女性人権団体とAV業界攻防の行方は…AV出演強要疑惑の社会問題化でAV業界が消滅する日

2016年に社会問題化したAV出演強要問題から始まったAV業界への弾圧。公然わいせつのみならず、労働者派遣法違反等の名目で、関係者らの摘発が相次いだ。そして遂に先日、政府は緊急対策会議を開き、取り締まりの強化を宣言。隆盛を極めたAV業界も遂に消滅か――。 (取材・文/編集プロダクション『清談社』 常盤泰人)

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AV業界が重大な危機に瀕している。2017年3月、政府は関係省庁の局長級を集めた対策会議を開き、AV業界への“締め付け”を強化する方針を打ち出した。会議では菅義偉官房長官が、「本人の意に反してアダルトビデオへの出演を強要するのは、重大な人権侵害だ」「新たな被害者を生まない為の必要な広報・啓発・取締りの強化、そして万が一被害にあった方を支援する為の相談体制の充実を、直ちに行う必要がある」と発言。5月中旬を目途に、具体的な緊急対策を纏めることを明らかにした。「このままいけば、AV業界にとってかなり厳しい法律ができるでしょうね。勿論、AVへの出演強要はあってはならないことだし、それ自体は改善されるべきです。ただ、今の流れのままでは、『AV制作は性暴力である』として必要以上に規制がかかってしまい、業界に大打撃となる可能性は極めて高い」(AV業界関係者)。政府の緊急対策には、女子高生に性的な接客をさせる“JKビジネス”等も含まれているのだが、メインの標的は明らかにAV業界である。一体、AVの世界では何が起きているのか? 事態が動き出したのは2016年3月。引き金となったのは、国際人権NGO『ヒューマンライツナウ(HRN)』が発表した『ポルノ・アダルトビデオ産業が生み出す、女性・少女に対する人権侵害調査報告書』という1通の報告書だった。HRNは、人身売買問題やポルノ・性暴力の被害者を支援する民間団体『ポルノ被害と性暴力を考える会(PAPS)』の婦人団体と連携して、以前から女性の“性”に纏わる人権問題を扱ってきた団体だ。そしてこの報告書には、「若い女性たちがAVに出演するという意識がないままプロダクションと契約を締結した途端、『契約だから仕事を拒絶できない』『仕事を断れば違約金』『親にばらす』等と脅され、AV出演を余儀なくされる事例が後を絶たないことが判明した」という内容が記されていた。

HRNが報告書を出す大きなきっかけとなったのは、あるAVプロダクションが女子大生に対して2460万円の損害賠償を求めて提訴したという裁判だ。プライバシー保護の観点から、当事者の詳細は明らかにされていないが、訴えられた女子大生のKさんは、未だ高校生だった時にプロダクションにスカウトされ、直ぐに“営業委託契約”なる契約書にサインさせられている。契約の3ヵ月後には、着エロ系と思われるビデオ撮影が行われた。Kさんはここで「仕事を辞めさせてほしい」と申し入れたが、プロダクション側は契約を楯に受け入れず、その後もずるずると同様の撮影を強要。ビデオは発売されたものの、Kさんにギャラは支払われなかった。更に、Kさんが20歳になると、プロダクションはAVへの出演を強要。断ったものの、又もや「ここで辞めれば違約金は100万円」と脅され、泣く泣く1本に出演したが、限界となったKさんは再度、契約解除を申し入れる。すると今度は、「違約金は1000万円」「あと9本AVの撮影をしたら、違約金は発生しない」と拒絶。更に、メールによる脅しや、最寄り駅周辺や自宅にまで押しかけてきたという。それでも尚、拒絶を続けたところ、Kさんに対してプロダクション側が損害賠償請求の訴訟を起こしてきたのだ。「AVプロダクションとKさんの契約では、10本の作品へ出演することになっていたそうです。2460万円という金額のおおまかな内訳は、撮影済みの1本分が発売できなくなった損害等に加え、残りの9本分の違約金が1本200万円ということでした」(週刊誌記者)。但し、この裁判は2015年、「AV出演の契約は無効」という判決が下っている。この間、Kさんを支援してきた民間団体の1つがHRNで、同団体の事務局長でもある伊藤和子弁護士が、この裁判をインターネット等で紹介したこともあって、“AV出演強要問題”は広く知られ、社会問題化していったのだ。尤も、この種のトラブル自体は、AV業界では過去に幾度となく起きていたものである。その為、当初のAV業界の現場の反応は驚くほど鈍かった。「殆どの関係者は、『またフェミニスト団体が騒いでいるな』という感覚でバカにしていましたね。『無視していればそのうち消えるだろう』と。プロダクションが態々訴訟まで起こしたのはやり過ぎにしても、根本的に何が悪いのかを理解できていなかった」(前出のAV業界関係者)。確かに、これまでならそれでよかったのだろう。過去にも、AV女優や素人女性に対する強姦致傷事件で逮捕された2006年のバッキー事件のような事件が起きる度に批判は噴出したが、あくまで“一部の悪質な会社が起こしたこと”として、業界の構造に影響が及ぶことはなかった。だが、裁判で「契約過程に問題があったAV出演契約は無効」という判例が出た意味は、業界の想像よりも遥かに重いものだった。報告書をきっかけに、ほしのあすか・くるみんアロマといった同様の被害を告発するAV女優が続出。香西咲は『週刊文春』で、脅迫・洗脳・囲い込みの実態を告発した。同時に、HRNらの団体は国会議員や政党に対するロビー活動を活発化。公明党の協力を取り付ける等、着実にAV業界を追い詰めていった。こうした動きを受けて、現実にも大きなうねりが巻き起こっていく。

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報告書が発表された3ヵ月後の同年6月には、AVプロダクション大手『マークスジャパン』の元社長ら3人が、労働者派遣法違反の疑いで逮捕・起訴された。警視庁は、同社のグループ会社『ファイブプロモーション』や、AVメーカーの『CA』、メーカー兼制作会社の『ピエロ』にも家宅捜索に入っている。この事件で業界を驚かせたのは、逮捕容疑が猥褻関連のものではなく、異例とも言える労働者派遣法違反(有害業務就労目的派遣)だったことだ。「マークスの女優が『AV出演を強いられた』『出演同意書は事前にきちんとした説明が無く無効で、出演は強制された』と警視庁に相談したことで事件化したのですが、問題は作品の内容ではなく、出演した女優を“有害危険業務”に就かせる目的でAVメーカーに派遣したというもの。逮捕された3人は罰金刑となりましたが、これが有罪になるのであれば、現在の殆ど全てのプロダクションが違法ということになってしまう」(AVプロダクション関係者)。続く7月には、神奈川県内にあるキャンプ場でアダルトビデオの撮影を行ったとして、女優・カメラマン・プロダクション関係者等52人が公然わいせつの疑いで摘発され、書類送検された。尤も、この事件では「撮影はキャンプ場を貸し切りにしており、公然わいせつには該当しない」として、逮捕者全員が不起訴となっている。それでも、一度動き出した流れは止まらない。2017年1月には、マークスの事件でも家宅捜索が入ったピエロの社長ら6人が逮捕されている。容疑は、アダルト動画の配信で知られる『カリビアンコム』に無修正動画を提供したという“わいせつ電磁的記録等送信頒布”で、結果、社長が起訴されている(※他の5人は処分保留で釈放)。「スカウトや女優のギャラ、それにインターネットでの違法配信等、業界が抱えるグレーゾーンが一気に炙り出されているような状況です。このままでは、どの会社が摘発されてもおかしくない」(前出のAV業界関係者)。

相次ぐ業界の摘発に対し、報告書には殆ど反応しなかったAV業界内部からも、流石に反発の声が相次いだ。特に、2016年6月のマークス摘発の事件では、蒼井そら・天使もえ・霜月るな・丘咲エミリ・希島あいり・初美沙希といった有名AV女優たちが、『ツイッター』等で一斉に異議を唱えた。例えば、丘咲は「てゆーか! 無理やりAV出演とか、いつの時代の話ですかー? なりたくてもなれない女の子もいるってーのに アホくさ そもそも無理やりやる仕事ぢゃないし」と呟き、強い反発を表明している。しかし、彼女たちがそうではないからといって、「業界全てが健全で被害者などいない」とはならないだろう。全体のトップ5%程度しかいないと言われる売れっ子女優は、金銭面や待遇もかなり恵まれている。また、現在のAV女優は、7割近くが自分から応募しているという事実もある。しかし、問題はそうではないケースの女性たちなのだ。更に言えば、業界の実態を誰よりもよく知るであろうAVプロダクションやメーカーから、“出演強要”に対する反論が殆ど聞こえてこないのである。「本来なら、業界が結束して反論なり改善策なりをアピールするべきところでしょうが、抑々、AV業界は殆どが零細企業の集まりな上、現在のAV業界を代表する大手であるDMMの亀山敬司会長や、ソフトオンデマンド(SOD)の実質的トップである高橋がなりさんも、完全に逃げ腰ですからね。SOD等は、AV強要の取材申し込みに返事すらしないで、無視していたそうです。これでは、業界の意思統一など望むべくもありません」(AVメーカー関係者)。DMMは、既に傘下のメーカーであるCAを売却しており、アダルト配信事業を本体から切り離す準備を進めているとも言われている。そんな状況の中、HRNの報告書が発表された当初から、先頭に立ってAV業界の主張を代弁する論陣を張ったのが、元AV女優の川奈まり子である。川奈は2004年にAVを引退し、現在は作家として活動している。夫はカリスマ監督の溜池ゴローで、夫婦共著で『溜池家の流儀 AV夫婦の仲良し㊙夫婦生活』(双葉社)というAV業界の素晴らしさをアピールする本を出す等、AV業界への愛着は人一倍強い。「AVは彼女の人生そのものですからね。兎に角、この業界で働いていたという誇りが強く、自分のSNSで小学生の息子の顔出しまでしているほどです」(前出の週刊誌記者)。だからこそ川奈は、HRNの主張に異議を唱えたのだろう。しかし、あまりに強いAV愛故か、その発言は時にHRN側の体質を批判したり、「AVは性の解放であり、表現活動だ」という思想論になり、“AV強要”の論点からズレることも多かった。こうした川奈の発言が、結果的にHRN側とAV業界側との対立を強めてしまった側面は否定できない。双方とも“出演強要はあってはならないこと”という点では一致していたにも拘わらず、業界を擁護するあまり、話し合いの場すら作れず、無用な混乱を招いてしまったのだ。

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しかもそんな最中、川奈の自慢の夫である溜池ゴローが、AV女優の瀧本梨絵から「撮影現場で事前に聞いていなかったハメ撮りを強要された」と告発される事態も起きている。AVの撮影現場では、事前に内容を細かく打ち合わせするケースは稀で、現場での監督裁量に任されることが殆どだ。その為、溜池だけが特別という訳ではないのだが、何れにしても、これでは社会がどちらの言い分に耳を傾けるかは明らかだろう。「抑々、業界の人間にとって“出演強要”とは、現場に無理矢理連れていき、殴って強姦するレベルという感覚で、流石に今の業界では殆どありません。しかし、HRN側の主張は、よく内容もわからないまま女の子を現場に呼んで撮影してしまったり、モデルやチャットレディーのような別業種の名前で募集した女の子をAVに勧誘するような行為も“強要”だというものです。だからこそ、業界側は戸惑い、反発もしたんですが、この食い違いが対応の遅れとなり、国がHRN側の主張を全面的に受け入れてしまう結果を招いてしまった」(前出のAV業界関係者)。川奈は昨年7月、AV女優等の出演者を支援し、業界内部から健全化を促す団体『一般社団法人 表現者ネットワーク(AVAN)』を設立しており、2017年4月から本格稼動し、女優の人権に配慮した統一契約書の作成等を行う予定だという。しかし、大手メーカーやプロダクションに動きが見えない以上、これだけでは不十分なことは火を見るより明らかだ。このままでは、AV業界に厳しい国の規制がかかるのは時間の問題だろう。「例えば、所謂“本番行為”はダメになるでしょうし、女優側が希望すれば作品の回収を義務付けられる可能性も高い。そうなれば、殆どの会社がやっていけなくなるでしょうね」(同)。大きな岐路に立たされているAV業界。果たして、どんな選択をするのだろうか?


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