【JR・栄光と苦悩の30年】(07) “会計マジック”で九州は上場…次の候補である貨物の深い憂鬱

『JR九州』が悲願の上場を果たした。優等生扱いされるJR九州ではあるが、実は上場には高い壁が立ちはだかった。次の上場候補である『JR貨物』にも、波乱要因が持ち上がっている。

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「えっ? “三島会社”って何だ? 九州を“島”と呼ぶなんて、バカにしているんじゃないか?」――。JR九州の青柳俊彦社長は、30年前のことを悔しそうに振り返る。当時、国鉄改革案が明らかになる過程で、“三島会社”という言葉がいつの間にか使われるようになっていった。発足当初から、JR九州の運輸事業は赤字だった。貨物線や赤字のローカル線を多数抱えていたからだ。同じ境遇の『JR北海道』や『JR四国』と共に、この3社には国から数千億円の経営安定基金が宛がわれた。この3社を総称して“三島会社”と呼ばれるようになったのだが、当時のJR九州経営陣は、その呼び名に侮蔑的な意味を感じていた。「何くそ、負けてたまるか。絶対に上場を成功させる」(青柳社長)と、本州3社への競争心を抱いたことだけは確かである。昨年10月、JR九州は悲願の上場を果たしたが、それまでの道程は平坦ではなかった。この30年でJR九州が取ってきたのは正攻法である。それは、事業の多角化と運輸事業の収益化の2つに尽きる。多角化については、非運輸事業の売上高構成比は53.3%と高く、『JR東日本』をも凌ぐレベルにある。駅ビル不動産や流通外食事業で約320億円の営業利益(※2015年度)を出すまでになり、会社全体を支えている。問題は、運輸事業の収益化である。JR九州の唐池恒二会長は、「『JR九州は多角化で成功した』と言われるが、実は、運輸事業の売上高を伸ばしていることも評価してほしい」と言う。確かに、九州新幹線の開業という好機を上手く捉えた。新幹線という背骨が通ったのに合わせて、周辺の地域までその効果が及ぶよう、枝線として観光列車を次々と投入していった(※右図)。例えば、九州新幹線の終着駅である鹿児島中央駅から指宿駅に向かう『指宿のたまて箱』。大抵の利用者は九州新幹線も利用する。指宿のたまて箱だけなら利用者1人当たり3000円程度の収入にしかならないが、新幹線では8000円程度の収入が見込める。観光列車と新幹線には、こうした相乗効果がある。こうした地道な取り組みの結果、運輸事業の収入は、1987年度の1266億円から2015年度には1691億円と1.3倍に拡大し、営業赤字は280億円から105億円まで縮小。但し、運輸事業の収益化は持ち越されたままだ。

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多角化事業の貢献が効いて、愈々JR九州に悲願の上場が持ち上がった時、問題視されたのが経営安定基金3877億円の存在である。「上場する際には国庫に返還すべき」という意見も出た。かといって、経営安定基金を国庫に返還してしまえば、JR九州の経営は苦しくなる。何せ、未だ運輸事業は赤字なのである。そこでJR九州が編み出したのが、“ウルトラC”の会計マジックだった。先ずは、経営安定基金3877億円を全額取り崩した。それを元手に、新幹線リース料2205億円を一括して前払い返済した。更に、2015年度に運輸事業の固定資産を中心に、5256億円の減損損失を計上。そうすることで、年間100億円あった新幹線リース料の支払い負担が無くなり、且つ減価償却費の負担が減る為、運輸事業の収支が飛躍的に改善したのだ。一連の会計マジックにより、運輸事業は105億円の営業赤字から、2016年度に営業黒字230億円へ好転する見込みだ。無論、会計マジックという“お化粧”による黒字化ではある。青柳社長も、「実力では営業赤字100億円レベル」と認める。これで、経営安定基金にも会計マジックにも頼れない完全なる独立経営へ移行した訳で、真価が問われている。そして、次の上場候補として期待されているのがJR貨物だ。予て、JR貨物は上場に向けての前提として、“運輸事業の営業黒字化”と“経常利益100億円”という目標を掲げてきた。2016年度は「漸く、運輸事業の黒字化に目途が付きつつある」(JR貨物の田村修二社長)という。しかし、JR九州の経営安定基金問題のように、ここでも特殊ルールの壁が立ちはだかる。JR貨物は発足時に、経営安定基金という“持参金”に頼ることはなかったのだが、その代わりに“アボイダブルコストルール(回避可能経費ルール)”と呼ばれる特殊ルールで保護されている。JR貨物は線路を持っておらず、他のJR6社に線路使用料を支払っている。その使用料がJR貨物に有利になるよう設定されているのだ。貨物列車を走らせなければ避けられたであろう費用(※線路の摩耗に伴う交換費用等)のみを支払っている。更に、新幹線が開通すると、JR貨物が使う並行在来線は収益が厳しくなる為、追加で国から貨物調整金が交付されている。JR貨物の優遇ルールに、JR6社からは不満が漏れている。貨物列車は重いので線路の摩耗が激しいが、検査費用や関連設備の補修はJR6社が負担しているからだ。この特殊ルールが改定されれば、JR貨物の連結営業利益など簡単に吹き飛んでしまう。経営難に陥っているJR北海道が反対の急先鋒であるだけに、一波乱ありそうな雲行きなのだ。


キャプチャ  2017年3月25日号掲載
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