fc2ブログ

【Global Economy】(325) 不動産・地方財政・共産党…中国経済、揺らぐ屋台骨

中国経済の屋台骨が揺らいでいる。主要な震源は“不動産不況”・“地方政府の財政悪化”・“中国共産党や政府への信頼感低下”の3つだ(※①)。中国の景気動向を占うには、“3つの動揺”が及ぼす影響を見極める必要がある。 (編集委員 小川直樹)



20230925 1120230925 12

中国経済に関する冴えないニュースが続いている。製造業の景況感は5ヵ月連続で悪化し、輸出は4ヵ月連続で減少した。新築住宅価格は主要70都市のうち52都市で下落し、若年層の失業率は6月に過去最高の21%を超えた後、あろうことか公表を取り止めた。中国共産党は7月に開いた政治局会議で、経済情勢について「国内需要が不足し、一部企業が経営困難に陥っている。重点分野で隠れたリスクが多く、外部環境は複雑で厳しい」と、内憂外患の状況を認めた。会議では“需給関係に重大な変化”が生じた不動産の政策調整・最適化や、地方政府の包括的な債務削減案の制定・実施を決めた。中国の調査研究機関である『中指研究院』によると、地方政府が発表した住宅ローンの貸し出し条件の緩和といった経済対策は、8月以降に限っても100本に迫る。当局の危機感の強さが見て取れる。中国経済の動揺が止まらない一つ目の要因は、不動産不況の長期化だ。きっかけは規制強化だった。金融当局等は2020年8月、不動産開発会社の負債の増加に歯止めをかける為、3つのレッドラインと呼ぶ財務指針を定めた。2021年1月には銀行の不動産関連貸し出しに上限を設けた。借り手と貸し手の双方を締め付け、不動産バブルの沈静化を狙った。これが効き過ぎた。特に2021年9月以降、『中国恒大集団』等民営の不動産開発会社の資金繰りが悪化。債務不履行(※デフォルト)やマンションの建設中断が続出し、住宅購入意欲を削いだ。不動産不況の始まりだ。構造的要因も市況の悪化に拍車をかけている。国連の人口推計によると、中国の住宅購入中心世代(※30~34歳)は2021年にピークを迎え、2030年までに4000万人以上減るという(※②)。

20230925 1320230925 14

国家統計局によると、今年1~8月の住宅新規着工面積は、恒大の経営危機が表面化する前の2021年1~8月比で半分以下に落ち込んだ(※③)。需要の減少に合わせて供給を急激に絞ることで、不動産価格の暴落を防ぐ意図が透ける。中国の不動産分野は、関連産業等を含めるとGDPの25%に上るとの試算があり、経済成長の原動力だった。『大和総研』経済調査部長の斎藤尚登氏は、「縮小均衡によって住宅の開発と販売に依存した経済発展パターンは立ち行かなくなる」と指摘する。二つ目の動揺が、地方政府の財政悪化だ。中国は土地が公有制であり、地方政府は不動産開発会社に土地使用権を売却して収入としている。自主財源が乏しい地方政府の「財政上の打ち出の小槌」(エコノミスト)であり、主要財源となってきた。ところが、不動産開発会社が経営難に陥り、投資を抑えた結果、昨年の売却収入は約2兆元(※約40兆円)も減った。景気対策の実行部隊である地方政府の財政的な余力は乏しくなり、中国政府は大規模な景気対策を打ち出せずにいる。地方財政の逼迫は、地方政府系投資会社の融資プラットフォームが抱える債務返済への疑念に繋がる。『国際通貨基金(IMF)』によると、地方政府が連帯して返済責任を負うとされる融資プラットフォームの債務は今年、66兆元(※約1300兆円)に達する(※④)。中央と地方を合わせた政府債務の69兆元に迫る。“隠れ債務”と呼ぶには規模が大きく、仮に1社がデフォルトを起こせば連鎖する恐れがある。債券の償還が難しくなった天津市傘下の『天津城投集団』は債券を新規発行し、国有銀行等に引き受けてもらってデフォルトを回避した。『日本総合研究所』主席研究員の三浦有史氏は、「天津のように何をおいてもデフォルトを防ぐだろう。ただ、融資プラットフォームの不良債権がなくなるわけではなく、リスクが堆積することでデフォルトが起きた際のマグニチュードは大きくなる」と懸念する。

20230925 1520230925 16

三つ目は、共産党・政府への信頼の揺らぎだ。多くの中国人にとって不動産は値上がりし、儲かる投資先だった。過去の政策で形成された“神話”は、当局の手のひら返しに遭い、家計資産の7割を占めるという不動産の価値に対する信頼が損なわれた。3年近くに及んだ問答無用のゼロコロナ政策も将来不安に拍車をかけ、家計は消費より貯蓄や住宅ローンの返済に励むようになった。相次ぐデフォルトは銀行や投資家の融資・投資の判断を慎重にさせ、駐在員の拘束や改正反スパイ法の施行も市場の信認を傷付けた。『ブルームバーグ通信』によると、先月訪中したアメリカのジーナ・レモンド商務長官は、「中国はリスクが高過ぎて投資できないという企業が増えている」と語ったという。中国国家外貨管理局によると、4~6月の中国への直接投資は前年同期比87%減の49億ドル(※約7200億円)だった。記録が確認できる1998年以降で最も少ない(※⑤)。『国際金融協会(IIF)』が発表した先月の外国投資家の証券投資動向によると、中国株は149億ドル売り越され、資金流出は最も大きくなった。共産党・政府に対する信頼感の低下は、長期間に亘って政治・経済にダメージを齎す。中国を悩ます3つの動揺の中で、最も厄介な問題かもしれない。


キャプチャ  2023年9月22日付掲載
スポンサーサイト



テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接