【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(44) エッフェル塔を売った天才詐欺師の“十戒”

「人を惹きつけろ、喋り過ぎるな、よい聞き手となれ、身なりに気を配り、絶えず威厳を保て」――。ヴィクトル・ルースティヒが残した『詐欺の十戒』から抜粋した言葉である。ルースティヒは1890年、プラハ生まれ。青年時代に外洋豪華客船のウェイターとして働き、数ヵ国語と上流階級のマナーを身に付けた。彼が天才詐欺師としてその名を知らしめたのは1925年、35歳の時だ。当時、『パリ万博』の目玉として建築されたエッフェル塔は、老朽化による維持費等の問題で撤去が計画されていた。それに目をつけたルースティヒは、政府高官に成りすまし、解体計画書を偽造。そして、数社の解体業者を極秘会談と称して呼び出し、「受注の為には賄賂が必要である」と大金を騙し取った。現在ではパリを代表するシンボルとなったエッフェル塔を、7000トンの鉄屑として扱うところが痛快である。日本であれば、東京タワーを解体屋に売り払う感覚か。その洗練された手口と大胆な発想は、近代詐欺事件の始まりと言っていいだろう。この時から、ルースティヒは“エッフェル塔を売った男”と呼ばれるようになったのである。冒頭の詐欺十戒は、アメリカで偽札製造機という代物を売った容疑で捕まり、獄中で認めたものである。この偽札製造機自体が偽物であったのがルースティヒらしい。「詐欺師は人柄で騙し、事件師はネタで騙す」。これは、詐欺師と事件師の違いを端的に表した言葉だが、ルースティヒはその両方を併せ持つハイブリッドな詐欺師と言える。人の第一印象は見た目で決まる。詐欺師が詐欺師に見えたら詐欺は成功しない。騙されるほうも、まさか自分が騙されるとは思ってもいない。だから、人は詐欺に遭うのだ。

一口に詐欺と言っても、その間口は広く多岐に亘る。近年はインターネットの普及で詐欺の手口は多様化し、複雑になった。送金手段や決済機能も充実し、犯罪も簡単に国境を越える。法の空間を跨げば事件化は難しく、被害の教済も困難となる。猫太郎が巻き込まれたパッケージスカム(小包詐欺)も、ITを駆使した現代の手口だ。「大量の金塊があわよくば自分の物になるかもしれない」と思わせる古典的な要素に、電子メールや大手物流会社の偽サイトというテクノロジーを融合させた新しい詐欺だ。私たちは、当事者が直接会うこともなく、コンピューターとインターネットで詐欺が完結してしまう時代を生きているのだ。最新の手口で猫太郎を騙そうとしたアメリカ軍女性兵士のナタリアは、相手が予想以上に強いとわかり、仲間のアランを送り込んできた。猫太郎は現在、このアランを相手に奮闘中である。相手は、「何とか元だけでも取り返したい」と思っている。その焦りを嗅ぎ取った猫太郎は、騙されたふりでエサを投げた。相手の要求は、送料と関税で約1000万円だった。パッケージの中身は約14億円相当の金塊とダイヤモンドというネタでだ。勿論、中身が本物である筈がない。そこで猫太郎は、アランに1つの提案をした。「14億円の銀行保証が付いた証券で全て買い取ってやろうか?」。アランは見事にエサに食いついた。直ぐさま、猫太郎に個人情報が記載されたCIS(クライアントインフォメーションシート)を送ってきた。正確な情報でなければ銀行で証券を受け取れないし、現金化もできない。猫太郎は完全に敵の尻尾を掴んだ。ナタリアたちは完全に敵を見誤った。猫太郎が20年もの間、中国と取引しながら生き残っているという意味をわかっていない。そして何より、猫組長の一派なのだ。反撃の狼煙は上がったばかりである。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年5月30日号掲載
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