【霞が関2017春】(11) 森を守るために増税…人手不足が壁

総務省が、森林の整備に使う地方新税“森林環境税”の導入へ本格的に動き出した。地球温暖化への対策として、二酸化炭素(CO2)を吸収する森林を手入れするお金の確保を狙う。省内に設けた検討会でも、有識者から制度そのものへの反対は少なかった。しかし、具体化しようとすればするほど、1つの問題に突き当たる。お金を用意しても、抑々、林業に携わる人が足りない。「全地球的な課題だ。便益が広範に及ぶものという説明をする必要がある」。先月21日に総務省で開かれた検討会の初会合。意見交換では、有識者からこんな意見が出た。検討会の正式名称は『森林吸収源対策税制に関する検討会』。CO2等温暖化ガスを減らすのは“全地球的な課題”で、「森林整備の為に新たな税を担うのは国民の義務」と言わんばかりの論法だ。検討会には総務省の高市早苗大臣が出席。委員や宮城県の村井嘉浩知事らを前に、森林環境税の意義を訴えた。総務省幹部は、「大臣がここまで力を入れて説明してくれるとは思っていなかった」と驚く。森林環境税は、今年度の与党税制改正大綱で「2018年度税制改正において結論を得る」とされている。検討会は来月以降に制度内容を詰めて、今秋の取り纏めを目指す。総務省肝煎りで進む森林環境税だが、新税の創設は一筋縄にはいかない。問題の1つが人手不足だ。総務省によると、森林・林業を担当する自治体の職員は全国で3000人に留まる。地主との調整がある為、手入れが大変な“私有人工林”が1000ha以上の市町村は約1000あるが、これらの自治体の内の8割以上で担当職員が5人以下しかいない。市町村の人員が確保できたとしても、実際に間伐をするのは森林組合や民間の企業だ。

日本経済新聞が実施した林業調査によると、全国の森林組合の93%が「人手不足」と答えている。新税そのものへの逆風も吹き始めている。自治体の“基金”に多額のお金が貯まっていることに、政府内で批判が出てきた為だ。今月11日の『経済財政諮問会議』では、「国から交付金を受け取る自治体の財政調整基金等の基金残高が21兆円まで増えた」と民間議員が指摘。その前日の財務省の財政制度分科会でも自治体の基金残高の資料が提示され、見直しが議論された。抑々、47都道府県の内の37府県は既に独自に森林・林業関係の課税をしており、税収は年271億円に上る。うち1割にあたる26.9億円が、今回の森林環境税と目的が重なる。総務省は、「災害等に備える基金と森林環境税は性質は違う」と反発する。しかし、既にある税制との関係を整理し、積み上がった基金の使い道等もきちんと説明することが、“増税”を議論する大前提であることは間違いない。誰もが反対し難い“温暖化ガスの削減”は、財源確保を狙う省庁にとって格好のテーマだ。環境省の山本公一大臣は今月12日の閣議後の記者会見で、「炭素税や排出量取引の導入に向けた検討会を設置する」と発表。経済界から反対の多い炭素税だが、目的は森林環境税と重なる。森林環境税は、農林業関係の議員や業界が20年以上前から創設を要望してきた。政府は、温暖化ガスを2020年度に2005年度比で3.8%以上減らすことを目標に掲げている。CO2を吸収する森林の整備そのものに反対する人は少ないだろう。しかし、“増税”という負担を国民に求めるほど、議論が熟すのかどうか。「温暖化対策をする為には森を守るお金がいる」というだけの議論に終始するならば、“木を見て森を見ず”と言われるのは目に見えている。 (逸見純也)


⦿日本経済新聞電子版 2017年5月16日付掲載⦿
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