【中外時評】 ロシアがみる日中の差異

今月中旬、中国の北京で開かれた現代版シルクロード経済圏構想『一帯一路』の初の国際会議。多くの首脳が出席する中、議長役の習近平国家主席の隣に座り、一際優遇されていたのが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領だった。習主席は、会議の場を使って開いた中露首脳会談でも、大統領の参加を高く評価。両国の関係発展と深化は「戦略的な選択だ」と強調した。更に、「国際情勢がどう変化しようとも、互いに肩を並べて関係を強化し、共に前進しなければならない」と語った。プーチン大統領も、経済協力の進展に満足の意を示すと共に、同じように“肩を並べて”という言葉を使いつつ、「国際問題を巡る中露の協調が、世界の大きな安定要因となっている」と指摘した。大統領は、続く李克強首相との会談では、習主席のことを“我が友”とまで呼んだ。習主席とプーチン大統領は、相互訪問を含めて頻繁に会っている。会談回数は既に20回を超えた。7月には習主席がロシアを訪れる予定だ。首脳間の緊密な交流が、“蜜月”と言われる中露関係の礎石になっているのは間違いない。そんな中露に対抗する訳でもなかろうが、近年目立っているのが、安倍晋三首相のロシアへの接近ぶりだ。昨年12月のプーチン大統領の来日から僅か4ヵ月。首相は早速、4月末にモスクワに飛んだ。両首脳の会談は通算で17回目。回数では中露首脳に肉薄するようになった。「ウラジーミル」。モスクワ会談後の共同記者発表。安倍首相はプーチン大統領のファーストネームを連呼し、親密ぶりを誇示した。一方、大統領が“シンゾー”とファーストネームで首相に親しげに呼びかける場面は無かった。首相が対露外交に力を入れる最大の狙いは、北方領土問題を解決して、日露の平和条約を締結することだろう。プーチン大統領もそれがわかっているから、難しい領土問題で安易な妥協はしない姿勢を示すべく、慎重に接している面もあるのかもしれない。

大統領はその領土問題で、中露の国境画定の経緯をしばしば引き合いに出す。「中国との交渉は40年かかった。最終合意できたのは、非常に高いレベルの信頼が互いにあったからだ。残念ながら、日本とはその域に達していない」。中国は今や、ロシアの最大の貿易相手国だ。日露の年間貿易額は、中露の約4分の1に過ぎない。人的交流でも「ロシアでは3万人以上の中国人留学生が学んでいるが、日本からの留学生は毎年、精々150人程度だ」と、中国専門家であるロシア国立大学経済高等学校のアレクセイ・マスロフ教授は明かす。中露も、経済協力や国際問題等で複雑な側面を抱えているものの、「国連安全保障理事会での投票をみても明らかなように、中国はロシアを騙したり、裏切ったりすることもない」という。日本は昨年来、都市開発・エネルギー・医療等8項目の対露協力プランを掲げ、官民で数多くの事業案に合意した。領土問題も歴史や法的な論議を脇に置き、先ずは現地での共同経済活動を通じて信頼を醸成する道を選んだ。だが、未だ緒に就いたばかり。しかも、「経済協力は金額的にも小規模で、未だ象徴的な域を出ない」(モスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授)。ロシアの外交評論家であるフョードル・ルキヤノフ氏は、「中露は、両国関係が大きく変化した後に国境画定交渉を始めた」と強調。「日本との領土問題を解決できるのはプーチン大統領しかいないだろうが、先ずは良好な環境作りが必要だ。早期の解決は期待すべきではない」と述べる。領土問題は別にしても、経済協力の潜在性や北朝鮮の核問題等、不安定な北東アジア情勢を考えれば、ロシアとの経済・安全保障協力は日本の国益に適う。かといって、中国のように、ロシアのウクライナ領クリミア半島の併合すら正面切って批判しないような関係作りは論外だ。日本は、領土交渉の進展も視野に、首脳交流や協力を地道に重ねつつ、時にはロシアの政策に苦言を呈す。そんな硬軟両様で、“良好な環境作り”を模索していくしかない。 (上級論説委員 池田元博)


⦿日本経済新聞 2017年5月25日付掲載⦿
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テーマ : 国際政治
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