【点検トランプ政権100日】(07) 通商、貫く“アメリカ第一”

20170524 03
「協定破りが収まらないなら、協定を破棄する。わかっているな?」――。大統領のドナルド・トランプは、直ぐ後ろに立つ商務長官のウィルバー・ロスに念を押した。ロスが相槌を打つと、トランプはペンを握り、新たな大統領令にサインした。先月29日、ペンシルベニア州ハリスバーグの道具メーカーの一室。就任100日を迎えたこの日、トランプは新大統領令に基づき、貿易・投資協定に関する調査を商務省等に命じた。「協定の締結後、相手国の違反行為で、アメリカは損をしているのではないか?」。そんな疑念があるからだ。調査の目的は、トランプが口癖のように言う“不公正な貿易”の実態を洗い出し、国内に雇用を取り戻すことにある。態々大統領令という形を取ったのは、“アメリカ第一”を求めて支持した白人労働者らへのアピールと言えた。トランプの矛先は、他国だけではない。アメリカの空調大手『キャリア』には、減税措置と引き換えにメキシコへの工場移転を止めさせた。「もうメキシコの工場は、ほぼ完成しているんですよ」。親会社の経営トップは、移転中止を渋ったという。「そんなの関係ないね」。トランプは、有無を言わせず押し切った。“労働者”の目線を優先するトランプ政権の姿勢は、“消費者軽視”という矛盾も孕む。典型が、検討中とされる“国境税”だ。輸入企業の税負担を重くする“国境税”が導入されれば、輸入品を扱う企業は増税分を販売価格に転嫁せざるを得ず、必然的に値上げとなる。

打撃を被るのは一般消費者の懐だ。「1台あたり2000ドル(約22万5000円)以上の値上げに繋がる」。3月上旬、全米の自動車ディーラーたち200人以上が、ワシントンで“国境税”の反対集会を開いた。「トランプの標的になるのを恐れる海外自動車メーカーに代わって、私たちディーラーが声を上げたんだ」。『アメリカ国際自動車販売協会(AIADA)』会長のポール・リッチーは、反対集会の狙いを明かした。先月下旬に発表された税制改革案に、“国境税”は盛り込まれなかった。尤も、政権側は諦めてはいないようだ。財務長官のスティーブン・ムニューシンは今月1日、ロサンゼルスでの講演でこう語り、将来的な導入を示唆した。「アメリカが関税を課していないのに、相手国がアメリカ製品に高関税を課すなら、自由貿易とは言えない」。トランプ政権は、通商分野で“アメリカ第一”を堅持している。ただ、『通商代表部(USTR)』代表の議会承認が遅れている他、ホワイトハウス内の主導権争いもあり、「具体論は先送り」(外交筋)の政策が少なくない。「あらゆる方法でルールを破っている」と批判し、為替操作国に指定することまで示唆していた中国との関係も、対立を一先ず回避して北朝鮮への圧力強化を優先する構えだ。「中国が北朝鮮の問題を解決するなら、アメリカとの貿易は遥かに良くなる」。トランプは習近平にこう持ちかけ、“通商カード”で揺さぶりをかけた。中国は強かに応じている。先月6日、フロリダ州パームビーチにあるトランプの別荘『マール・ア・ラーゴ』に、習の姿があった。トランプと初の首脳会談を行う為だ。夕食会には、トランプの長女であるイバンカも同席した。アメリカメディアによると、同じ日、中国当局はイバンカが手がけるファッションブランドについて、中国市場での独占販売権に繋がる商標登録申請を承認した。トランプを懐柔する為とみられる。政権発足100日を経て、変質の兆しもある“アメリカ第一”はどこへ向かうのか? 神経戦は続く。 《敬称略》 (アメリカ総局 山本貴徳) =おわり


⦿読売新聞 2017年5月7日付掲載⦿
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