【ナゾノミクス】(02) 財政、病院に行く私が悪い?

20170517 07
千葉県に住む北村優子さん(仮名・24)は、花粉症の薬を病院で処方してもらう。市販薬を買うよりも安いからだ。アレルギー症状を抑える『アレジオン(錠)20』の場合、ドラッグストアで買うと1錠あたり165円ほどだが、病院だと1錠で36円。診察にかかる初診料等を含めても月3000円以下と、かなりお得だ。体調が優れなければ病院に行く。こんな当たり前のことが日本で問題になっている。お金がかかり過ぎているからだ。花粉症の薬を病院で貰うほうが市販薬より安いのは、料金の払い方に違いがある為。病院が安売りしている訳ではない。病院の診察料や薬代の内、患者が窓口で払うのは原則として全体の3割で、70歳を過ぎた所得が少ない高齢者は更に軽減される。残りは健康保険料や、国や自治体の補助で賄われている。厚生労働省によると、2014年度の日本国民の医療費は約41兆円。その内、患者が直接負担したのは約5兆円で、12%に過ぎない。健康保険料は、健康な時から企業と個人が払っている。

国や地方の補助も、その裏付けは税金だ。窓口で払っていないからといって、負担していない訳ではない。医師の診察にもお金がかかる。ドラッグストアより病院のほうが安いという訳ではない。国は医療制度を維持する為、今年度の予算では11.8兆円を計上した。国の予算は税収だけでは賄い切れず、借金にあたる国債を発行して手当てしている。国と地方を合わせた借金は今年度末で1093兆円と、先進国で最悪の水準となる見通し。高齢者が増えていく為、医療費は更に膨らむ可能性が高い。政府は2014年4月、消費税を5%から8%に引き上げた。2019年10月には、更に10%へ引き上げる予定だ。増税分は全て医療や介護等の社会保障費に充てるが、それでも足りないと言われている。誰もが加入する健康保険の料率も、2014年までの5年間で平均2~3%程度上がった。『日本総合研究所』主任研究員の飛田英子氏は、「医療については誰もがコスト意識を持つ必要がある」と指摘する。政府は処方薬と同じ成分の市販薬の使用を促す為、今年1月から新しい制度を設けた。医療用から転用された市販薬の購入費用について、税金の控除を受けられる仕組みだ。薬を貰う為に病院に行く人を少しでも減らす狙いがある。昨年10月、自民党の小泉進次郎議員ら若手議員は提言を纏め、「小さなリスクは自分で対応すべきで、公的保険の範囲を見直すべきだ」と主張した。“気軽に行ける”ことが将来の負担に繋がるのが今の財政状況。見直しが欠かせない。 (吉田悟巳)


⦿日本経済新聞 2017年5月3日付掲載⦿
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