銀行界、反社会勢力排除に暗雲――警察庁との連携で直面する難題、迫るテロ対策の対日審査

20170602 04
反社会的勢力との取引、所謂“反社取引”の遮断の強化を巡って、銀行業界が難題に直面している。言うまでもなく、暴力団等反社勢力の資金源を断ち、経済分野への進出を食い止める為の水際戦略が銀行の窓口対応に求められてきたのだが、一段の強化策によって、顧客へのサービス水準の低下等が避け難い情勢になっているからだ。反社取引防止の取り組みは、政府が2007年に策定した『犯罪対策閣僚会議幹事会』の申し合わせに基づいて、銀行業界も動き出した。それを一挙に加速させたのが、2013年に発覚した『みずほフィナンシャルグループ』による反社取引事件だった。みずほ銀行が系列ノンバンクである『オリエントコーポレーション』と組んだ提携ローン商品で、230件余りの反社先への実行があり、それを同グループが長らく見過ごしてきたことが明らかになった事件である。その報告が上がっていたのに、取締役会がそれを無視するというお粗末な対応まで含めて、みずほグループが大きな批判を浴びた。みずほグループのみならず、銀行業界全体を呑み込んで、反社取引対応の厳格化を求められることになった。今、銀行業界の中では、「あの時、みずほがもっときちんとしていたら…」という同グループに向けた怨嗟の声が再燃している。というのも、みずほ事件から3年が経過して、同事件の後始末の一環として決定した反社取引遮断の強化策が愈々具体化するなかで、その厳しい対応の必要性が実感され始めたからだ。その強化策とは、銀行業界による警察庁の暴力団情報照会システムへの接続問題である。警察庁が構築した同システムが、極めて高度なデータベースであることは言うまでもない。そのデータベースに銀行業界のシステムを接続させて、新規取引開始の際の反社チェックに活用するという戦略である。

ここに来て漸く、システム接続が実現の運びになったのだが、それに際して、銀行業界は警察当局から厳しい条件を突き付けられている。第一に、直接接続に“待った”が掛かったのだ。「全国の銀行が一斉にデータ照合に動き出せば、警察庁のシステムは対応不能となりかねない」というのが、その理由である。確かに、警察庁のシステムは、100を超える銀行の照会利用等を前提に設計されていない。従って、膨大な件数が予想される照会があれば、同システムはパンクしかねない。苦肉の策として、警察庁と銀行業界のシステムの直接接続を断念し、今は「両システムの間に預金保険機構のシステムを介在させる」という折衷案が検討されている。預金保険機構のシステムを前捌き役として、警察庁のシステムへの負荷を軽減させる為である。しかしそうなると、今度は預金保険機構のシステムに関して「様々な費用分担が迫られるのではないか?」と戦々恐々とし始めているのが、最近の銀行業界である。しかし、銀行にとって頭が痛い理由は他にある。警察庁がデータベース化した情報は極めて機密性が高く、その利用に対して警察当局が厳格な対応を求めてきているからだ。具体的には、「データ取り扱い者を厳しく限定せよ」という条件である。管理を厳重にすると、その分、作業の時間は長期化する。ところが、銀行業界は目下、激しいローン競争の只中で、その審査・実行等に時間をかけていては客が逃げてしまう。「警察庁が求める条件のままだと、サービスレベルの低下は避けられない」。素早い審査を売り物にしてきたある大手銀行の担当セクションは、難題に頭を抱える。今でさえ、新規の預金口座開設では、反社チェックの為に1週間ほどの日数を要していて、これに対して利用者の間に不満が高まっている。警察庁の条件を満たすと、更に不満を助長しかねないような状況なのだ。サービス低下を補う為、ローン金利引き下げ等の無理な対応を迫られ、マイナス金利下で悪化を辿る収益に新たな打撃も及びかねない。尤も、こうした銀行業界の不安に対して、政府の反応は鈍い。財務省や金融庁、そして警察庁等の関係省庁には今、銀行の不平不満等に耳を貸す余裕は無いのだ。マネーロンダリング等、テロ資金対策を監視する国際組織による対日審査がスケジュール化されているからだ。その組織とは、『G20財務大臣・中央銀行総裁会議』の下に設置された政府間機関の『金融活動作業部会(FATF)』である。

20170602 05
FATFは、その目的に向けて参加各国が適切な対応を取っているかどうかの査察を行っており、第4次となる対日審査を2019年春に開始する。未だ2年先の審査に対して、既に関係省庁が神経質になり始めているのは、「第4次審査は、法律面の整備状況だけではなく、その法律に基づいて効果的に機能しているか否かまでチェックされる」(関係省庁担当者)からだ。具体的には、関係当局は素より、特定事業者等にも査察が及ぶことになる。言うまでもなく、“特定事業者”の筆頭に挙げられるのは銀行に他ならない。「我が国は、第3次審査が終了するまでに3年ほどもかかった。これは、テロ資金提供処罰法改正法等、マネーロンダリング対策に関する法整備がなされるまで、終了宣言が凍結された為だ」(同)。それだけに、「第4次審査に対しては万全の態勢で臨む」というのが政府の姿勢であり、銀行に対しても「不正資金の厳戒チェックを最優先で求める」という状況になった。「我が国では反社と言えば暴力団を想定するが、欧米では今や、テロ集団こそ反社であり、その資金源を断ち切ることが金融業界に強く求められている」。外資系金融機関の幹部がこう指摘するように、国際的な感覚からすると、“反社取引”の遮断へのテンションは日本国内の比ではなく、銀行のサービスレベルの低下など問答無用ということになる。しかも、国際展開している大銀行等の場合、仮にFATFが要請するチェックレベルに劣る対応が露呈した場合には、海外業務への制約等のペナルティーが科される可能性も低くない。警察庁のシステムとの接合計画を国内外に発信してしまった以上、その利用の実現は勿論のこと、その情報セキュリティーや管理が基準を満たさなければ、対日審査に大きく悪影響を及ぼす。それを避けるだけの高度な運営が銀行業界で定着するには、2年という期間はとても長いとは言えない。「安心・安全を前面に出す東京オリンピック・パラリンピックの開催中に、対日審査でダメ出しされるわけにはいかない」(前出の関係省庁担当者)。警察庁データ対応で悩む銀行業界の苦境など、政府関係者は一顧だにしてくれないのだ。


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