【ニッポン未解決事件ファイル】(19) 『赤報隊事件』(1987)――犯行予告が次々と一致! どうしても忘れられない“自称”赤報隊からの電話

記者2名が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件。『赤報隊』を名乗る犯人は、1987~1990年にかけて、『朝日新聞』を主な標的としたテロ活動を起こし、反米・右翼的な思想を犯行声明文で表明した。これら『赤報隊事件』で最重要の“容疑者”とされたのが、当時、新右翼団体『一水会』の会長だった鈴木邦男氏だ。事件から29年、鈴木氏が禁断の告白をする――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小川寛大)

20170526 03

1987年5月3日に起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件。同支局に侵入した黒い目出し帽の男が、勤務中の記者たちに散弾銃を発射し、1人が死亡、1人が重傷という結果を招いたテロ事件である。事件直後、犯人は赤報隊と名乗って犯行声明を発表。それは、「すべての朝日社員に死刑を言いわたす」「反日分子には極刑あるのみである」という激烈な調子を伴った一文だった。警察は主に右翼グループを犯人と見定めて捜査を展開したが、2003年3月に全ての関連事件を含めて時効が成立。犯人は未だわからないままである。この事件の発生直後より、警察から“最重要の捜査ターゲット”として狙われていたのが、当時、新右翼団体『一水会』の会長を務めていた鈴木邦男氏(※現在は作家・評論家)である。鈴木氏は当時の状況を、こんな風に振り返る。「当時は未だ、右翼・左翼問わず、非合法活動をやっている政治団体は結構あったんですよ。一水会でも若手が中心になって、他団体とも協力しながら“統一戦線義勇軍”という闘争組織を作っていた。アメリカやイギリスの大使館を襲撃したり、大企業の経営者の自宅に押しかけたりと、まぁ派手にやっていました。そんな中、1981~1983年にかけて、“日本民族独立義勇軍”と名乗る組織が、反米の主張を掲げながらアメリカ領事館や在日アメリカ軍関連施設等を放火・襲撃するという事件が起きた。彼らははっきりと社会の表舞台で団体活動をしていた訳ではなく、警察も彼らの起こした事件で犯人を特定・逮捕することはできていません。つまり、どのようなメンバーによって構成されていたのかは未だ謎な組織なのですが、我々一水会は色めき立ったところがあるんですよ。だって当時、反米を掲げながら日本民族の自立・独立を訴えるような活動をしている人たちというのは、一水会を始めとするほんの少数の“新右翼”しかいなかった。日本民族独立義勇軍の活動はまさに、我々の新たな仲間たちによるものに見えた。また、日本民族独立義勇軍という団体名は、何だか統一戦線義勇軍に似ていると思いませんか? 『ひょっとしたら彼らは、一水会を真似てこういう活動をしているのかな?』と思うと、親近感を感じるところさえあったんですね。そこで、当時のレコンキスタ(※一水会の機関紙)に、『彼らはまだ見ぬわれらの同志だ!』という風な、日本民族独立義勇軍を絶賛する記事を載せていたりしたんです。一水会に送られてきた彼らの声明文を、そのまま掲載したこともある。ところが、後から考えればこれが拙かった。1987年1月、朝日新聞東京本社の窓ガラスに銃弾を撃ち込み、“日本民族独立義勇軍別動赤報隊一同”と名乗って活動を始めた組織こそが、その年の5月に朝日新聞阪神支局を襲撃し、記者たちを殺傷したグループだったからです。警察はそれまでの経緯を見て、『赤報隊と一水会は繋がっている』と感じたのでしょう。仕舞いには、『一水会の会長である鈴木が赤報隊なのではないか?』とまで疑い、事務所や自宅を執拗にガサ入れされる等、徹底マークされるようになっていくのです」。

20170526 04
このように、日本民族独立義勇軍時代の赤報隊には親近感があったと語る鈴木氏。しかし、今は赤報隊について非常に厳しい評価を下している。「はっきり言って彼らは“悪党”ですよ。それ以外に言いようがない。だって人を殺しているんですよ。勿論、僕ら右翼活動をやっている者たちにとって、『朝日新聞を倒せ』というのは長年の大テーマです。しかし、それは朝日の言論や体質に関してのことで、現場の記者を殺害しよう等という主張ではありません。大体、世間には誤解があるんですが、朝日という新聞は日本で最も右翼のことを取り上げてくれる新聞なんですよ。勿論、それは叩く為に取り上げるんだけど、それ故に、右翼が何か事件を起こすと真っ先に記事にする。一般に保守的と思われている読売や産経は、『同類と思われたら困る』とでも考えているのか、右翼の起こす事件は殆ど無視します。結果、右翼の主張は読売や産経には先ず載らない。それは結局、見下しているようなものなんじゃないかとも思うんですよ。1993年に朝日新聞社内で拳銃自決した新右翼の野村秋介さんも、マスコミの友人は朝日に一番多かった。だから、現場の朝日新聞記者を襲って殺すというのは、どうも右翼の目から見て疑問が湧いてくる事件なんです」。前述の通り、警察は赤報隊を“右翼の人間”と見定めて、様々な捜査を展開してきた。しかし、鈴木氏は朝日新聞阪神支局襲撃事件以降、「これは右翼の仕業ではない」という気持ちが抑え切れなくなったのだという。

「だって、赤報隊というのは、事件を起こすに際してきちんと逃げ道の確保をしてから決行していますよね。だから逮捕も免れ、きちんと顔を見た人もいない。でも、右翼のテロというのは、原則と主張をする為に行われるものなんです。自分たちの政治思想を世に問う為に、右翼はテロをする。だから、何か事件を起こした時、右翼は“逃げる”ことを考えません。堂々と縛について、その後、法廷等で自分の主張を訴える為に事件を起こすんです。しかし、赤報隊は自分たちの顔を見せず、その犯行声明文も詳細且つ具体的に自分たちの理想を語るというような感じのものではない。例えば、赤報隊は1988年、中曽根康弘元首相を襲撃するという犯行声明を出しています。結局、この襲撃は実行されなかったのですが、その理由は「中曽根元首相が全生庵で座禅をしている時に襲おうとしたものの、そこの警備が堅固で、容易に逃走ルートを確保できなかったからだ」と、彼らは語っています。つまり、最初から“逃げる”ことを考えている。ここには“右翼臭さ”が殆ど感じられない。また当時、野村秋介さんは赤報隊の朝日阪神支局襲撃事件について、『こんなことは右翼にはできない』と発言しています。それは精神的な面もそうですが、技術的な面から考えても、です。ここまで鮮やかに目標に近付き、的確に銃を発射して素早く逃げるといった芸当は、それなりの専門の訓練を受けた人でなければできないことでしょう。当時の新左翼等には、そういう武装闘争の訓練を行う体制があったようなのですが、右翼にそのような技術を教えられる人や団体は全く存在しませんでした。また当時、全国に新右翼の熱心な活動家など、僕を含めて数十人規模でしかいなかった。彼らは警察に徹底的に調べられていますが、赤報隊に関する何の証拠も出てこなかった。“右翼がやった”とするには、ちょっと無理があり過ぎる事件だったと私は考えているのです」。鈴木氏はこのような観点から、「赤報隊は右翼ではない」という意見を事件後、間もない頃から発信し続けてきた。そのような関係からか、2003年、鈴木氏は『民族独立義勇軍再建委員会』と名乗る赤報隊との関係を臭わせる存在から、「ジゴ一切ワガグン別働隊についてセンサクすることは許されない」という犯行声明文と共に、自宅を放火されたこともある。また鈴木氏は、「赤報隊は右翼である」という見立てで捜査を展開してきた公安警察からも、様々な嫌がらせ的捜査を受けてきたと語る。しかし、同時に興味深いのは、事件以降、鈴木氏の周囲には度々、「私が赤報隊事件の犯人だ」と名乗る人物が現われ、嘘とも本当ともつかぬ話を持ち込んできたという事実である。「ただ、殆ど全て、一見して『嘘だな』とわかる話ばかりでしたよ。僕は赤報隊は悪党だと思うし、右翼でもないと思うけれど、その情念というが意志、そしてそれに支えられた技術には凄まじいものがある。真犯人というのは、生半可な人ではないですよ。そんな迫力は、並大抵の人が持っているものではない。2009年に『自分が赤報隊の犯人だ』という話を週刊新潮に持ち込んで、結果的に大誤報事件を引き起こした島村征憲氏も、事前に僕にそういう手紙を送ってきていた。でも、要するに“右翼マニア”が妄想を膨らませたような話で、『真実ではない』と直ぐにわかりました」。

20170526 05
しかし、鈴木氏にはどうしても忘れられない、ある1人の“自称犯人”がいるという。「朝日新聞阪神支局襲撃事件が起きた直ぐ後のことでした。ある男が僕に電話をかけてきた。『次はこんなことをする』といった犯行予告を伝えてきたのです。最初は勿論、疑心暗鬼だったのですが、朝日新聞名古屋本社の社員寮や静岡支局の襲撃等、その後も続いた赤報隊による事件とその情報は、ぴたりと符合していったのです。これには本当に驚いた。何故、彼が僕に接触してきたのか。僕なりの推測を言うと、『やはり、あの時代に右派の立場から反米を掲げ、非合法活動を辞さずに活動するという気持ちの背景には、一水会の影響があったのではないか?』と思うのです。その意味で、やはり赤報隊は当時の僕にある種の親近感を持っていてくれたのかもしれない。僕は赤報隊を悪党だとは思います。しかし、その情念は大したものです。僕自身に、そして日本で右翼と名乗って活動している人たちに、あそこまでの徹底した情念があるかと問われれば、それは否です。そういう意味では、僕はやはり、赤報隊事件の真犯人にきちんと会ってみたい。そういう思いはあります」。一連の赤報隊事件は2003年に時効を迎え、犯人の足取りは全く掴めていない。しかし、鈴木氏はその犯人像について、こんな推測をする。「はっきりとした右翼活動をしている訳ではない、潜在右翼の人でしょう。そして単独犯、若しくは中心人物はたった1人。大人数でできることではないです。そして重要なのは、“赤報隊”という名乗りです。よく言われる“アカに報復する部隊”等といった意味ではないですよ。幕末維新期に活躍した赤報隊への憧憬だと思う。“偽官軍”と呼ばれても自分たちの思いを貫き、歴史の中に埋もれていった相楽総三たちに、自らを重ねているんじゃないでしょうか」。


キャプチャ  キャプチャ
[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

日本の右翼と左翼がわかる本 [ 別冊宝島編集部 ]
価格:594円(税込、送料無料) (2017/5/25時点)



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

公安は誰をマークしているか (新潮新書) [ 大島真生 ]
価格:777円(税込、送料無料) (2017/5/25時点)


[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

右翼という職業 [ 武寛 ]
価格:864円(税込、送料無料) (2017/5/25時点)


スポンサーサイト

テーマ : 社会ニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR