【点検トランプ政権100日】(05) 報道批判、目くらまし

20170519 03
ドナルド・トランプ政権発足から100日の節目を迎えた先月29日、ワシントン市内の『ワシントンヒルトンホテル』。ホワイトハウス記者会主催の夕食会に、2600人を超すメディア関係者や著名人らが集まった。タキシード姿の男性に、色鮮やかなドレスを身に纏った女性。華やかな雰囲気の中、『ロイター通信』の記者で同会会長のジェフ・メイソンが演台に立った。「我々の仕事は、事実に基づいて報道することだ。我々は“フェイクニュース”ではない」。名指しこそしなかったものの、トランプが念頭にあるのは明らかだった。記者仲間たちは、総立ちで拍手を送った。例年なら、会場に現職の大統領が招待され、ユーモア溢れるスピーチを披露する。しかし、トランプは出席を断り、約100マイル離れたペンシルベニア州ハリスバーグで自らの集会を開いた。「私の100日を語る前に、メディアの100日を採点してみよう」。トランプはそう切り出すと、新政権に関するテレビ報道の89%が“否定的な切り口”だったとの調査結果を紹介した。そして、政権批判を続ける記者たちをばっさり切り捨てた。「非常に不誠実な人々だ」。集まった支持者らは、大きなブーイングでトランプに賛意を示した。メディアとの喧嘩は、今やトランプの代名詞だ。歴史ある報道機関を“エスタブリッシュメン(既存支配層)”の一部に位置付け、旧来型政治からの脱却をアピールする狙いがトランプにはある。

しかし、この対決構図も単純ではない。トランプが“フェイクニュース”だと指弾するのは、『CNN』・『MSNBC』のテレビ2社や『ニューヨークタイムズ』等一部に限られる一方で、保守系の『FOXニュース』を「最も正直だ」と持ち上げ、他の主要メディアの多くとも“100日”を前に単独インタビューに応じた。明確に差別化している。インターネットに記事を掲載する『ポリティコマガジン』は、ホワイトハウスを担当する記者60人超にアンケートを行った。トランプ政権になって取材機会が「減った」とする回答は38%。42%は「ほぼ同じ」だとし、21%は「増えた」と答えた。トランプや政権幹部は実のところ、多くのメディアと歴代政権並みに付き合っている。「トランプは、表ではメディアを激烈に批判するが、本音では報道ぶりを気にかけているし、取材にも積極的に応じている」。『ABC』記者のジョナサン・カールは、こう指摘する。同じアンケートでは、75%の記者がトランプによるメディア攻撃の目的を、単なる“目くらまし”だと受け止めていた。都合の悪い報道は“フェイク”だと決めつけ、支持者の関心が薄れるよう仕向けるトランプの思惑が、アメリカ人記者には見透かされている。二面性を持つトランプ政権とメディアの関係は、どこに向かうのか。ジャーナリズム関連の博物館『ニュージアム』で報道の自由を守る活動をしている『憲法修正第1条研究所』は先月下旬、アメリカ国内で“報道の自由”が保たれているかどうかについて、判定を発表した。15人の評価者の平均は、6段階評価で上から3番目の“C”に辛うじて届いた。同研究所のラタ・ノット常任理事は、「最低のF評定にならなかったのは、メディアが“政権の監視役”の仕事を熟しているからだ」と分析する。ただ、ニュージアムの昨年の世論調査では、「メディアは偏向なく報道していると思うか?」との問いに、74%のアメリカ国民が否定的な見解を示した。『ワシントンポスト』論説委員長のフレッド・ハイアットは、こう自戒する。「政権のメディア攻撃に対するジャーナリストの答えは、同じレベルで政権を非難することではない。プロフェッショナリズムに基づいて仕事を続けることだ」。 《敬称略》 (アメリカ総局長 小川聡)


⦿読売新聞 2017年5月4日付掲載⦿
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