【誰の味方でもありません】(02) コスチュームプレイの街

春の京都へ行ってきた。祇園の辺りを歩いていると、兎に角、華やかな着物姿が目に付く。芸子さんや舞妓さんという訳ではない。「流石は京都、一般人も着物を着こなして風流だな」と思ったが、よくよく見ると着物ではなく浴衣。しかも、着ているのは外国からの観光客ばかりだった。そう、京都では和装レンタルが大流行しているのだ。ある店では1日浴衣をレンタルして3500円。それで京の街を背景に、インスタグラム用の写真が撮れるなら安いものだ。“フォトジェニック”(写真写りが良い)という言葉があるが、インスタ映えする写真の為なら現代人は手間を惜しまない。インスタグラムの為に、シャボン玉等を活用して少しでもいい写真を撮ろうとする姿は労働そのものである。和装の溢れる京の山だが、当の京都人は“和”に飽き飽きしているようだ。例えば、京都市は全国の都道府県庁所在地の中で最もパンの消費量が多い。一方でお茶の消費量は少なく、代わりに牛乳やコーヒーをよく飲む。完全に生活スタイルが洋風なのだ。人間は身近なものの魅力には気付き難いのだろう。今でこそ人気の京都の町家だが、一時期は壊滅の危機にあった。1980年代の京都では観光客の減少が深刻で、町家は次々に取り壊され、高層マンションが建てられていた。

町家が本格的に注目されるのは2000年代に入ってからのことだ。“町家ダイニング”や“町家カフェ”といった形で、町家のリノベーションが進んだのだ。結果、京都はインスタグラマーたちに優しい街になった。そう考えてみると、東京にはフォトジェニックな場所が少ない。2020年にはオリンピックを控えているというのに、都心部は世界中どこにでもあるようなビルばかり。外国人向けの観光地も、浅草や築地と限られている。そこで提唱したいのが、東京をコスプレの街にすること。京都で外国人が和装コスプレを楽しんでいるように、東京も街を挙げてコスプレ化に取り組んでいくべきだと思う。特に、東京オリンピックのボランティアの制服は、男性は忍者、女性はワンタッチ着物にするべきだ。現行案はダサいブルーの制服。街中で目立たない上に、インスタ映えもしない。しかし、忍者とワンタッチ着物にすればお土産として買って帰ってもらえるし、何より東京の街が華やぐ。単純に、東京に忍者が沢山いたら面白いと思いませんか? “日本といえば歌舞伎や忍者”というイメージを変えたい人もいる。現に、リオデジャネイロオリンピックでの引き継ぎ式では極力、伝統色を排したショーが繰り広げられた。だけど、文化とは一方的に押し付けるものではなく、海外の目で発見してもらうものでもある。今でも日本に歌舞伎や忍者を求める人が多いならば、粛々とそれを提供すればいい。プライドの高い京都までが、その軍門に降っている。東京がそれをしない理由が無い。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。


キャプチャ  2017年5月18日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 政治・経済・社会問題なんでも
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR