【地方銀行のリアル】(02) 十八銀行(長崎県)――公取に握られた“九州再編”の成否

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金融庁が主導する地方金融機関の再編の大舞台となっている九州。“バスに乗り遅れるな”とばかりに合従連衡が続く中、その波に翻弄されているのが長崎県の『十八銀行』だ。県南部の長崎市内中心部にある同行本店の住所は、同市銅座町1番11号。県庁所在地である長崎市を中心とする県南部経済の心臓だ。本来、この4月から十八銀行は『ふくおかフィナンシャルグループ』の一員として、新たに船出する筈だった。九州エリアトップの地銀である『福岡銀行』を中心とする同FGに入ることで、経営基盤強化を図る目論見が崩れた原因は、『公正取引委員会』からの横槍だ。同FG傘下には同じ長崎県にある『親和銀行』があり、公取は県内での“寡占”を問題視したのである。十八銀行に衝撃が走ったのは昨年11月末。同行専務でふくおかFGとの合併交渉の中心にいた森甲成氏が、自宅マンションから飛び降りて自殺したのだ。公取・金融当局・FGとの間で板挟みになった末の悲劇とみられている。九州の金融業界に詳しい関係者が「次期頭取も確実視されていた」と惜しむ森氏の死を以てしても公取の態度は変わらず、年が明けて1月には、合併を今年10月まで延期することが発表された。十八・親和両行は、昭和の時代には長崎市を中心とする県南部、佐世保市を中心とする県北部で棲み分けをしてきた。しかし、徐々に競合状態が生じ、特にこの10年はそれが激化していた。長崎県は過疎化した島嶼部が多く、銀行業の収益環境としては全国的にみても最悪の部類に入る。バブル崩壊以降、両行は共に不良債権処理に追われ、低迷期に入った。ライバルの親和銀行は早くも、2007年に白旗を揚げた。自己資本比率が5%台に落ち込み、単独での事業継続が困難になり、同年に発足していたふくおかFGの傘下に入ったのである。前向きな合併ではなく、「軍門に下った」(前出関係者)というのが適切な統合劇だった。

これで息を吹き返した親和銀行に対して、十八銀行は孤軍奮闘することになる。両行のシェアは拮抗し、貸出残高(※昨年9月末)で比較すると、十八銀行の32.7%に対して親和銀行は31.8%とまさに激戦だ。この間、親和銀行は着実に業績を回復させており、自己資本比率は昨年3月期決算で8.8%になっている。一方の十八銀行は体力を奪われ、2013年3月期に13.6%あった自己資本比率が徐々に削られ、昨年3月期には11.4%になった。長崎県内の経済は、この間も上向く基調はなく、県内総生産は4兆4000億円程度で低値安定している。銀行経営の1つの目安である預貸率をみると、十八銀行の苦戦は鮮明になる。これは預金に対する貸し出し額の割合を示す数字で、銀行本来の収益源である貸出利息による稼ぎがどの程度見込めるかを表す。昨年9月末時点の十八銀行の預金額は2兆5400億円、貸し出しは1兆5100億円で、預貸率は59.6%だった。前年より改善したとはいえ、全国に100以上ある銀行の内、下から10番目程度と極めて悪い。親和銀行も平均を下回っているものの、64.2%と十八銀行よりは多くの貸し出し先を確保していることがわかる。前出の関係者が語る。「最近は、特に十八銀行にとって消耗戦の様相を呈していた」。勿論、十八銀行も指を銜えて見ていた訳ではない。この間、『佐賀銀行』・『筑邦銀行』(福岡県)とのシステム統合を進め、経営の合理化を図ってきた。再編についても、当初はふくおかFGではなく『九州フィナンシャルグループ』に接近していた。同FGは2015年10月に『肥後銀行』(熊本県)と『鹿児島銀行』が経営統合してできた。県北部で絶大な影響力を誇り、拡大を模索する福岡銀行に対抗する為に発足した。これ以前から十八銀行は両行と勉強会を開く等しており、「本来は十八銀行を含めた3行が同時合併するとみられてきた」(地元地銀関係者)。その目論見が崩れ、最終的な合流も断念せざるを得なくなった理由については、幾つか推察されている。十八銀行の株価が低過ぎたのが最大の原因とみられているが、地元・長崎での不毛なシェア争いを終結させる為にふくおかFGに接近したとみる向きもある。カギを握るのは、九州エリアで一定の影響力を持つ“九大閥”の存在だ。ふくおかFG傘下の『熊本銀行』前副頭取の櫻井文夫氏は九州大学経済学部卒業。十八銀行の森拓二郎頭取は櫻井氏の1つ年下で、同学部を出ている。また、昨年11月に自殺した森専務(※当時)も、学部こそ違うが九大(法学部)の出身だ。十八銀行が統合を断念した九州FG傘下の肥後銀行・鹿児島銀行の頭取は共に慶應義塾大学卒。エリアを代表する旧帝大のネットワークが、地銀再編でも影響力を及ぼした格好だ。

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十八銀行の森頭取は先月に入り、保有する債権の一部を他の金融機関に譲渡することで、合併後の県内シェアを下げる計画を発表した。また、十八銀行の支店の一部を切り離すシェア低減策が模索されていることも報道されている。これまでの顧客を切り捨ててでも、ふくおかFGとの合併にこぎつけたい思惑が浮き彫りになる。十八銀行にとって心強いのは、金融庁のバックアップがある点だ。抑々、同行と金融庁は旧大蔵省時代から抜き差しならない関係にある。古くは1956年に、旧大蔵省から北九州財務局長等を務めてきた清島省三氏が頭取として送り込まれた。清島氏はその後、27年以上に亘って頭取の椅子に座り続けた。その後も、2007年に生え抜き頭取が復活するまで、十八銀行は旧大蔵省から頭取を受け入れてきた経緯がある。今年3月9日、金融庁は長崎市内で地元企業向けの説明会を開催した。同庁が合併進行中のエリアでこうした説明会を開催すること自体が異例だ。地元経済界では、「合併後に寡占状態になった場合、貸出金利が上昇するのではないか?」という懸念が根強くある。金融庁の担当者は、「合併効果により経営が効率化することで、そうしたことは起きない」と説明した。同庁の金融研究センターが、今年1月に『長崎県における地域銀行の経営統合効果について』というリポートを公表している。その分析でも、「合併後に貸出金利が上昇する可能性は低い」と結論付ける。「兎にも角にも、合併を後押ししたい」という思惑が滲む。先月14日、佐世保市に拠点を置く『佐世保中央信用組合』と『長崎県民信用組合』が、来年1月を目途に合併することで合意したことを発表した。長崎県内の金融業界の動きは、地方金融業界の中でも先端を走っている。予定通りに進めば、今年10月、十八銀行は仕切り直して出発する。地元経済界の懸念が現実となるかどうかがわかるのは、それ以降だ。


キャプチャ  2017年5月号掲載




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