【東京五輪後の地方経済を読み解く】(01) 「現在の金融財政政策が地方経済を弱くする」――金子勝氏(慶應義塾大学教授)インタビュー

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『日本銀行』がぎりぎりまで金融緩和と財政出動をしたにも拘わらず、地方経済が再生する見通しが立っていません。しかも日銀は、2016年2月現在で260兆円積み上がっていた当座預金の一部から手数料を取るマイナス金利政策に踏み切りました。これで銀行の貸し出しが促される筈でしたが、殆どの国債で金利がマイナスになり、流動性が著しく低下しています。政府も「短期金利・長期金利で目標値を設定して誘導するイールドカーブコントロールをしていると言っていますが、それは国債の金利負担を重くして財政赤字を広げますし、実際に長期金利はあまり上がっていません。しかも、生命保険等の金融機関は外国債を買っています。ドナルド・トランプ氏が2017年1月に大統領に就いた後も、アメリカは金融引き締めに向かうと予想されます。トランプ氏は、国家レベルで課税される連邦法人税を35%から15%に下げる等、税制改革の実施により、10年間で500兆円規模の大規模な減税策を打ち出すと同時に、100兆円規模のインフラ投資も打ち出している為、今はアメリカ国内の金利と物価が上がっています。その結果、日本の金融機関が日本離れを起こし、外国債を買っているのです。円を売り、ドルを買うので、暫くドル高円安になっていくでしょう。よく、「1400兆円の国内金融資産があるから大丈夫」という見解も聞きますが、既に大丈夫ではないのです。何故なら、金融資産を沢山持つ金融機関が国債を買わないからです。だから、日銀が永遠に国債を大量に買わないといけないという状態が続いているのです。この状態を“オーバーシュート型コミットメント”等と政府は表現していましたが、カタカナにしただけで、要するに「約束の2年間で、消費者物価の前年比上昇率2%と定めた“物価安定の目標”は達成できません。でも、永遠に収り組みは続けます」と強弁し、失敗を認めないだけなのです。しかも問題は、マイナス金利下で安倍政権が無理をして、公共事業等に手を出していることです。政府側にとっては、国債を発行しても利子が付かず、寧ろ発行額より多く資金が手に入り、財産価値も出るので都合がいいのですが、日銀側にすると、国債が償還満期になる度に損失が発生してしまいます。それが、『日本経済研究センター』の推計では、約10兆円の損失と見られています。日銀の2015年度末の純資産は3.5兆円、債券取引損失引当金が2.7兆円で、合計6.2兆円しかなく、2017年度からは事実上の債務超過になります。その為、2017年は「それでも我々が普段お金として使っている日本銀行券を、貴方はいつまで信用しますか?」という状況になっていくでしょう。

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日本は、“夢をもう一度”にはなりません。金融資本主義化した世界でゼロ金利政策が続く中、日銀がジャブジャブの金融緩和をし、余ったマネーが全て投機マネーになって、日本の資産価格を釣り上げて景気を良くしているだけです。こうした金融中心のグローバリゼーションが最後に行きつく先は、企業自体が売買される資本主義です。例えば、国際会計基準は企業を発買する時に資産価値をわかり易くするルールで、時価主義会計です。その為、企業は内部留保を猛烈に貯め込んで資産を増やし、配当を出すことで株価の総額を釣り上げています。そうすれば他の企業が呑み込み難くなり、こちらが他の企業を呑み込み易くなるからです。内部留保だけが積み上がり、配当支払いや自社株買いに走っていますから、当然、トリクルダウンは水遠に起きず、賃金も上がらず、下請けにもお金が回りません。その為、今の金融政策で地方経済が良くなることは、ほぼあり得ないのです。地方の金融機関に目を移すと、外国債の購入やM&A等で収益を上げられる大手銀行とは対照的に、地方銀行・信用金庫・信用組合は国内ビジネスしかできないですから、既にお互いのテリトリーを超えた食い合いをしています。マイナス金利で安全な運用先が無く、企業の設備投資も無い地域の商店街も農業もダメ。最早、貸し出し先が無いのですが、不動産融資だけは伸びています。こんな少子高齢化の状況で、こうした不動産融資バブルが持続する訳がありません。2018年前後には調整局面に入るかもしれません。それが全国に一巡するのには、1~2年かかるでしょう。但し、バブル崩壊が昔と同じように起きるかといえば、そうではありません。企業が内部留保を貯め込んでいますから、大手企業の不良債権で、大手銀行の決済機能麻痺が生じるといったことは起き難くなっています。寧ろ、町や村の空洞化が始まり、地方銀行を軸にして、“オーバーバンキング”と称して合併再編が加速していくでしょう。

大手製造業の工場が日本の地方から海外へ移転し、農協や役場も縮小傾向ですから、地方で一生を過ごすというタイプの雇用が減っています。同じく農業にしても、人口減少で全国の耕作放棄地が滋賀県1県くらいの大きさになっています。各地で限界集落が増え、田畑の所有者は都会に移り住んでいたりして、草が生え放題で手が付けられない状態になり、軈て周辺も耕作放棄地になっています。商店街も同じで、ぽつぽつと空き店舗が増えて、一定の臨界点を超えると寂れていくのです。その為、地域の崩壊を見ながら地銀が減るという、地方経済衰退の最後のパターンに突入しそうです。空き家・空き店舗・耕作放棄地がどんどん増え、町づくりや村おこしをしようにも何もできず、町や村の機能麻痺が彼方此方で起こり、地域の崩壊が止まらなくなります。小泉政権も安倍政権も、大手企業を優遇し、内部留保を貯めさせて、株価を釣り上げて、表面上はGDPが上がったと強弁していますが、その一方で一般国民が貧しくなり、地方が疲弊するというパターンを繰り返してきました。リーマンショックの時、実は日本の金融機関は殆どサブプライムローンを買っていませんでした。それにも拘わらず、G7の中で最もGDPの落ち込みが酷かったのです。何故なら、内需が薄くなり、地方が疲弊している状態だったからです。富士山が日本一の高さを誇るのは広大な裾野があるからで、要するに地方経済はショックアブソーバーのような役割を果たしているのです。大きな対外ショックがあっても、地域内で循環して生きていける経済の仕組みがあれば、人はそれなりにショックを受け止めて内需で持ち堪えられます。今は、一部の大手企業、日本に根っこが無いような企業が輸出に力を入れ、経団連を中心にした古臭い産業で何とか経済をもたせていますが、そんな経済運営で対外ショックが起きたら、リーマンショック並みの景気急落の恐れがあります。景気は10年置きに循環しており、それがバブル循環になり、どの国も実体経済の景気循環ではなくなりました。不動産バブルは1990年代初めに弾け、同年代末にIT・ナスダックバブルになり、2000年代初めに弾けました。その次は、アメリカのサブプライムローンに端を発する住宅バブルで、2008年のリーマンショックを引き起こした。こうして考えていくと、最近は新興国バブルと石油バブルが引き継いだことがわかります。2017年以降は、トランプショックの他に、ドル資金がアメリカに逆流する中で新興国の景気が後退したり、ヨーロッパでドミノ式にショックが発生したりする可能性があります。また、トランプ氏と歩調を合わせるような極右勢力が台頭してきており、イタリア、オランダ、ドイツ、フランス等でEU離脱ドミノがどれだけ現実味があるかが、これからの世界経済の境目になります。これからの日本は、“集中メインフレーム型”、つまり巨大な垂直統合型の企業に依存するのではなく、“地域分散ネットワーク型”でIoT(モノのインターネット)・ICT(情報通信技術)等でネットワーク化し、効率化していく。そういう経済の在り方に変わっていかざるを得ないと思います。地方の底堅い動きを支援して、先端技術の上に産業を乗せることが大事です。その為にはエネルギー転換が必須ですし、原発は古臭くて意味がありません。再生エネルギーを活用してスマートグリッド(次世代送電網)にし、省エネ住宅にして自動車や家電製品等耐久消費財も全て省エネ更新していくという大規模な革新をする。そんな地方からの未来を先取りする動きが、本当の意味での地方創生になるのです。 (聞き手・構成/『週刊ダイヤモンド』委嘱記者 大根田康介)


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