【解を探しに】第2部・引き算の世界(02) 持たない生活、憧れる世代

20170530 03
「チーズ専用ナイフは普通のナイフで十分」「犬のグッズは全部使っていますか?」――。京都市内のマンションの一室で、男性(30)が次々と指示を出す。その横で、部屋の主の女性(36)が、覚悟を決めたように持ち物を片付ける。結婚式の装飾品・犬のライフジャケット・ダーツ盤…。半日がかりの“戦果”が、玄関前にこんもりと積み上がった。男性は“ミニマリスト”を名乗る。本職は証券ディーラー。4年ほど前から、“物を持たない暮らし”をブログで紹介する。昨秋からは無料で指南役を始め、10人ほどの自宅を訪れた。男性の自宅にはテレビも本棚も無い。1000冊近く持っていた書籍は全て電子化して処分した。1DKの部屋で目に付くのは寝具くらい。掃除が直ぐ終わり、自由な時間が増えた。殺風景に見える部屋も、「物が無いほうが充実している」と屈託ない。物を極力持たない生活を目指すミニマリストは、20~30代を中心に広がる。男性のように、自身の暮らしをブログで発信する人は多い。

2015年には、“爆買い”と並んで新語・流行語大賞の候補になった。女性誌や健康情報誌も相次ぎ特集を組む。“断捨離”に“お片付け”と、大量消費社会を否定するような現象が数年前から続く。昨年、ベストセラーとなった『フランス人は10着しか服を持たない』を出版した『大和書房』の編集部長・小宮久美子さんは、「今は安くて良い物がいくらでも手に入る。物を管理し切れないストレスを抱え、少ない物で暮らすことへの憧れがある」とみる。高度経済成長からバブル期を経て、“より良い物”を求めてきたことの反動なのか? 「身の丈に合わない贅沢をする考えが薄くなっている」(マーケティング論が専門の立教大学・有馬賢治教授)。「東日本大震災を機に人々の価値観が変わった」との指摘もある。尤も、発想の転換は簡単ではないようだ。大阪市の堀井みきさん(28)は昨春、ミニマリストを止めた。持っていた服を数着に減らしたところ、親族の通夜で着る服が無いことに気付いた。友人から言われた「女子力が低い」の言葉も堪えた。考えた末に出した結論は、「持たなくても何とかなる。でも、あったほうがいい」。結局、服は買い直した。滋賀県草津市の自宅で主婦らを対象にした“お片付けゼミ”を開く阪口ゆうこさん(34)。教えの肝は、ただ片付けるだけでなく、「自分がどんな暮らしを送りたいか?」を考えることだ。阪口さんは嘗て、食器を家族4人分に減らしたが、その後、買い足した経験がある。自分の理想が“友人を呼べる家”であることを思い出したからだ。「物の適正な量は、人によって違う。減らすのに囚われて、同じ失敗をしてほしくない」。こう考えている。


⦿日本経済新聞 2016年4月13日付掲載⦿
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