【貧困女子のリアル】(16) 「大マスコミの劣化は国民に不利益を与えている」――中村淳彦氏(ノンフィクションライター)インタビュー

20170523 08
今、日本の貧困は、相当ヤバいレベルに達しようとしている。にも拘わらず、大半の人はその深刻な事態に気付かず、まるで他人事のようにのほほんとしている。それ以上にヤバいのは、自分たちがいつ貧困状態に陥るかもしれないのに、貧困問題など怠け者の戯言ぐらいにしか考えていないことであろう。そんな危機感の無い人間を作り出しているのが、テレビや全国紙といった大手マスコミである。マス(大衆)を扱うメディア自体が日本の“貧困”を全く理解せず、見当違いな報道を繰り返し、国民の多くを勘違いさせているのだ。どれほど大手マスコミが“役立たず”、いや“害悪”になっているのか。それを象徴する出来事が、2016年の夏に大炎上した貧困女子高生報道だろう。同年8月18日、『NHKニュース7』(NHK総合テレビ)で報じられた“子どもの貧困特集”で、同番組は「お金が無くてパソコンを買えず、キーボードだけ買って練習している」という女子高生を、貧しさを強調して取り上げた。ところが、放送直後から、彼女はアルバイトもしていて、好きなアニメグッズ等を買っていたことが判明。「どこが貧困なのか」と大炎上した。NHKのスタッフは彼女の自室で取材していた。彼女の家庭が“食うに困る”極貧ではないことくらい、アホでもわかる。抑々、彼女が“貧困”として主張していたのは、「好きなアニメの仕事に就きたいけど、専門学校に通う学費が捻出できない」ことだった。現状、希望する職業に就くには、専門的且つ高度な教育を受けなければ、スタート地点にすら立てない。“夢や希望”はカネで買う状況になっていること、「カネが無い貧乏人は“夢”を見ないで黙って低賃金で働け」という実情に、彼女は「何とかならないか?」と訴えていた。

別に“貧乏あるある”など喋る気は無かっただろうし、意味も無い。寧ろ、普通に生活できる家庭の子供でも、ちょっとした夢すら望めなくなっている現状を、“今の新しいタイプの貧困”として彼女は伝えようとしていた。そんな彼女の真摯な訴えを、NHKのプロデューサーは全く理解できなかった。“貧困=貧乏臭いネタ”と安直に考え、彼女に強要でもしたのだろう。一介の女子高生が、お偉いNHKの記者様と取材クルーを前に反論できる訳もなく、結果として嘘を吐いた。こうして彼女はインターネット上で大炎上し、夏休み後も学校に戻ることもできず、このままでは退学するところまで追い詰められている。彼女をNHKに紹介したNGO団体『かながわ子ども貧困対策会議』も怒り心頭で、今後、取材に協力することはあるまい。何より、この騒動で多くの人は、「やっぱり貧困ネタは嘘ばかり」「話を大袈裟に盛っているだけ」と考えてしまう。却って貧困問題の深刻さを遠ざけてしまったのだ。取材に協力してテレビの前で嘘まで強要された女子高生は退学寸前なのに、NHKの記者はお咎め無し。広報を通じて、「取材には自信がある」と切り捨てている。皆さまの受信料で成り立つ公共報道にあるまじき“犯罪行為”と言いたくなる。私が貧困をテーマにするようになったのは、別段、高尚な志があってのことではない。私のフィールドワークは、エロ本業界にいた関係でAVや風俗の関係者だ。加えて一時期、ライターを辞めて介護施設を運営していたので、介護関係やその周辺に溢れるブラック企業である。こうした業種には社会的弱者が集まり易い。社会の歪みは弱いところから生まれる。現場で普通に取材すれば、豊かな筈の日本とは思えないような“貧困”の実態を目の当たりにする。故に自然と、「それが何故起こっているのか?」「どうしてこんな状況になっているのか?」と取材している。とりわけ深刻なのが風俗産業である。“好景気型”から“貧困型”に変わってきたのだ。バブル時代にだってホームレスが沢山いたように、貧しさを理由にホームレスや風俗嬢になる訳でもない。景気の良い時には、ルックスや性格に問題のある子、メンヘルみたいな子が風俗に多くなる。2000年代までは確かにそうだった。ところが、現在は違う。明らかに生活費欲しさに、“普通”の女性が働いている。普通の女性が風俗に参入すれば、それまでの“風俗でしか働けない”ワケありタイプの女性は、どんどん仕事を奪われて生活できなくなる。それが近年、話題になった“最貧困女子”の問題となる。現場で普通に取材していれば、風俗産業の大きなテーマが“貧困”なのは、よっぽどの間抜けでない限り、簡単に気がつくものなのだ。扨て、ここで大手マスコミの記者やディレクターの方々である。見事なまでに、この簡単な構図を理解できないようなのだ。

20170523 09
2016年6月以降、大手マスコミは“AVバッシング”に狂奔している。「悪質な業者が女性を騙して、無理矢理出演させる。女性の人権を無視した撮影、レイプ紛いの行為を平然と行っている」。朝日新聞を中心に、AV業界を叩きに叩いている。これは、『ヒューマンライツナウ』という女性人権団体の活動に、大手マスコミがそのまま乗っかったものだ。その証拠に、『クローズアップ現代』(NHK総合テレビ)は『私はAV出演を強要された~“普通の子”が狙われる~』(同年7月25日放送)で大々的に取り上げていた。大手マスコミの報道を見れば、大抵の人は「あぁ、AV業界には悪徳業者がいて、騙されちゃう子もいるんだ」と思うだけだろう。当然、その対策は「悪質業者を閉め出せばいい」で思考はストップする。ノリは悪徳セールスと一緒となる。――溜め息しか出ない。AVもそうだが、風俗産業の重大なテーマは、その“普通の子”が騙されている以上に、生活費欲しさに自ら働くようになった“実情”にある。朝日新聞やNHKは、皆が皆、悪徳業者に騙された被害者と思っているのだろうか? だとすれば、目が腐っているとしか言い様がない。ヒューマンライツナウの活動も大手マスコミの取材にも、当のAV女優たちが反発し、寧ろこうした人権活動や報道を拒否している。如何に内実を全く理解していないのかが、よくわかるだろう。どれほど大手マスコミの取材が酷いのか。某大手新聞社の取材を受けた風俗嬢が、こんなエピソードを教えてくれた。

取材中、時間が無くて記者と2人でタクシーに乗った際、風俗嬢が車内で話を続けたところ、大手新聞の記者は「こんなところでそんな話をすれば、お前の仲間に思われるだろうが!」と、烈火の如く彼女を怒鳴りつけたというのだ。天下のこの記者様は、「風俗嬢のような“下層民”と自分が口を利くだけありがたいと思え」と考えているのだろう。これで真面な取材ができる筈もないのだが、要は“取材した”という大義名分が欲しいだけで、話自体さらさら聞く気は無かった訳だ。そうして自分の“妄想”と“偏見”に基づき、嘘八百を大新聞で垂れ流して、一番重要な貧困問題をわかり難く、見え難くしている。「もう二度と報道するな」と言いたくなるほどだ。どうして、こんな簡単な取材もできないのか。普通に取材すれば、いくらでもネタは転がっている。それを普通に伝えるだけで、読者には有益な情報になる。何より問題なのは、大マスコミの劣化が国民に不利益を与えていることだ。最近、熟女風俗の取材をしているのだが、立て続けに、40代前後の介護職のケアマネジャー管理者(※課長や部長級)で風俗嬢をしている女性2人に当たった。私は介護施設を運営していたのでわかるが、ケアマネジャーは、介護の職業カースト的に言えば上級職である。底辺が非常勤介護スタッフ、次が実務経験3年以上の介護福祉士、そして短大や専門学校等を出て資格を取得した学卒介護福祉士、その上位に君臨するのがケアマネージャーであり、実務経験をして勉強して資格を取得しなければなれない職業だ。ところが、そんな上級職なのに、話を聞けば年収は40歳前後で300万円そこら、手取りで月20万円ちょっとらしいのだ。これでは売春に走るのも無理はない。事実、『東洋経済新報社』が発表する『30歳上場企業平均年収ワースト10』の内、介護の最大手『やまねメディカル』は何と2位に。30歳平均年収が212万円というから凄まじい。生涯賃金は、日本人平均の2億2000万円のたった半分。介護大手でさえ生活保護並の賃金なのである。介護保険の全面施行は2002年。40歳前後の彼女たちは丁度、国の方針で介護の専門家を育成しようとした第1期生となる。福祉系の大学を卒業し、介護職に就いて、手探りの中、最も過酷なケアマネジャーを必死に続けてきた人たちと言っていい。優秀な人材だし、他の職業に就いていれば、生涯賃金の平均額を得ていても不思議ではない。それが、月の手取りがたった20万円で、ボロボロになるまでコキ使われ、挙げ句の果てに風俗嬢のアルバイトまでしているのだ。

20170523 10
彼女たちが風俗で働く理由は、2人揃って「人並みの生活がしたい」だった。思わず涙が出そうになった。40歳前後となれば、エステに行ったり、海外旅行や、多少の高級ブランド品を持ったりしたところで贅沢とは言えまい。それすらできないから、“プラス月20万円”欲しさに週末、吉原のソープランドで働いていたのだ。繰り返すが、数ある将来の選択肢の中で、高校の教師に「これからは介護が有望」と唆されて、新設された福祉系大学に通い、介護福祉士の資格を取得し、長年の実務経験を経てケアマネジャーとして活躍してきた挙げ句、風俗でアルバイトしなければ“人並みの生活”ができない状況に押しやられたのだ。私に言わせれば、悪徳なのは風俗業者ではなく、“国家”である。今の貧困問題は、風俗で働かないと人並みに生活できないような政策を推し進めた“官製貧困”なのだ。ジャーナリストならば当然、ここに斬り込むべきだ。残念ながら、大手マスコミの記者様たちは「貧困と言えば“貧乏あるある”と“悪徳業者の糾弾”だろう」と信じ切り、「それが“正解”で、それ以外は“間違い”だ」と国民にふんぞり返って教えて下さっている。全く、どれほど害悪なのか、筆舌に尽くし難いほどである。私は、“頭のおかしな人”をテーマに取材してきた。エロ本業界にいた時は、未だ景気も悪くなかったこともあり、風俗嬢やAV関係者には変な人が沢山いた。その後、介護施設を経営した時、私の施設で働くスタッフの大半は何故か頭が悪くて、性格もダメで、真面なコミュニケーションを取れない人間だらけだった。そのことから、私は“中年童貞”という存在に気付いた。扨て、現在である。物凄く偉そうで、世の中をミスリードして、平然と「偉いだろ? 凄いだろ?」と胸を張る大マスコミの連中も、“頭がおかしい”レベルでは中年童貞と変わらないのではないか――。多少売れっ子になった為か、大手マスコミとの付き合いが増えた。何故か、私の周りにはいつも“頭のおかしい人”がいる。飯の種とはいえ、うんざりする日々である。 (聞き手・構成/フリーライター 西本頑司) =おわり


キャプチャ  キャプチャ
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

風俗嬢の見えない孤立 [ 角間惇一郎 ]
価格:799円(税込、送料無料) (2017/5/22時点)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

世界から格差がなくならない本当の理由 (SB新書) [ 池上 彰 ]
価格:864円(税込、送料無料) (2017/5/22時点)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

貧困と地域 [ 白波瀬達也 ]
価格:864円(税込、送料無料) (2017/5/22時点)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

貧困クライシス [ 藤田孝典 ]
価格:972円(税込、送料無料) (2017/5/22時点)


スポンサーサイト

テーマ : 社会問題
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR