【霞が関2017春】(12) 内閣府が映す官邸の“怒り”…次の矛先は文科省か?

「宇宙からアル中(※アルコール依存症)まで」――。政府が抱える諸々の業務が集まる内閣府について、府内で自虐的に語られる言葉だ。安倍晋三政権は、各省庁の取り組みに不満があるテーマは、“お膝元”の内閣府や内閣官房に担わせている。内閣府の業務は増えるばかり。宇宙からアル中まで見渡す官僚の守備範囲も広がる一方だ。しかし、目を凝らしてみると、そのフィールドに官邸の“怒り”が見えてくるから面白い。内閣府が前に出てくる施策は、官邸が各省の取り組みに不満を募らせているテーマに他ならない。最近、目立ってきたのが“教育”だ。「教育の問題については、今日がキックオフである」。首相官邸4階の大会議室。人材投資がテーマとなった先月の『経済財政諮問会議』の終盤、報道陣の入室が許される前に議論を締めたのは、内閣府特命の経済財政再生担当大臣・石原伸晃氏だ。ある経済官庁の官僚は、「教育とか人材投資をテーマに会議をする流れができた」と受け止めた。官邸が教育に着目するのは何故か? 背景には人手不足がある。「少子化で働き手が少なくなる中で、1人ひとりの技能や生産性を高める教育の役割は重要だ。今の大学教育は、この課題に十分応えていない」というのが官邸の見方だ。教育行政を担当するのは文部科学省。本来、安倍首相が文科大臣に優先して取り組むよう指示すればいい話だろう。だが文科省は、事務方トップの文部科学次官まで関与した大学への天下りが問題となった。今の文科省が大学改革を進めるとしても、それに冷ややかな視線が注がれることは間違いない。教育が専門の仕事である文科省からそれを取り上げるとすれば、それだけ官邸の怒りが強いということだろう。

少し前まで内閣府で増えていたのが、厚生労働省が預かる分野の業務だ。内閣府の官僚は、「アルコール依存症の話もそうだが、『厚労省には任せてはおけない』という意識が発端だった」と解説する。『日本医師会』や労働組合等の外圧に曝されて身動きが取れず、“融通の利かない役所”という印象を持たれてきた厚労省。政府の目の届く範囲で政策を進める為に、内閣府へと業務が召し上げられていった。内閣府の所掌する施策を見渡すと、子供・子育て支援や高齢社会対策等、厚労省の領域が多い。政府の肝煎りで内閣官房に設置する会議も、『1億総活躍国民会議』や『働き方改革実現会議』と続き、厚生労働省が槍玉に挙がることが多かった。だが最近は、「塩崎恭久大臣の下で大きく変わった」という評価が増えている。「厚労省が医療や保険の情報を集約するビッグデータの活用を話し合うことなど、一昔前は誰も想像していなかった」と、厚労官僚も変化を認める。官邸からのトップダウンで話が進む為、業界団体との折衝に明け暮れていた頃と比べると表情も明るい。先月には、アルコール依存対策も厚労省に移管された。首相官邸の目の前に鎮座する合同庁舎8号館。2014年に竣工した新しい建物には内閣府と内閣官房が入り、首相官邸の指示を受けて、政策の企画立案と総合調整にあたっている。政府の重要なテーマは、府省庁の縦割りでは解消できず、調整役の出番が多くなるのは自然な流れ。案内図を見れば、宛ら仕事のデパート。内閣府の特命担当大臣は9人もいる。ただ、仕事が集まるのは、“調整役”だからという理由だけには留まらない。会議は「働き方改革等の旬のテーマを首相直轄で進める」という意図は勿論あるが、長年、中々解決策を見い出せてこなかった課題に対して、一気に螺子を巻く効果もある。長年に亘って同じ分野を所管する各省庁は、色々な柵の中で身動きが取り難いこともある。官邸の“怒り”が難しい政策課題の解決に繋がるのならば、内閣府官僚には守備範囲を更に広げてもらいたい。 (平本信敬)


⦿日本経済新聞電子版 2017年5月23日付掲載⦿
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