【“地震予知”という名のニセ科学】(06) 地震予知が可能と謳う民間の地震予測会社の実態

「国がやらないなら民間で」ということなのか? 怪しい“民間地震予測会社”が増えている。その背景には、科学者たちの事情もあるようだ。 (取材・文/フリーライター 槍田創)

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民間の地震予測会社が存在することをご存知だろうか? それらの会社のホームページには、夢のような言葉が並ぶ。「巨大地震発生を○日~○日前後に予測する」「M7以上の地震の予兆について、○~○週間前までに会員に情報を提供する」といった具合である。日本の地震学者でさえ短期予知を困難としているが、彼らは先行現象を捉え、数日~1ヵ月単位での予測が可能としている。「非常に懐疑的である」と語気を強めるのは、東京学芸大学の鴨川仁准教授(物理学)だ。「私自身、地震発生の前触れとされる先行現象を研究していますが、我々の研究を含め、地震予測が可能な確かな先行現象は今も確認できていません。多くの民間地震予測会社は、『地震発生前に起こる異常を様々な手法で観察し、それを基に地震の予測を行う』としていますが、地震とそれら先行現象に相関関係があるとは言い切れない筈です」。鴨川氏は、アマチュアの天文学者であり、地震予知者としても有名な八ヶ岳南麓天文台の串田嘉男氏による“FM電波の地震予報”を例に挙げ、こう続ける。「彼はFM電波を用いた流星エコーの観測中、流星のものとは異なる電波の変動を発見し、それが地震活動と関連があるとの結論を出しています。それが彼の地震予測法で、串田氏は阪神淡路大震災以降、会員向けに地震予知情報の配信を行っています」。月額5000円を支払うと、ファックス又はメールで、月に数回情報が配信される仕組みのようだ。串田氏の著書によると、普段は届かない遠くのFM放送局の電波が、地震発生前に震源の上空で散乱して受信強度に変化が現れる為、これを解析することで地震予測が可能としている。

テレビ出演時にも「M6以上の地震なら75%の確率で的中する」と発言する等、その手法には大きな自信があるようだが…。鴨川氏が続ける。「抑々、地震はマグニチュードが小さくなると、桁違いに数が増える。極端に言えば、マグニチュードの小さな地震を対象に警告を出せば、かなりの確率でその警告は当たったことになります。一方で、マグニチュードの大きな地震に対して警告を乱発していれば、かなりの確率で警告後に地震が発生する。当たっているとされる地震予測情報の殆どが、この何れかによって導き出された適中率・予測率の高いほうだけを宣伝していると思われます。ビジネスとしてやる以上、“○%当たった”等とわかり易い数字で宣伝しなければ、商売にはならないのかもしれません」。他の民間の地震予測会社のサービス内容を見てみても、確かに強気な数字が並んでいる。「震度5以上の地震はすべて的中」(メールマガジン『MEGA地震予測』)、「地震該当率92%」(富士防災警備株式会社のサービス)。MEGA地震予測では「GPSデータを用いた地殻変動解析により地震予測できる」とし、富士防災警備では「VLF/LF・ULF・GPSといったいくつかの観測手法で予測している」と、尤もらしい科学的根拠が書かれてあるのだが…。一体、この2つの会社は何なのか? 鴨川氏がこう続ける。「ここ数年、メディア等に登場し、有名となっているのが、東京大学の村井俊治名誉教授が顧問を務めるメールマガジン“MEGA地震予測”です。国土地理院が全国1240ヵ所に設置したGPSを用いて地殻変動を解析し、地震予測情報を有料メールマガジンとして会員に配信しています。国土地理院の方と随分協議を重ねましたが、地震の前兆としての地殻変動を見ることはできません。先行現象として、地震の直前に僅かな地殻変動がある可能性はゼロではないかもしれませんが、“地震予測として使用できる”との科学的な証明はなされていません」。メールマガジン同様、富士防災警備も権威ある専門家を抱え、サービスを展開しているようだ。ある地震学者がこう話す。「電気通信大学の早川正士名誉教授が顧問として関わっています。電磁環境学専門の早川教授は、地震の前になると電離層が2~3㎞下がることに注目し、『この電離層が下がる現象を観測すれば地震が予知できる』としています。具体的には、潜水艦の通信に用いられている超長波(VLF電波)を使用し、地表面のある地点から電離層までの届く時間を調べる。地表面と電離層を交互に反射しながら進むVLF電波は、電離層の高さに応じて進む距離が増減する為、電離層の高さによって時間の変化が起きるのです。早川教授は研究論文も数多く書いており、『VLF電波の電波異常も地震の先行現象である』と見られています。但し、地震予測として使えるものかどうかははっきりしません」。

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民間地震予測会社に対し、国や地震学者らの大半は“キワモノ”扱いし、相手にしていない。それでも尚、こうして民間で研究する科学者たちがいる理由を、鴨川氏はこう考察する。「東日本大震災以降、予知ができなかったことで、“地震予知不可能論”が高まりました。地震調査研究予算は年間数百億円と言われていますが、地震の前触れとされる先行現象や、短期的な予知研究の為の予算は数千万円しかありません。そんな中、予知研究への志を高く持った科学者が、『研究費が潤沢であろう民間企業の協力の下で研究したい』と考えるのも無理はないかもしれません」。ただ、中には「科学の道から逸れてしまう人も存在する」と、鴨川氏はこう続ける。「長年、科学の世界に身を置いていると、不思議なことに科学的には根拠が無くとも“できる”と錯覚し始める人がいます。客観的に研究内容も論文も不十分なのに、本人は『地震予知はできる。世紀の大発見をした』と思い込んでしまうのです。人間の英知は凄いですから、この先、地震予測が不可能だとは思いません。但し、数ある予測の中で最も難しいのが地震予測です。現時点で民間がビジネスとして『予測できる』と言い切ってしまうのは、人々の混乱を招くことになりかねません」。日本の大手企業と科学者が組む動きもあり、そうした科学者の存在は心配である。『NTTドコモ』は2016年3月、地震や津波の被害によって発生する通信障害からの早期復旧を目的に、前出のMEGA地震予測を配信する会社が研究する地殻変動から、地震の場所と時期を予測する“地震予測システム”の実証実験への協力を開始することを発表した。ドコモの携帯電話基地局16ヵ所に地殻の変化を捉える装置を設置し、地殻変化のデータをMEGA地震予測の配信会社に提供するという。将来的には地震予測サービスの提供を目指しているというが、こうした動きを地震学者らは冷ややかな日で見ている。「抑々、地震予測の手法に専門家らは懐疑的。大手企業までもが地震予測ビジネスに乗り出したことに驚いています。それだけ需要があるということなのでしょうが…」(前出の地震学者)。今後も民間の地震予測会社は増えていくのだろうか?


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