作家・石丸元章が閉鎖病棟で見た“裸のASKA”――日本を代表するミュージシャンは薬物依存治療中に何を想い、何をしていたのか?

2016年11月25日、覚醒剤取締法違反で2度目の逮捕となった『CHAGE and ASKA』のASKA(59)。結果は不起訴となったが、被害妄想に取り憑かれたかのような言動が大きくクローズアップされた。「“ギフハブ”という組織に監視されている…」。ASKAはおかしくなってしまったのだろうか? 2014年の1度目の逮捕後、ASKAと閉鎖病棟で共に過ごしていた作家の石丸元章氏が、ASKAの知られざる素顔を明かしてくれた。 (聞き手・構成/フリーライター 曼荼羅夢)

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私がASKAさんと最初に会ったのは、依存症治療の閉鎖病棟です。初めてASKAさんを見て思ったのは、“誇らしい”ということです。ASKAさんは一流の人なので、治療を受けるなら一流の病院に来る筈です。そうしたら、私たちのいた病院にいらしたので、私だけでなく皆が誇らしい気持ちになりました(笑)。監獄で言えばアルカトラス。刑務所で言えば網走刑務所。「私たちは一流の場所にいるんだ」と思った訳です。病院のカテゴリとしては精神病院になります。その中でも閉鎖病棟。何重にも鍵が閉まっていて、窓には鉄格子、中庭にはフェンス。上には監視レーダーもある。そんな閉鎖病棟で、ASKAさんと共に治療生活を送りました。メインに受けたのは、“条件反射制御法”という新しい治療プログラムです。ファーストコンタクトは私からの挨拶でした。すると、「あぁ、石丸さんの本、読んでいますよ」と言ってくれました。私は感激したのと同時に、「私の本をASKAさんが読んでいたらダメでしょう?」と思う訳ですよね。でも、言ってしまう。とても正直な方だと思いました。それ以降、ASKAさんには入院仲間として良くして頂きました。本心では話しかけられるのは嫌だったかもしれませんが、ASKAさんは他の入院患者とも一緒に生活し、とても馴染んでいました。ASKAさんは、シンプルなジャージーでずっと過ごしていました。多分、オンオフがはっきりしているのでしょう。服装からも、飾らない議虚な人柄が窺えました。

毎朝、ご飯を向かい合わせで食べていましたが、あの方はテレビで見せるような饒舌な人ではなくて、どちらかというと寡黙で、心の内で色んなことを考えているタイプでした。2ヵ月生活を共にして感じたASKAさんの素顔は、真面目でありアーティストである。これに尽きます。ASKAさんのことは、一般層にウケている普通のポピュラリティーのあるポップミュージシャンくらいにしか思っていませんでしたが、接してみると、ASKAさん自身は紛れもないアーティストの特異性を持っていることがわかってきました。例えば、こんなエピソードがあります。食事は病院食ですから、当然、美味しくない。量も少ない。私はASKAさんに問いかけました。「コンサートで全国津々浦々の美味しいものを食べてきただろうから、病院の食事っていうのはうんざりするんじゃないですか?」と。そうしたら、「そんなことないんだよ、石丸さん。確かに、一番最高のものをご馳走になってきたけど、それは僕が『食べたい』と求めた訳じゃなくて、招待してくれた人が『どうぞ』ってくれたから美味しく頂いただけで、病院も同じなんだよ」って答えて下さった。つまり、「病院食も『どうぞ』と出してくれているのだから、美味しく頂かなきゃダメだ」と言っている訳です。最早、文学の領域です。その時に、「真面目だけど変わっている。そして、如何にもアーティストだな」と感服したのです。他にも、ASKAさんのふとした発言に、はっとされられることが多々ありました。ASKAさんは、「社会復帰するのは当たり前のことで、迷惑かけたこともよくわかっている。音楽で恩を返すしかないんだ」と何度も語ってくれました。ASKAさんはポップミュージシャンではなく、自分の頭で考え、自分の言葉で喋るアーティストなのです。ポップミュージシャンではなくアーティストなのだから、ASKAさんがドラッグで捕まったというのは、寧ろ正統派と思えてきます。“チャゲアス=J POP”と思うとドラッグは遠い存在に感じますが、アーティストとして考えたらドラッグは近くても不思議ではありません。今のASKAさんの世間一般的なイメージは、「ドラッグやっている人! 汚れている人! 荒んでいる人!」。でも、そうではなくて、本当に真面目で音楽の才能があるアーティストで、且つドラッグと両立できる人というのが正しい認識だと思います。ASKAさんがアーティストであるエピソードをもう1つ。病院では色んな療法がありますが、絵を描いたりパズルをしたりする作業療法の時に、ASKAさんだけは詩を書いていらした。その時に一悶着あって、作業療法士の先生が「ASKAさん、ポエムは社会復帰してからやればいいことであって、ここでは療養の仕方に沿って作業して下さい」って言われていたんですが、ASKAさんはそこは絶対に譲らなかったんです。「出てから自分は創作活動をしなくてはならないから、今からその準備をするんだ」と、頑なに詩を書き続けていました。病棟内では先生に従ったほうが絶対に得にも拘わらず、です。結局、その件に関しては作業療法士の先生が折れた。だって、ASKAさんですからね(笑)。

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一方で、世間が信じられない状態は妄想の領域かもしれません。ブログに書かれた「世間に監視されている」というような状態のことです。これを“突飛な妄想”と呼ぶことにします。混濁した“突飛な妄想”は、自ら作った迷宮のようなもので、自力で抜け出すのは困難です。しかし、ここでもASKAさんの根底にあるのは、“真面目”というキーワードなのです。そこを見逃してはいけません。「尿検査でお茶を提出したのに逮捕されるのはおかしい」とブログで訴えたASKAさんの動機は、恐らくこうです。「自分に対して行われた不正義というのは、他の人にも行われている筈だ。それを世間に知らしめなくてはいけない」。しかし、それが“突飛な妄想”か現実なのかは誰もわからない。そこをワイドショーに面白おかしく取り上げられてしまった。ASKAさんを見世物として笑うのは簡単ですが、ASKAさんの主張が彼の真面目な性格に起因していることを見落としています。真面目なアーティストであるASKAさんが、不正義を世間に知らしめるべく行動しているとするならば、彼の行動がおかしいと言い切れません。「抑々、無実なのに尿検査でお茶を提出したASKAはおかしい」との声もあります。あれもASKAさんがアーティストだと知っていれば、全く違和感がありません。世間やテレビは「ASKA、また逮捕!」で総叩きだったのに、それを一瞬でひっくり返しましたよね。怒った人もいたでしょうけど、「警察を手玉に取って痛快だ」と思った人も多くいると思います。これは反体制的なアーティストの姿勢と言いますか、突然、天地がひっくり返ることの面白さ・爽快感がありました。たったお茶ひとつで、自分の無実をいとも簡単に広めてしまうのです。単に無実を主張しただけでは広く伝わらない。まさに、アーティストの表現方法ですよね。2008年の酒井法子さん逮捕の段階では、「ドラッグは依存性という病気だ」と言った人は誰もいませんでした。しかし、今回のASKAさんの事件辺りから、自分も言い始めているのですが、「ドラッグ犯は薬物依存症という歴とした病気なんだ」という認識が広がりました。これからは、欧米社会のように議論が成熟していくと思います。「法規に違反はしているが、これは個人が抱える問題だから、いらぬ好奇心を周りが持つ必要はないんだ」と。そうなれば、依存症に苦しむ人がメディアの玩具になる事態は起きません。

しかし、今は議論が始まったばかりなので、ワーワー起きるのは仕方ありません。特にテレビは過剰報道になっていたのですが、過渡期だからそれも当然。「ASKAさんは被害妄想だから」というのは、その揺れ幅の中で生じてくる意見であって、自分はそれでいいと思います。そして、議論を盛り上げる為に自分もテレビに出演したんです。放送メディアは公共の電波ですから、その中で稼いで生きている人が議論の対象になった場合は、甘んじて受けるべきだとも思います。勿論、当事者もその議論に参加していいのです。社会が成熟していく為に、問題になるくらいの報道が、日本には未だ必要です。ここ10年で、薬物報道の在り方が随分変わりました。今後10年でもっと変わりますから、その為には大騒動が起きなければ変わらないのです。自分が「この過剰報道があって良かった」と思っているのは、それが未来に生きてくるからです。社会規範・モラル基準というものは、議論の末に生まれてくるのです。話をASKAさんに戻します。メディアからの総叩きを不起訴で一気にひっくり返し、今や世間を味方につけています。『テレビ西日本』の音楽番組にも出演しました。音楽活動も再開しています。新曲『FUKUOKA』も、「この音楽は底なしに凄い!」と思いました。次元を超えて出ているようなうねり声は、トロンプルイユ(騙し絵)に匹敵する異世界感覚があります。新しいドラッグミュージックと言えるかもしれません。世間の想像するドラッグミュージックと明らかに違いますから。且つ、生まれ故郷の土地を題名にした、とてもイノセントな曲でもあります。ドラッグをやっていることと心が汚れていることは別問題なのです。ASKAさんは、今回の騒動を通して唯一無二のアーティストになりました。更に、自分の意見を世間にガンガン言えるポジションも手に入れた。今のASKAさんは、「この部分は文章で表す。この部分は音楽でイノセントに表す」と、全て自己プロデュースで戦っています。兎に角、今のASKAさんは格好いい。応援しています。私は、“妄想について考える”みたいな本を出します。ASKAさんを1つのテキストとして。私は妄想を否定しません。「突飛な妄想の迷宮に迷う体験は、現代社会で迷子にならず生きる為の有効な手がかりになるのでは?」と考えています。薬物依存の議論がやっと生まれたこのタイミングで、違う角度からの意見を提示していきます。そして、人間の頭の中から湧いてくる発想を、「これは異常」「あれは正常」と分ける意味のない時代になってきています。『ウィキリークス』や『アノニマス』といったハッカー集団、更にテクノロジーの進化により、現実とは思えない世界の実像が明らかになってきました。嘗ての妄想に現実社会が追いついてしまったのです。また、少なくない人がカルト宗教にハマり、幼児が教育勅語を叫んでいたりもします。これは並々ならぬ妄者ぶりなわけです。最早、“突飛な妄想”は社会のマジョリティーです。そう考えると、改めてASKAさんは凄いです。メタンフェタミン(覚醒剤)を使わずに妄想ができているのですから。私の説ですが、「ASKAさんは体内でメタンフェタミンを作る能力がある」と思っているんですよ。ASKAさんが若し体内でメタンフェタミンを自己生産できるなら、ドラッグは必要ありません。今後も薬物を断ち切れると思います。


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