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【佐藤祥子の「力士、燃ゆ」】(33) 熱海富士(伊勢ヶ濱部屋)――ピュアなスマイルで大人気! 秋場所の立役者が今、やりたいこと

9月秋場所を盛り上げる立役者となったのは、前頭十五枚目ながら優勝決定戦に臨んだ熱海富士だ。昨年11月の九州場所で新入幕するも大敗し、幕内の壁に跳ね返されての再入幕。21歳の気鋭は1日80番もの稽古を重ね、先の7月名古屋場所では十両優勝、満を持して幕内の土俵に戻って来たのだった。横綱の照ノ富士が休場し、カド番大関の霧島、新大関として土俵に上がった豊昇龍らの成績が今ひとつ振るわなかった中、単独トップの成績で優勝戦線を走った熱海富士。しかし、千秋楽に朝乃山に惜敗し、大関の貴景勝に並ばれる。優勝決定戦では大関の変化に対応できず、土俵にばったりと手を付いた。最速優勝記録を更新するか、と注目を浴びた中、賜杯を目前で逃し、逆転優勝を許してしまったのだ。報道陣に囲まれた熱海富士は涙を堪えながら、消え入るような声で呟いた。「勝ちたかったです…。もっと出足が早かったら対応できると、部屋の稽古でも言われていたのに、稽古が足らないですね。目の前に(優勝が)あったんですけど、本割も決定戦も…悔しいです」。喜怒哀楽が一挙手一投足に滲み出る。一度勝てば、目が一本の水平線になる程の満面の笑みを見せ、負ければ涙を隠さない。取組後のファンサービスも丁寧で、国技館の出口に辿り着くまでに30分以上も掛かる程。186㎝・181㎏の大きな体ながら、その無邪気で無垢な姿が大人気なのだ。初めての三賞受賞となったものの、手放しには喜べない。「悔しいのはわかるけど、ちょっと笑ってくれるかな?」とのカメラマンの要望にも“熱海富士スマイル”は見えず。作り笑いができずに、何ともぎこちない表情を浮かべるピュアな21歳なのだった。今場所の快進撃に、地元の静岡県熱海市は沸きに沸いた。閑散とした支度部屋で、帰り支度をする熱海富士に尋ねてみる。「今、一番やりたいことは何?」「場所後の休み、地元に帰りたいです。温泉に入って美味しいもの食べて…。今場所はいつもより長かったです…」「そうよね。ゆっくり休んで来てね」「はいっ!」。“熱海富士スマイル”が一瞬戻った。


佐藤祥子(さとう・しょうこ) 相撲ライター。日本相撲協会認定・相撲健康体操指導員。1967年生まれ。週刊誌記者を経て、1993年からフリーに。著書に『相撲部屋ちゃんこ百景』(河出書房新社)・『知られざる大鵬』(集英社)等。


キャプチャ  2023年11月号掲載
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テーマ : 大相撲
ジャンル : スポーツ

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