【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(42) 白人女性は詐欺師か女神か? 猫太郎に舞い込んだ金塊話

春の訪れが感じられる4月のある日曜日、友人の猫太郎(※仮名)から奇妙な相談を受けた。シリアから37.5㎏の金塊を空輸する場合の手続きと関税についてだ。37.5㎏ということは、恐らくラージバーが3本だろう。ロンドン金市場で取引される標準的なゴールドバーだ。ラージバーは1本が400トロイオンスで、12.5㎏である。ここまでならよくある金取引の話なのだが、詳しい事情を聞くと、まるでスパイ映画のような展開だった。始まりはアメリカ空軍の女性兵士・ナタリアからの電話だった。彼女は現在、トルコのインジルリク空軍墓地に駐留していて、対IS(イスラミックステート)の情報収集を任務としている。猫太郎とは『Facebook』で知り合い、『LINE』やメールで5年ほどの交流があった。年齢は33歳、金髪に青い目の典型的な白人女性で、中々の美人だ。猫太郎に見せてもらったナタリアの画像は、確かにアメリカ空軍の制服を着たものばかりだ。その彼女が突然、猫太郎に国際電話をかけてきた。「シリアから金塊を送るから、日本で受け取ってほしい」。猫太郎が理由を聞くと、空爆された街で発見された貴金属を部隊で山分けした物だという。戦地ではよくある話で、簡単に言えば略奪品である。イラク戦争の時にも、銃撃や爆発で傷付いた金塊が市場を賑わしたものだ。ナタリア曰く、「ロンドンのヒースロー経由で日本まで空輸するから、換金も手伝ってほしい」とのことだった。猫太郎は身の危険を感じながらも、ナタリアの申し出を引き受け、荷物の配送先を自分のオフィスではなく、知り合いの五反田にある事務所に指定した。

3日後、猫太郎にイギリスの国際物流会社『プリムス』からメールが届いた。送り状と通関証明、それに荷物番号である。プリムス社のホームページに荷物番号を入力すると、ダマスカスのメッツェからヒースロー空港を経て、フランクフルトに荷物が移動していた。荷物はメタルケースが1個で38.7㎏、中身はAu(金)となっている。それだけではない。何とダイヤモンドまで入れられているではないか。この展開を見ていると、猫太郎が何か大きな陰謀に巻き込まれているように思えてならなかった。そして、筆者の中でナタリアはアンジェリーナ・ジョリーになっていた。多分、猫太郎はメタルのケースを五反田で受け取った瞬間、スーツにサングラス姿の外国人に銃撃されるだろう。送り状が届いた翌日、猫太郎の元へプリムスから送料を請求するメールが来た。金額は6500ポンド、日本円にして約90万円で、入金先は代理店となっていた。ここでやっと新手のパッケージスカム(小包詐欺)だと筆者は気付いた。貴重品を送ると思わせて、高額な送料や保険料を巻き上げる手口である。筆者の説明を聞いた猫太郎は、余程悔しかったのか、650ポンドの送金を実行。その送金伝票を6500に改竄して、プリムスの代理店に送った。そんな初歩的な手口で相手も騙されはしないだろう。ところが、翌日に荷物の配送状況を確認したら、何とシドニーへ移動していた。シリアからシドニーまで、38.7㎏のメタルケースが移動したことは間違いない。問題は中身だ。プリムスへ荷物の手配をした代理店が、送金伝票の偽造に気付くまでには、未だ時間がある。それまでに荷物が日本へ到着すれば、650ポンドで38.7㎏のメタルケースは手に入る。この原稿を書いている時点で、荷物はシドニーから移動していない。物語は進行中である。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年5月16日号掲載
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