【ナゾノミクス】(05) GDP、“ほどほど成長”は悪い?

20170524 01
先月23日、高級商業施設『GINZA SIX』が開業して最初の週末を迎えた。『ジミーチュウ』や『マノロブラニク』等、有名ブランドの前はどこも行列だ。しかし、訪れた27歳の女性は、「買い物はしない。私にはいつもの百貨店にあるもので十分」と語った。「1番が節約、2番が貯蓄。海外旅行やテレビ、車を買うとは誰も言わない」――。『日本経済団体連合会』の榊原定征会長は、最近の若者について嘆く。ただ、“ほどほど”が悪い訳ではない。嘗て、日本が大きく成長した時代は、公害等の問題が起きた歴史もある。それでも政府は、毎年のように“成長戦略”を纏める。2016年の戦略では、「戦後最大となる名目国内総生産(GDP)600兆円の実現を目指す」と宣言した。2016年の名目GDPは537兆円。目標の2020年まで毎年3%ずつ成長する計算だ。政府が高い目標を掲げるのは、「低成長では満足いく暮らしができない人が出る」と考える為だ。例えば、1989年まで20%以下だった非正規雇用の割合は、2016年には37.5%に上昇。景気の先行きに不安を覚えた企業が、正社員の採用を控えた。

一般に、非正規は正社員より給料が少ない。給料が増えないと、財布の紐が固くなる。家計が消費に使った金額は、1994年に前年より減り、足元もマイナス傾向だ。消費の停滞は、企業の業績悪化にも繋がる。1960年代の高度経済成長期は、消費・生産者が増える“人口ボーナス”が成長の原動力だった。ところが、2008年に人口減少が始まり、今は少子高齢化が経済の足を引っ張る“人口オーナス(重荷)”。1人ひとりが現状維持では、国全体で縮んでしまう。企業にとって“魅力ある国”かどうかも大切だ。アジアでは年7%近く成長している中国だけでなく、東南アジアの各国も年5%程度成長している。これから新たな投資をする企業の視線は、成長が期待できる国に向く。投資が集まらなければ働く場が生まれず、“ほどほど”を保つことすら難しくなる。これからの日本は、どうすれば成長できるのか? 『SMBC日興証券』シニアエコノミストの宮前耕也氏は、「歴史を紐解くと、新産業が生まれた時代に経済は大きく上向いた。成熟した日本でも技術革新を進め、海外で売れるコンテンツを育てられれば、未だ成長できる」と話す。国内だけを見ると成長は難しく、「それほど成長しなくてもいい」と思えるかもしれない。一方で、企業や研究者の戦う舞台は海外に広がっている。背伸びこそ社会の活力。日本経済も成長を軸に見れば、ナゾを解く方法が見えてくる。 (石橋茉莉) =おわり


⦿日本経済新聞 2017年5月6日付掲載⦿
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