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【30年ぶり肥満症薬】(下) 痩せ願望からの使用を警戒

20230928 04
約30年ぶりに新薬が承認され、肥満症治療に注目が集まる一方で、社会問題化しているのが、糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬を“痩せ薬”として、糖尿病ではない人達に販売する美容クリニックの存在だ。公的医療保険の対象外で高額な為、購入者とのトラブルも起きている。更に、薬の供給にも影響が生じている。「コロナ禍でオンライン診療が普及し始めた2020年頃から、GLP-1受容体作動薬を通信販売する美容クリニックが増えてきた」。近畿地方の総合病院で、糖尿病患者らの診療に携わる循環器内科医は、そう振り返る。一部の美容クリニックは“GLP-1ダイエット”や“メディカルダイエット”といった言葉で、痩せ願望がある人を引きつける。「1ヵ月に数㎏減る程度の食事や運動療法に対し、GLP-1受容体作動薬を使うと大きな減量効果が期待できる点や、脳に働きかけて空腹を感じ難い点を強調している」と話す。契約トラブルも発生し、2020年9月には『国民生活センター』が注意喚起の文書を公表した。同センターによると、本来、糖尿病の診断を受けて処方される薬が、十分な説明や問診がないまま販売されているという。担当者は、「利用者は糖尿病の薬とは知らず、“痩せる為の薬”と思って申し込み、副作用にも対応してもらえない事態が起きている」と話す。

『日本肥満学会』の横手幸太郎理事長も、「正常血糖の人が使用すれば低血糖となり、失神するケースもある。若い女性が痩せ過ぎると感染症に罹り易くなったり、不妊になったりする」と事態を憂慮する。更に深刻なのが、GLP-1受容体作動薬の在庫への影響だ。横手理事長は、「痩せ薬として使われてしまうと、本来使うべき人達が使えない」と心配する。事実、『日本イーライリリー』等は、3月に週1回投与の『トルリシティ』(※一般名は『デュラグルチド』)、7月には、6月に発売したばかりの新薬『マンジャロ』(※一般名は『チルゼパチド』)の出荷制限を発表した。『ノボノルディスクファーマ』も、週1回投与の『オゼンピック』(※一般名は『セマグルチド』)を出荷停止や出荷制限にしている。メーカー2社は、在庫逼迫の理由を「世界的な需要増の為」と説明する。しかし、臨床の医師の間には「美容クリニックの適応外使用も一因」との見方が広がる。前出の医師は、「今年に入り、新規の糖尿病患者への処方は控えるよう制限がかかった。肝心の保険診療に薬が足りない状況は本末転倒だ」と憤る。『北里大学北里研究所病院』糖尿病センター長の山田悟氏は、「新規患者にトルリシティが使えなくなり、以前から使っている患者への継続処方も別の薬への切り替えが求められた。トルリシティは他のGLP-1受容体作動薬よりも痩せ難い特徴がある為、痩せさせたくない高齢の患者の治療に適していた。更に、オゼンピックの新規処方も止められ、治療選択が難しくなっている」と打ち明ける。厚生労働省は7月28日、都道府県等に文書を出し、GLP-1受容体作動薬が真に必要とする糖尿病患者に供給されるよう、買い占め等を控え、適正使用に努めることを医療機関等に周知するよう求めた(※右上画像)。『ウゴービ』等の肥満症新薬の発売日は未だに決まっていない。横手理事長は、「肥満症治療薬が発売されると、痩せたい人が飛びつくことが懸念される。発売の際は、薬による治療が必要な肥満とはどんな状態かという点等を啓発する必要がある」と話す。

          ◇

(医療プレミア編集部)高野聡が担当しました。


キャプチャ  2023年9月20日付掲載
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