【ここがヘンだよ日本の薬局】(02) ジェネリック医薬品に潜む国と薬局の思惑

調剤薬局へ行くと、「ジェネリックにしますか?」と聞かれる。通常の医薬品と同等の成分で薬代を抑えられる為、ついそちらを選んでしまう人が多い。国がジェネリック医薬品を推進する背景には、膨らみ続ける医療費の抑制がある。そして、調剤薬局もその恩恵を受けているようだ。 (取材・文/フリーライター 青木康洋)

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“2025年問題”という言葉をご存知だろうか? 凡そ800万人に上る“団塊の世代”が、この年一斉に75歳を迎える。我が国建国以来の人口ボリュームが一挙に後期高齢者の仲間入りを果たすことで、医療費が未曾有の領域に達することを指した用語だ。厚生労働省の発表によれば、2014年度の国民医療費は40兆8000億円。これが2025年度には55兆円にまで膨らむと予想されている。医療費抑制は我が国喫緊の課題であり、その為の切り札の1つにジェネリック医薬品の普及促進策がある。ところで、ジェネリック医薬品とは抑々何か? 医療用薬品には、同じ成分で同じ効き目でも高値の薬(※先発医薬品)と、安値の薬(※後発医薬品)とがある。このうち、後発品のことを一般にジェネリック医薬品と呼ぶ。先発薬は、新しい効能や効果を持ち、臨床試験等でその有効性や安全性が確認され、承認された医薬品で、特許によって守られている。ジェネリック医薬品とは、先発薬の特許が切れた後に販売され、先発薬と同じ有効成分、同じ効能や効果を持つとされる医薬品のことだ。通常、医薬品の新規開発には多額の費用がかかる。研究開始から承認の取得までに15年近くを要することもある上、開発成功の確率も低い。開発途中で断念したケースも含めると、「1成分当たりの開発費用は1000億円を超える」という試算もある。2011年度の製薬会社の売上高における研究開発費用比率は凡そ12%で、これは製造業全体の4%を大きく上回る数値だ。しかし、ジェネリック医薬品の場合、特許切れの成分を扱う為、開発プロセスを省略できることが製薬会社には大きなメリット。先発薬と違って、小規模の臨床試験を受けるだけで済む上、承認を得る為の審査が簡素化されているので、研究開発費は数千万円程度に抑えられる。開発年数も3~5年程度で済む。

こういった事情から、厚生労働省は膨れ上がる一方の医療費抑制の為、ジェネリック医薬品の使用促進を進めている。同省の塩崎恭久大臣は、2015年6月の経済財政諮問会議の席上で、「ジェネリックのシェア目標を2020年度に80%超にする」と表明した。2015年9月時点での日本国内のジェネリック普及率が56.2%に留まっていることを考えれば、かなり強気の発言と言えよう。薬代が保険でカバーされる日本とは違って、全額自己負担が多い諸外国では、患者が薬価に敏感にならざるを得ないという事情は確かにある。しかし、欧米諸国のジェネリック普及率が60~90%であることと比べれば、我が国の普及率は未だ低い。何れにしても、今後も医療費が国家財政を圧迫し続けることは間違いない。財務省も、「特許切れの新薬をジェネリック医薬品に切り替えることで、年間1.5兆円の医療費を減らせる」としている。このような流れの中、2016年4月の調剤報酬改定で、薬局にジェネリック医薬品への切り替えを促す為、調剤報酬点数が見直された。従来はジェネリック医薬品の調剤割合が55%以上で18点、65%以上で22点という基準だったが、65%以上で18点、75%以上で22点へと其々変更されたのである。この基準を満たした薬局は、“後発医薬品調剤体制加算”を国に申請することができる。薬局が患者にジェネリック医薬品を勧める背景には、こうした国による強硬なプッシュがあったのだ。同一成分の製品でも薬価が低く抑えられるので、患者の薬代は下がり、国の保険料も安く済む。結果、医療費の削減に繋がるとされるジェネリック医薬品。一見、いいこと尽くめのようにも見えるが、安易な普及に警鐘を鳴らす専門家は少なくない。最も注意が必要なのは、「ジェネリック医薬品と特許が切れた先発医薬品は、完全に同じ薬ではない」という点だ。ジェネリック医薬品を製造・販売する為には、先発医薬品が持っている特許の内、物質に与えられる“物質特許”と、特定の物質に対する新しい効能に与えられる“用途特許”の2つの特許が切れている必要がある。しかし、薬の特許にはそれ以外にも、物質の新しい製造方法に与えられる“製法特許”や、調剤する上での工夫に与えられる“製剤特許”等があり、物質特許と用途特許が切れていても、後述の2つの特許が切れていないケースがある。製法特許や製剤特許の申請は、商品化が進む中で出願することが多いからだ。つまりは、特許にタイムラグがあるということ。製法特許が切れていないうちに開発されたジェネリック医薬品は、薬のコーティング部分に使用される添加物等を先発医薬品と同じにすることはできない。「飲み薬の場合、同じ成分が入っていても、添加物の種類や薬の剤形が変わるだけで、体内での吸収速度や有効成分が分解される状態が異なってしまいます。薬の作用そのものが大きく変わり、先発薬に比べて全く効かなかったり、反対に過剰に効き目が現れる場合が考えられるのです」。こう語るのは、東京都内でクリニックを営む開業医である。仮に全ての特許が切れた先発薬のジェネリック医薬品だとしても、製造法の細部まで明らかにはされないので、“完全に同一の薬”とは言えないという。

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同じ薬を服用しても、個人によって効き目が違うことは珍しくない。同成分を謳っている薬でも、ジェネリック医薬品が合う患者もいれば、先発薬でないと効かない患者もいるのである。厚労省は、ジェネリック医薬品を先発楽と“同等”と説明している。“同一”ではなく“同等”という部分には、注意を要するだろう。品質の面でジェネリック医薬品を危惧する声もある。先発薬を製造するメーカーの工場では品質管理が厳格に実施されているが、ジェネリック医薬品を製造するメーカーには、コストカットの為に中国・インド・韓国等から“原薬”を調達しているところがある。しかし、こうした国々の原薬には、鉄屑や虫の死骸が混入していたケースが報告されたこともあるのだ。例えば、インド最大の製薬会社『ランバクシーラボラトリーズ』は、2012年にガラス片の混入事故を起こし、出荷していた48万個のボトルを自主回収せざるを得ない状況に追い込まれた。また、同社は原薬の試験結果を改竄していた事実も明るみに出ている。更に、米紙等の報道によれば、同社の工場内研究室では数えきれない程の蝿が飛んでいたというから、驚く他はない。また、中国でも2012年、薬品メーカーが抗生物質の材料に排油を再利用した地溝油を使用していたことが発覚して、大問題になったことがある。冒頭で述べたように、2025年問題を見据えた政府は、医療費削減に躍起である。都内の某病院には、ある健康保険組合から「ジェネリック医薬品に切り替えれば、これだけ薬代を節約できます」というシミュレーション通知が送られてきたという。国がジェネリック医薬品の普及を進める事情はよくわかる。しかし、使用する患者としては、“安かろう悪かろう”のリスクが存在することを肝に銘じるべきである。勿論、調剤薬局も、十分に安全性が確かめられたジェネリック医薬品を扱わなければならない。薬局が薬害のリスクに無頓着になり、ジェネリック医薬品による儲け主義に走らないことを祈るばかりだ。


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