ヤマト運輸は本当にアマゾンの被害者なのか――10年以上伸びていない利益、昨年12月下旬に想定超える荷物流入

20170530 08
宅配最大手の『ヤマトホールディングス』が、大きな試練に直面している。『アマゾンジャパン』等、インターネット通販の荷物が急増。宅配ドライバーのサービス残業が深刻化していた。経営陣は、「人手不足等、外部環境の変化が主な原因だ」と言う。宅急便は時代に先駆けた取り組みで支持されてきた。しかし今、構造改革に伴うサービス後退が避けられない。何故、こんな事態になってしまったのか? 「インターネット通販というのは、基本的には非常に良い存在だと思いますよ。しかし、それは荷物を運んで初めて成立するビジネスでしょう」「クリスマスや母の日等、荷物が増える毎年の行事には備えてきました。ただ、インターネット通販が独自に展開するセールによって、例えば大量のミネラルウオーターを運ばなければならないようなことまで想定して、我々が体制を整えておく必要があるのでしょうか?」――。本誌のインタビューに、ヤマト運輸の長尾裕社長は、苛立ちを隠さずに本音を露呈した。それは、「インターネット通販の需要拡大を支えてきたのはヤマトであり、消費者が利便性を享受できるのもヤマトのおかげだ」という強烈な自負があるからだろう。そして、インターネット通販大手のアマゾンジャパンとの取引については、次のように説明した。「佐川急便さんが(2013年に)捨てたものを拾ったみたいな言い方をよくされますが、そんなつもりはさらさらない。元々、日本通運さんがやっていたアマゾンさんとの取引を、全部安値でひっくり返したのは佐川さんですから。(ヤマトがやらなければ)誰が運ぶのですか? (Amazon側から)『何とかして助けてくれないか?』というお願いがあったので、『力になろう』と判断した」。だが、こうした公共性を重んじ、他社が断った荷物まで運ぶようなヤマトの姿勢が、限界に達している。先月、過去2年分で約190億円もの未払い残業代を支払うという前代未聞の事態を発表。現場が疲弊しているのだ。昨年12月下旬、宅急便のインフラは試練に直面していた。運ぶべき荷物の配達が終わらず、そこに新たな荷物が届き、運ぶ順序がわからない混乱状況に陥る宅急便センターもあった。あるセンター長は責任を感じ、泊まり込みで仕分け作業等をしたという。

約1400億円を投じて2013年に稼働した最先端の大型物流施設の象徴的存在『羽田クロノゲート』はどうだったか? この施設に荷物を送っているある会社の社長は、「クロノゲートはキャパオーバーだった」と話す。別の物流会社幹部も、「取引先から急遽、トラックの応援を頼まれた。『クロノゲートがパンクして混乱が起きている』と説明を受けた」と話す。こうした見方に対してヤマトは、「クロノゲートで荷物の仕分け作業等が滞ったという事実はない」と否定する。ヤマトは今年2月、“働き方改革室”を設置して、サービス残業の実態調査に乗り出した。先月には未払い残業代の支払いの他、宅配事業の構造改革プランを発表。そこでヤマトの経営陣は、混乱の主因として“想定を超えるインターネット通販の急増”・“人手不足”・“社会保険等社会制度の変更”等、外部環境の変化を挙げた。まるで、「我々はインターネット通販拡大等の被害者」と言っているかのようだ。だが、本当にそうなのだろうか? 大きく分けて3つの疑問が生じる。1つ目は、「何故、現場の窮状を把握するのが遅れたのか?」である。実態として、多くの企業でサービス残業があるものの、約190億円というヤマトの残業代未払いの額はあまりにも大きい。ヤマトの元役員は、「長時間労働は20年来の課題。インターネット通販の拡大を言い訳にすべきではない」と話す。ヤマトは、他社に比べて宅配ドライバーの質が高いとされてきた。昨年、『日経リサーチ』が調査した『ブランド戦略サーベイ』では、『Google』や『トヨタ自動車』を抑えて首位となった。今回の事態は、従業員を大切にするイメージと懸け離れている。長尾社長は、「昨年夏頃から異変に気付き、改革の検討をしてきた」と説明する。しかし、現場では「特に、Amazonとの取引が拡大した4年ほど前から状況が大きく変化し、サービス残業が常態化し始めた」との声は多い。2つ目の疑問は、「何故、Amazonから安値で受注したのか?」という点だ。宅配便のシェアが約5割という公共性の高い事業を展開するヤマトが、価格を抑えた高品質のサービスを提供するのは、企業としての使命だろう。それでも、業界内で噂されるほどの取引を引き受けた背景には、どのような事情があったのだろうか? ヤマトの宅急便の平均運賃は今年3月期で559円だが、Amazon等大口顧客には高い割引率を適用している。Amazonについては、1個当たり200円台後半と言われている。そして最後の疑問が、「宅急便の収益性が低下する中、何故、収益源の多角化は想定通りに進まないのか?」。ヤマトの業績は、宅急便を始めてから右肩上がりで伸びてきた。連結売上高は今年3月期に約1兆4700億円となり、過去10年で26%増えた。ところが、営業利益は2006年3月期に600億円台に乗せてから、ほぼ横這いだ。同社は宅急便で全国に物流網を張り巡らせ、会員サービス『クロネコメンバーズ』で約1500万人の個人情報を保有している。2011年に掲げた長期経営計画『DAN-TOTSU経営計画 2019』では、こうした強みを生かした多角化による成長ビジョンを掲げた。その計画は思うように進んでいない。営業利益では、中期経営計画で掲げた今年3月期の目標である900億円に遠く及ばず、業績を見る限り、描いていたシナリオと大きなズレが生じている。日本の物流サービス業を引っ張ってきたヤマトに、何が起きているのか――。 (取材・文/本誌 大西孝弘・村上富美・大竹剛)


キャプチャ  2017年5月29日号
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