【働く力再興】番外編(02) 労使トップに聞く

政府が働き方改革に着手した。同じ仕事に同じ賃金を払う『同一労働同一賃金』や外国人就労等、検討課題は多い。企業の生産性を高め、労働者の能力を最大限引き出す改革になるか。政府の『働き方改革実現会議』に参加する労使代表に、成長持続の決意を聞いた。 (聞き手/中村亮・三木理恵子)

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■外国人労働者拡大、慎重に  神津里季生氏(『連合』会長)
――政府は改革のスピードを強調しています。
「課題に結論を出すのは簡単でない。経済の好循環と関わるので、官邸中心に方向性を議論するのはおかしなことではない。政権への不信感丸出しで会議に臨もうとも思わない」

――最も慎重に考えている課題は何ですか?
「外国人労働者だ。『人手不足だから外国人を』という発想は心配。なし崩しに単純労働者を増やすと禍根を残す。低条件の分野で数を広げるのは如何なものか」

――長時間労働是正を求めつつ、“脱時間給”には反対しています。
「時間に縛られない働き方は一見、見栄えがいいが、健康管理や実労働時間の把握が欠かせない。実現会議でも、脱時間給と裁量労働制の範囲拡大は慎重に考えるべきだ」

――残業時間の一律上限規制は寧ろ、働く現場の制約になりませんか?
「残業を労使できちんと決めているか点検する。上限規制に適用除外を色々設けると、『何の為の改革か?』となる。人も集まらない。採用される側も労働時間に敏感だ」

――同一労働同一賃金は、非正規の処遇改善に軸足がありそうです。
「正規と非正規で賃金制度に違いがあるのは事実だが、職能給中心の現行の賃金制度を大きく変えると、日本の良さを葬り去らないか? その場凌ぎで生活設計に展望の持てない人を増やしたのが、非正規の問題だ」

――企業には賃上げの余力がありますか?
「ある。経営者は、『日本経済の先行きは絶対大丈夫』とは思っていないだろう。『内部留保はけしからん』と言うつもりもない。ただ、皆が活力を持って働ける労働条件か、蓄えをどう使うかは、企業に考えてほしい」

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■脱時間給で生産性向上  榊原定征氏(『日本経団連』会長)
――企業には長時間労働の是正が求められています。できますか?
「働き方改革は、経済界が率先してやらないといけない。この1年が勝負だ。(労使合意で事実上無制限に残業できる)36協定の特別条項は見直すべきだ。長時間労働では生産性が上がらないし、健康や介護、女性の活躍も阻害する。ただ、労働者保護と業務継続の両面に配慮が必要。医療やトラック輸送は、外国人受け入れや自動運転普及等の対策が整うまで配慮がいる。繁閑もある。月単位の規制では業務が滞る」

――時間でなく、成果で賃金を払う“脱時間給”を盛り込んだ労働基準法改正案の成立目途は立ちません。
「まさに新しい働き方。長時間労働是正の象徴だ。後回しはおかしい。改正法を今国会で成立させてほしい」

――解雇規制の見直しも手つかずです。不採算部門から成長分野に切り替える動きが、企業の中に出てきません。
「よく議論して決めないといけない。不採算だから解雇というのは極力避けるべき。転職し易い環境を整える必要はある。希望者はチャンスを求め、会社を変えればいい。企業が妨げるべきではない。勿論、長く働き続けたい人は同じ会社で貢献してもらう。終身雇用は悪でない。会社への忠誠心は日本の良さだ」

――フランスや韓国も、企業の活力を引き出す改革に取り組んでいます。日本の国際競争力に不安はありませんか?
「長時間労働の是正と、日本の雇用慣行に配慮した同一労働同一賃金は改革の両翼。それをやるのが生産性を上げ、国際競争力になる。日本の大企業には、労働生産性の面で改善の余地がある。ITやロボット、人工知能(AI)も駆使して、仕事のやり方を変えないと。経営トップが旗を振る。生産性向上のチャンスだ」

■働き手の能力、どう引き出す?
「終身雇用は悪でない」(経団連の榊原定征会長)、「職能給を変えれば日本の良さを葬り去る」(連合の神津里季生会長)――。労使代表が揃って口にしたのは、戦後の経済成長を支えた日本型雇用への配慮だった。良さはあるにしても、そのまま保持すれば済む時代ではない。金融やIT等、時間でなく成果で賃金が決まる“脱時間給”が馴染む業種は多い。少子高齢化で、「生活と仕事を両立させたい」というニーズは強まっている。そんな環境変化を前提に、働き手の能力をどう引き出すか? 働き方改革で考えるべきは、この点だ。政・労・使が同じテーブルで労働問題を幅広く議論するのは大きい。労使融和は、実現会議の隠れたテーマだ。政府・与党は配偶者控除の廃止論議をほぼ素通りしたが、同じように対立や軋轢を回避するなら、働き方改革は看板倒れで終わる。


⦿日本経済新聞 2016年10月9日付掲載⦿




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