【文在寅の韓国】(01) それでも「対話の道開く」

韓国に革新系の大統領が誕生し、緊張が高まる朝鮮半島に波乱要因が加わった。“文在寅の韓国”の行方を探る。

20170519 02
今月14日早朝、北朝鮮による弾道ミサイル発射は、夢見心地の韓国新政権を叩き起こした。大統領の文在寅(64)は、同10日の就任演説で南北対話への意欲を示したばかり。「『朝鮮半島の平和定着の為、私ができる全てを尽くす』と話した。それにも拘わらず…」と悔しさを滲ませた。それでも尚、南北対話を探る文の信念は揺らいでいない。同10日夜、9年ぶりの革新系大統領に就いた“長い1日”は、未だ終わっていなかった。ソウルの自宅に電話が鳴った。アメリカ大統領のドナルド・トランプ(70)だ。「十分な礼節をもって歓迎する。2人の大統領選勝利を一緒に祝おう」と訪米を招請した。「会うのを待ち焦がれる。懸案があればいつでも気楽に電話してほしい」。恋人に囁くような言葉で締め括ったが、北朝鮮との融和姿勢を隠さない文とトランプの腹の探り合いは、既に始まっている。投開票前日の同8日夜、文は選挙戦の最後の訴えで光化門にいた。李氏朝鮮時代の王宮の城門前広場は、前大統領の朴槿恵(65)を弾劾・罷免に追い込んだ“蝋燭集会”の本拠地だ。「トランプ大統領と金正恩を動かすことができる交渉者、確固たる安保、堂々たる外交ができるのは誰ですか!」と呼びかけると、支持者から文在寅コールが沸き起こった。韓国は、南北分断後70年を過ぎても、親米派の保守層と北朝鮮に融和的な革新(進歩)層が拮抗し、時に激しくぶつかり合う。革新層の脳裏には、市民と戒厳軍部隊が衝突し、街が戦場と化した1980年の『光州事件』等の影が残る。「アメリカは軍事政権の市民弾圧を黙認した」との抜き難い不信感だ。文は人権派弁護士として、反軍事独裁政権の民主化運動に身を投じた筋金入りのリベラル。当時の運動家には“反米DNA”がある。

「北朝鮮が核を凍結すれば米韓合同軍事演習を縮小できる」「朝鮮半島の軍事行動は断じて韓国の同意無しになされてはならない」――。最近の文は、アメリカを刺激しかねない発言が目立つ。トランプも黙っていない。韓国大統領選が文リードで後半戦に差しかかった頃、アメリカメディアのインタビューで『米韓自由貿易協定(FTA)』を糾弾し、『地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)』の配備費用についても「韓国が払うのが妥当だ」と、10億ドル(約1100億円)の負担を突きつけた。外交専門家は、「韓国がTHAAD配備に抵抗すれば在韓アメリカ軍を撤収しかねない」とみる。韓国の革新政権の取り込みを狙うのが中国だ。北朝鮮の核実験阻止に向けてアメリカと一先ず歩調を合わせるものの、韓国との関係改善で緊張関係にあるアメリカや日本を牽制する意図が透ける。「平凡ではない経歴・思考・観点に深い印象を抱いている」。米韓首脳の電話協議から13時間後、中国国家主席の習近平(63)は電話で文に語りかけ、極貧生活から革新系大統領に上り詰めた生い立ちに共感を覗かせた。「交渉してこそ北朝鮮の核放棄を実現できる」との考えで2人は一致。中国が反発するTHAAD問題を話し合う代表団派遣を打診した文に、中国は歓迎の意を示した。同10日の文との電話で、トランプは北朝鮮問題より先に米韓FTAの再交渉を切り出した。中国にも配慮する文に、米中のどちらをとるかを迫る踏み絵だった可能性がある。米中が北朝鮮と朝鮮半島の将来を頭越しで決める“韓国パッシング”を、文は恐れる。対北朝鮮軍事作戦も、電撃的な米朝和解も、韓国に望ましくない。「北朝鮮と活発に対話していれば、アメリカも中国も韓国を無視できなくなる」と信じる。ミサイル発射後、文は北朝鮮への“断固たる対応”を命じつつ、「対話の可能性を開いている」と語った。韓国政府の声明も、「対話の道に出てくることをもう一度促す」。“制裁”や“懲罰”の文字が消えた。韓国が“文カラー”に染まりつつある。「最早、我々が主導しなければならない」と意気込む文。米中等周辺の大国の利害を調整して自らの外交力を強化する理念は、盟友の元大統領・盧武鉉(※故人)が目指しながらも挫折した“バランサー論”に通じる。文外交が危うさを孕みながら、日米を揺さぶり始めている。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年5月17日付掲載⦿
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