパしてもらいたい。若し蹴られたり、警察に言ったりなさると、それなりに報復を計画している』ということを知ったのです」「過激派の連中は、グリコ製品に毒物を入れて12都道府県にばら撤く準備をし、連中はグリコに3億円を要求するつもりだったのですが、私が交渉して1億7500万円まで引き下げさせた」「若しグリコさんに応じて頂けるのであれば、朝日・毎日新聞の尋ね人欄に“ヨシザワ話ついた すぐ帰れ フジサワ”と掲載して頂きたい」。警察は、産廃業者に連なる人脈の中から、“53年テープ”とよく似た声の持ち主である富山市在住の元北朝鮮工作員の男(当時50代)を発見。その男を介して、産廃業者とK元組長が繋がったのだ。また、京都に在住していた元工作員の娘が、江崎グリコに対する脅迫電話で流された“女性の声のテープ”と目された。しかし、強制捜査の着手前、元工作員と“53年テープ”、娘と“女性テープ”の声紋鑑定を行った『科学警察研究所』は、「両者とも一致せず」との結論を出していたのだ。この時点で、産廃業者と元工作員、K元組長を“一味”と見る捜査方針は大きく揺らぐ。Kと同時に任意同行を求められた関係者らは、事件への関与を一様に強く否定。グリコ森永事件の捜査は、この時点で事実上の敗北を喫したのである。そして2000年2月13日午前0時。この時までに、誘拐や殺人未遂等、グリコ森永事件に含まれる28件の事件全てが時効を迎えた。


キャプチャ  キャプチャ
スポンサーサイト

テーマ : 社会ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

搜索
RSS链接
链接
QR码
QR