新疆ウイグル自治区で漢民族が大量流出――習近平“強権支配”の新たな難題、人民解放軍も雲散霧消

20170531 05
中国の新疆ウイグル自治区では、イスラム教徒のウイグル族を中心とする分離独立運動が続いているが、習近平政権の徹底した情報遮断で、実態は海外に伝わり難くなっている。だが、習政権の意図とは裏腹に、新疆では今、漢族の大脱出が加速しており、中国支配が根底から揺らぎ始めている。戸籍上は漢族人口は変わらないが、「実数は過去10年で半減した」とも言われる。漢族を狙う連続テロで治安が悪化する一方、成長を支えたエネルギー産業が落ち込み、新疆に留まる理由が薄れているからだ。漢族の少子高齢化も、人口減少に拍車をかける。新疆の“非中国化”は、台湾独立の機運と共に、習政権の危機に繋がりかねない。毎年3月5日に開会する中国の国会にあたる『全国人民代表大会(全人代)』。約3000人の代表が集まる全体会議以外に、省・市・自治区に分かれた分科会が開かれ、重要度に応じて習主席や李克強首相ら最高指導部が顔を出す。今年は、10日に開かれた新疆ウイグル自治区の分科会に習主席が出席し、「断固として社会の調和・安定を守り、不断に民族の団結を強固にしなければならない」と檄を飛ばした。通り一遍の発言に聞こえるが、「この発言にはあるメッセージが隠されていた」と中国の然る政治学者は指摘する。ポイントは“民族の団結”。一見、ウイグル族等少数民族の独立を牽制する言葉に聞こえるが、実は「新疆在住の漢族に対し、『国家と漢族の為に新疆に踏み止まれ』と呼びかけたものだ」と、その政治学者は解説する。

1944年に東トルキスタン共和国として独立を図った新疆は、新中国発足後は軍事制圧され、1955年に現在の新疆ウイグル自治区が置かれた。以後、中国共産党はウイグル族による新疆の分離独立を阻止する為、人民解放軍による入植・国有企業の進出・石油や石炭開発等で現地の雇用を拡大。多数の漢族を移り住ませ、中国化を強引に進めた。新疆の人口の過半を漢族にすることが目標となった。1980年、新疆の人口は1283万人に上り、その内、漢族は531万人と、41%強を占めるまでになった。1990年代にはタリム盆地の石油・天然ガス開発が本格化し、漢族の移住は更に増え、ウイグル族は限られた居住地に押し込まれ、対立は激しくなっていった。当時は現地の政府機関や国有企業に勤め、新疆に定住すれば、北京・上海並みの給与で高品質の住宅等も与えられた。物価水準からみれば大変な厚遇だ。しかも、新疆戸籍の子弟は清華大学・復旦大学等、中国のトップクラスの大学に優遇枠で入学できる為、子弟の教育も考え、新疆勤務を希望する漢族が多かった。新疆は、叩き上げの漢族庶民にとって、一旗揚げる夢のパラダイスだったのだ。だが、そうしたストーリーは続かなかった。2014年、新疆の人口は2322万人に増加。漢族人口も表面的には859万人に増えたものの、人口比では37%に低下した。少数民族は『一人っ子政策』を免除され、元々イスラム教は産児制限をしない子沢山ということもあり、ウイグル族人口が急増した為だ。表面上の人口統計を取っても、漢族人口の比率は今後、低下の一途を辿り、2030年には30%を割る見通しだ。ただ、今、それ以上に深刻なのは、戸籍を残したまま沿海部に流出する漢族が急増していることだ。沿海部には内陸からの出稼ぎ農民が2億5000万人以上おり、戸籍が無くても都会で就業できる機会は多い。新疆に入植した漢族は元々、大卒の管理職層やエンジニア等が多い為、都市部で仕事を見つけられるチャンスも多い。そうした新疆からの移住者は、当初は若者中心だったが、両親が引退し、高齢化するにつれ、沿海部に呼び寄せるようになった。1978年末に始まった改革開放政策後、新疆に移住した第1世代の漢族が引退し、新疆を去る時代になった。新疆を車で走ると、頻繁にみかける地名に“○○生産建設兵団”というものがある。“○○”には、軍隊の師団や旅団の名前のように数字が入る。1950年代、新疆の支配を固める為、中国共産党は人民解放軍を現地に送り、各地に定住させた。『屯墾戍辺』事業である。「軍人が土地を開墾し、自給自足すると共に、国境を外敵から守る」という制度だ。各兵団は農業だけでなく、製造業やサービス業にも進出。新疆の漢族支配の経済的基盤となった。だが、中国の経済発展と共に、沿海都市部で雇用機会が増え、人民解放軍の入隊希望は激減。新疆の屯墾戍辺は、若者にそっぽを向かれた。今世紀に入ってからは、各兵団で高齢化が進行。軍ビジネスも勢いを失い、兵団は解散や雲散霧消するものが増えている。

20170531 06
戸籍制度が緩和されつつある中国だが、新疆在住の漢族が簡単に沿海大都市の戸籍を得られる訳ではない。そこで、戸籍は新疆に残し、暮らし易い沿海に移る“不在漢族”が新疆で急増。漢族人口は戸籍の半分しかないと言われる。元々、新疆の漢族は、省都のウルムチ市・昌吉回族自治州・イリカザフ自治州・アクス地区等の特定都市に集中しており、それ以外の漢族比率が低い街や村では漢族が姿を消しつつある。漢族の実質人口が減れば、警察等の治安機能や行政機能は回らなくなる。軈て、中国政府・新疆ウイグル自治区政府の機能は、末端から崩れ始めるだろう。新疆の田舎町からイスラム化・ウイグル化が進展し、漢族の築いたウルムチや、石油開発の街・コルラ等はウイグル人に包囲されるようになる。同時に、周辺国と新疆は結び付きを深め、イスラム過激派や兵器等が国境を素通りで新疆に入ってくる。新疆は、中国共産党がどう足掻いて掌握しようとしても、手の平から抜け落ちる。新疆を失った中国は、どんな影響を受けるのか? 第一は、自治区内での天然ガス・石油の生産は下手をすれば全面ストップするだろう。『西気東輸』と呼ばれる新疆から上海等沿海都市に天然ガス等を運ぶパイプラインが遮断されれば、沿海部の工業生産は大打撃を受け、電力供給等市民生活にも影響は不可避。更に、新疆はトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン等からの天然ガスの供給受け入れ基地で、中央アジア諸国からの大口径パイプラインが自治区内を横断する。シルクロードならぬ“エネルギーロード”であり、習政権のエネルギー安全保障の大きな部分は新疆にかかっている。新疆が揺らげば、中国も揺らぐ訳である。習政権が今後、新疆をどのように取り扱うかが、台湾・香港等を含めた“1つの中国”の先行きを示すだろう。


キャプチャ  2017年4月号掲載




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